研究課題/領域番号 |
22K06401
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
高須 夫悟 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70263423)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 空間個体群動態 / 点パターン / 点過程 / モーメント法 |
研究開始時の研究の概要 |
生物集団の空間分布を陽に考慮する空間生態学では、各種生物集団の空間分布が時間とともにどのように変化するか?という空間個体群動態の理解が極めて重要である。外来種や感染症の空間的拡大は全て空間個体群動態の問題であり、数理モデルを用いた数理的アプローチが欠かせない。本研究では、生物個体を点として表現し、生物集団の空間分布を点パターンで表す点パターンのアプローチに基づいた空間個体群動態の数理的解析に取り組む。点パターンは極めて普遍的なアプローチであり、本研究は、既に深く研究されている反応拡散モデルや格子モデルによる空間生態学の理論を補完し、従来の理論を包含する新たな理論的枠組みの創出に取り組む。
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研究実績の概要 |
生物個体を点で表現し、各点が様々な状態を持ちうるマーク付き点パターンダイナミクスとしての空間個体群動態モデルの解析に取り組んだ。マーク付き点パターンダイナミクスの具体例として感染症SISモデルに注目し、距離依存する感染率の仮定の下で、1点がある状態にあるシングレット確率と、2点からなるペアがある状態にあるペア確率の力学系を導出した。点が移動せず、点の出生と死亡がない場合の解析は既に完了しているが(Hamada and Takasu 2019)、点が移動しかつ点の出生と死亡がある状況ではシングレットとペア確率に注目する方法は適用できないことが大きな問題であった。この問題を打開するため、確率では無く、モーメント法を用いて点密度としての1次モーメントとペア密度としての2次モーメントの力学系を導出する方法を新たに開発した。従来のモーメント法は点の状態を考慮しない方法(点の出生・死亡・移動のみを考慮)であったが、点の状態が変化する(SからI、IからSなど)場合でも、ある仕掛けを導入することで点パターンダイナミクスの点密度とペア密度の力学系を導出することが出来ることを明らかにした。導出したモーメントの力学系はシングレット確率ペア確率と同値であることを確認した。 導出した点密度とペア密度の力学系は、積分微分方程式であり、これをどう解くかが今後の課題である。 感染症モデルは基本的にメタポピュレーションモデルと同値である。Sを空地、Iを占有地と見なすことで、SIS点パターンダイナミクスはそのまま空間メタポピュレーションモデルとなる。Hamada and Takasu 2019 に距離に依存しない感染率(長距離移動分散率)を導入したモデルを解析し、学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来のモーメント法を拡張し、点の状態変化を考慮した点密度とペア密度の力学系(積分微分方程式)を導出できたことは大きな進展である。点の出生・死亡・移動に加えて「状態変化」という個体ベースのアルゴリズムが積分微分方程式として記述できた事になる。導いた積分微分方程式は多数の項から構成され、一見非常に複雑に見えるが、各項は点ならびにペアの変化を幾何学的に表現しており、直感的にも理解しやすい数式となっている。導出した積分微分方程式の解法が次の大きな課題である。 導出した積分微分方程式は一般的な解を求めることは極めて困難である。点の状態を考慮せず、点の移動のみを考慮する単純な場合(各点が一定の移動分散核にしたいジャンプ移動する)については、年度末に解法のめどがたち、現在解析を進めているところである。 以上の理由により、研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
点の状態を考慮せず、点の移動のみを考慮する単純な場合(各点が一定の移動分散核にしたいジャンプ移動する)は、いわゆる拡散過程に相当し、偏微分方程式(拡散モデル)の一般解が知られている。昨年度末にめどを立てたジャンプ拡散に相当する解と拡散モデルの解を比較する。 点の出生と死亡、状態変なを含む一般的な場合について、今年度は出生と死亡の密度依存性を無視した線形ルールの下での解析に取り組む予定である。 既に解析済みの点パターンSISモデル(Hamada and Takasu 2019)に、局所密度に依存する出生率と死亡率を導入したモデル、ならびに、状態SとIに依存して点が移動するモデル、の解析に取り組む。
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