研究課題/領域番号 |
22K06402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡田 賢祐 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (40550299)
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研究分担者 |
岡田 泰和 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (10638597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 生態学 |
研究開始時の研究の概要 |
性選択、つまり異性をめぐる競争を通じて繁殖力に有利な形質を持つオスとメスが進化する。その結果、高い繁殖力を持つ個体が集団内に維持されるので、性選択は個体群の適応度を増加させ、絶滅のリスクを減らす。これに反して、性選択が個体群を絶滅させるという学術的パラドックスが存在する。ここでは性選択による進化的絶滅を引き起こす遺伝子とその遺伝子を個体群から排除するメカニズムを解明し、このパラドックスを解消する。
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研究実績の概要 |
異性をめぐる競争を通じて繁殖力に有利な形質を持つオスとメスが進化する。これは主に性選択の結果として生じる。そのため、オスとメスともに高い繁殖力を持つ個体が集団内に維持されるので、性選択は個体群の適応度を増加させ、絶滅のリスクを減らす。これに反して、性選択が個体群を絶滅させるという学術的パラドックスが存在する。すなわち、雌雄間で最適な繁殖力を示す遺伝子が異なる場合、オスの繁殖力を向上させる性選択はメスの繁殖力を下げてしまう。その結果、個体群の増殖率は低下し、絶滅のリスクが生じる。この現象はオスとメスの間の対立構造によって起こると考えられており、この性的対立は非常に多くの生物で報告されてるので、この絶滅のリスクは普遍的に存在する。従って、このパラドックスを解明することは生物学において非常に大きな意味を持つと考えられる。 ここでは、性選択による進化的絶滅を引き起こす遺伝子とその遺伝子を個体群から排除するメカニズムを解明し、このパラドックスを解消する。繁殖力が高いオスは天敵に捕食されやすい事に注目し、捕食圧が繁殖力は高いが個体群の適応度を害する遺伝子を持つオスを排除するかを、オオツノコクヌストモドキとその天敵であるコメグラサシガメを用いて検証する。これまでの成果として、性選択がオオツノコクヌストモドキの繁殖力に正の効果をもたらすことを明らかにできた。とりわけ、個体群密度が高い場合にこの効果が強く生じることが明らかにされた。ただし、この密度が高い場合、繁殖力の高いオオツノコクヌストモドキは捕食者に食べられやすく、性選択の効果が減少する可能性を示唆し、表現型上はパラドックス解明の糸口が見えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記に記したように、表現型はパラドックス解明の糸口が見えたので、引き続き、この実験系で計画を進めていき、研究目標を達成することできると考えられる。これは、当初の計画よりも進むペースがやや早く、順調なペースであると言える。繁殖力に関係する遺伝子のホモログ遺伝子をオオツノで探索することに一部成功した。ゲノム配列をIllumina社の次世代シーケンサーによりリシーケンスし(レファレンスとなる本種の新規ゲノムは現在解読中)、オス捕食系統で変異が見られる遺伝子(ゲノム領域)を特定する。その特定された遺伝子について、RNA干渉法(RNAi)を行い、個体の適応度成分にどのように影響するかを調べ、着々とデータを蓄積しつつある。甲虫類ではlarval RNAi(幼虫体への二本鎖RNAのインジェクションによるRNAi法)が極めて有効である(伊藤ら2010, Tomoyasu et al. 2009)。実際、繁殖力に関与する遺伝子の特定に成功し、一部の結果を今年度の国内の学会で発表された。従って、来年度以降も計画に支障がなく、研究計画を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたが、表現型及び遺伝子に関する学習のデータは蓄積されている。今後は蓄積されたデータ国際誌に掲載することが大きな目標である。すでに一部のデータはすでに掲載済みであり、掲載された雑誌は国際的に評価の高い科学雑誌である。これに続くように、今後は残りのデータを掲載するために必要な実験を行うととも論文執筆を行う。また、学会や研究会などで情報を収集し、よりインパクトの高い研究成果に昇華することを目的とする。研究結果はできるだけ一般性の高い学術誌に掲載するように努め、その際に国内プレス発表を通じて、新聞等のメディアに研究成果を発信する。また日本応用動物昆虫学会、日本生態学会、個体群生態学会、またこれら学会に関係する国際会議などで成果発表することを考えている。
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