研究課題/領域番号 |
22K06410
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
井上 英治 東邦大学, 理学部, 准教授 (70527895)
|
研究分担者 |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60285690)
塚田 英晴 麻布大学, 獣医学部, 教授 (60343969)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 一夫一妻 / 哺乳類 / 分散 / タヌキ / 糞DNA / イヌ科 / 外来種 / 性差 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの動物で分散様式に性差があり、鳥類ではメス分散が多いのに対し、哺乳類ではオス分散が多い。この違いには、鳥類は一夫一妻でオスが子育てをするのに対し、哺乳類は一夫多妻でオスが子の世話をしないことが関係していると考えられているが、哺乳類内の種差については十分に解明されていない。イヌ科の多くの種は、哺乳類では稀な一夫一妻でオスも子育てを行う鳥類同様の特徴をもつため、分散様式の性差を考察する上で重要な分類群である。そこで、本研究では、イヌ科に属するタヌキを対象に、糞から抽出したDNAを分析し、分散様式の性差を明らかにした上で、他のイヌ科の研究と比較し、分散様式の性差に影響する要因について考察する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、一夫一妻の哺乳類の分散様式の性差を明らかにし、配偶様式との関連を明らかにすることである。一夫一妻の哺乳類の中でも、鳥類同様にオスも子育てをするイヌ科に属するタヌキを対象とし、タメ糞場から採取した糞を用いてDNA解析を行い、分散様式を解明することを目指している。 今年度は、昨年度開発した実験系を用いて、宮城県出島のタヌキの分散様式について解析した。2018年2月と2020年2月にタヌキのタメ糞場で採取し、DNAを用いて個体識別した51個体分の糞由来DNAを解析に使用した。マイクロサテライト22領域の遺伝子型を決定し、空間自己相関分析を行った結果、雌雄とも、2018年、2020年ともに近い距離帯で有意に自己相関係数が高く、2020年のオスを除き、遠い距離帯で有意に自己相関係数が低いことがわかった。また、オス間、メス間とも、タメ糞場を共有する個体間の平均血縁度は、共有しない個体間より有意に高い値であった。これらの結果は、雌雄とも、近い距離に血縁者がいる割合が高いことを示しており、タヌキでは分散様式の性差がほとんどないことを示唆している。また、ミトコンドリアDNAの解析で、野田市で採取した試料からユーラシア大陸で発見されているハプロタイプに近いタイプを発見したため、既報のタヌキの配列を用いて系統樹を作成した結果、人為的な移入の可能性が示唆された。以上の成果については、国内学会で発表した。さらに、横浜市こどもの国でも定期的にタヌキの試料を採取し、DNA抽出やマイクロサテライトの解析などを進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的である一夫一妻哺乳類の分散様式について、宮城県出島での解析を実施し、その成果を国内学会で発表した。また、研究の過程で発見したユーラシア大陸由来と推定されるハプロタイプについても国内学会で発表した。さらに、昨年度解析したタヌキの個体数推定に関する成果を国際誌に公表した。このように一部成果について公表できているのに加え、本研究プロジェクト開始後に試料収集を始めた横浜市こどもの国でも、予定通り試料採集を進められており、進捗状況は概ね順調だといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した実験系を用いて、横浜市こどもの国で収集した試料のDNA解析を行う。また、国内学会で発表した出島での分散様式の性差に関する成果について、論文執筆を進める予定である。
|