研究課題/領域番号 |
22K06403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂井 陽一 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70309946)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オビデンスモドキ / オグロトラギス / 寝床 / 社会行動 / 性転換 / サンゴ礁 / クラカケベラ / 産卵行動 / 配偶システム / 潜水観察調査 / 睡眠行動 / 生存戦略 / ベラ科魚類 / フィールド調査 |
研究開始時の研究の概要 |
睡眠は生存を左右する自然淘汰上の重要局面である。昼行性魚類は夜間に静止状態で休息する(以下、睡眠)。夜行性の捕食者から狙われやすい状況にあるため、そのリスクを下げるための戦略が必要となる。しかし、夜間観察調査の難しさから、睡眠生態の実態理解に遠く及ばない状況にある。そこで本研究では、サンゴ片を組み合わせた寝床を造る習性をもつベラ科2魚種に注目し、最新の水中撮影機器を活用した野外観察調査から、寝床づくりを伴う睡眠実態を解明し、サンゴ礁魚類の生存戦略の議論上に新視点データを提示することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度においては、ベラ科オビテンスモドキの飼育実験とトラギス科オグロトラギスの野外観察調査を実施した。 オビテンスモドキについては、幼魚の寝床作りと、同居する同種個体間の社会関係に注目した飼育実験を実施した。同種内に体長依存の優劣関係がみとめられた。闘争行動は潜砂睡眠をみせる消灯時刻前に激しくみられ、最優位個体はサンゴ片を独占的に使用し、睡眠場所とサンゴ片をめぐる競合関係が考えられた。寝床は集めた砂の上部にサンゴ片を集積させた構造であり、成魚の寝床と同じであった。また、寝床を覆うように使用していたサンゴ片のいくつかは砂中に埋没し、水の交換や潜砂しやすい剪断強度など砂中睡眠環境の改善に貢献している可能性が考えられた。 オグロトラギスについては、沖縄県瀬底島をフィールドに個体識別した同種個体群のサンプリング調査および行動観察調査を5月から10月まで実施した。寝床を中心としたなわばりの広がりを継続的におさえ、なわばり型ハレムの空間配置を把握した。メスの寝床はオスのなわばりの縁辺に位置する傾向があり、寝床が雌雄の社会行動の拠点になっている可能性が考えられた。また、メスの性転換についても2例確認することに成功した。サンプリング個体の生殖腺の発達状況から、繁殖期が秋から春である可能性が示唆された。 また、2022年度までの野外生態調査を実施したベラ科クラカケベラについてはデータをとりまとめた成果発表論文の準備を進めた(投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年の研究において飼育下でのオビテンスモドキの幼魚の睡眠実態と社会関係をはじめて確認することができたことは、今後の同種のフィールド調査の際に行動生態を読み解く大きな手がかりとなるものである。また、同種を長期間飼育する手法を確立できたことは、今後の研究計画に飼育実験を組み込める可能性を高めるものであり、研究展開上、有意義と考えている。オグロトラギスについては、2年目のフィールドデータを集積することができ、寝床の利用実態、配偶システム、性転換を明らかにする研究として順調に進展している。また,クラカケベラについては発表論文の準備を進めており、本研究の対象魚3種の成果発表を順次進めるペースで研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、オビテンスモドキとオグロトラギスの2魚種を研究対象に、研究計画に沿って睡眠戦略の追究を進める。 オビテンスモドキについては、過去に観察調査を実施した鹿児島県口永良部島のリーフでのフィールド観察調査を実施する予定である。また、並行して飼育実験も実施し、寝床の機能検証を進める予定である。 オグロトラギスについては、沖縄県瀬底島のリーフにおける個体識別した同種個体群の継続的なフィールド調査およびサンプリング調査を実施する。個体群の社会状況が安定していた場合は、寝床の機能を検証するための除去操作実験の実施も検討している。 いずれの魚種もデータのとりまとめを進め、国内学会で発表し、発表論文の準備を進める。
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