研究課題/領域番号 |
22K06419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福元 清剛 静岡大学, 工学部, 助教 (60600129)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 視線 / 眼球 / 眼筋筋電位 / 眼病 / スクリーニング / 眼筋 / 眼球運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,研究代表者らが開発してきたヒトの視線や注視位置を検出できる装置を応用し,眼筋の筋力低下やバランスの崩れに起因すると考えられる眼病の早期発見を目的とするスクリーニング装置を開発する.視線の動きと,筋電計から得られる眼筋の筋活動とを関連付け,最終的には眼筋の活動を視線のみで計測できるようにする.この研究により,遠隔かつ非接触での眼病のスクリーニングが可能となり,さまざまな視覚障害や眼病の早期発見および早期治療に貢献できると考えられる.
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研究実績の概要 |
本研究では,研究代表者らが開発してきたヒトの視線や注視位置を検出できる装置を応用し,眼筋の筋力低下やバランスの崩れに起因すると考えられる眼病の早期発見を目的とするスクリーニング装置の開発を目的とする.眼病が発生する原因の例として,眼筋の支配神経の麻痺に伴う眼筋の機能不全や,眼筋の働きが弱くなることが示唆されており,このことから,眼筋や眼球(視線)の動きを日常的にモニタリングすることは重要であると考えられる.眼筋の動きを捉える手法として,電極を皮膚に貼付して筋電位を計測する方法がある.しかし,筋電位は眼筋の細かな動きを計測できる一方,電極を皮膚に直接接触させる必要があるため,日常的な計測には適していない.そこで,研究代表者らが開発してきた注視点(視線)検出装置を使用し,視線の動きと同時に電極を用いた筋電位の計測を行う.そして,視線の動きと筋電位を関連付け,最終的には視線の動きのみで眼病のスクリーニングが可能な装置を開発する. 初年度は,視線(眼球)を動かした際に眼筋からどの程度の筋電が得られるかを確認した.被験者の眼の周辺に筋電センサーの電極を貼付し,被験者にはその状態で視線をさまざまな方向に向けるよう指示した.そして,筋電センサーから,各方向を向いていた時の筋電を取得した.測定の結果,微弱な筋電位を得ることはできたが,眼筋からの信号であるかは明確に分からなかった.このことから,針電極のような侵襲的な方法を用いなければ,眼筋の筋電位を正確に測定することは困難であると示唆された.そこで,今後は筋電を介さずに直接,視線の動きのみを計測して眼病との関係を検討することにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼病の一因として,眼筋の機能不全や,眼筋の萎縮などが挙げられる.眼球を動かすための筋は外眼筋と呼ばれ,上直筋,下直筋,内側直筋,外側直筋,上斜筋,下斜筋の6つがある.本研究ではまず,視線(眼球)の動きと眼筋筋電位との関係性を明らかにするための測定を行った.具体的な測定方法として,筋電位の測定が比較的容易であると考えられる,眼の外側(外直筋)と下側(下直筋)の皮膚上に筋電センサーを貼付した.また,基準電位を耳朶から取った.この状態で,被験者にはさまざまな方向に視線を向けさせながら筋電位を測定した.この結果,視線を動かした場合であっても微弱な筋電位信号しか得ることができず,外眼筋からの信号であるか明らかにできなかった. この理由として,主に2つの原因があると考えられる.1つ目は,外直筋や下直筋といった外眼筋は頭蓋骨の内部に存在しており,皮膚の表面から筋電センサーで測定しても微弱な信号しか得られなかったのではないかと思われる.2つ目として,眼の周辺には眼輪筋(瞼を開閉する働き)や上唇挙筋(鼻翼や上唇を引き上げる働き)といった表情筋が表層部に存在しており,本測定のような皮膚表面から測定する方法では主に表情筋の筋電位を拾ったためではないかと推察される.外眼筋の筋電位を測定する方法として針電極が考えられるが,侵襲的な方法であるため,眼病の簡易的なスクリーニングには不適切である. 以上のことから,視線と外眼筋の筋電位を非侵襲的な方法で同時に測定し,両者の関連性を明らかにすることは困難であることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの測定において,外眼筋の筋電位を測定するためには,針電極のような侵襲的な計測方法を用いる必要があることが示唆された.本研究の最終的な目的は「視線の動きのみで眼病のスクリーニングが可能な装置を開発」であるため,視線の動きのみから眼病との関係性を検討する予定である. 例えば,白内障は水晶体が白く濁ることで徐々に視界が狭くなり,発見や治療が遅れると失明する可能性がある病気である.また,緑内障は眼圧の上昇により視神経が傷つけられ,視野が狭くなる病気である.こちらも,発見が遅れれば失明する危険性がある.加齢黄斑変性は,加齢により網膜の黄斑に異常が現れ,視野の中心部分が歪んだり暗くなったりすることで視力の低下を招く.また,斜視は片方の眼の視線が,見ようとする対象に向かない状態である. 以上のような病気の特性から,ディスプレイ画面上に表示させた,さまざまな方向に動いたり,大きさや色が変化したりする視標を被験者に視線で追わせることで,どのような動きなら見えているか,どの領域が見えていないかなどの総合的な眼の状況や,どの程度の能力を有しているか(眼年齢)を定義できると考えられる.眼年齢を定義し,これを評価することができれば,日常的に眼病のスクリーニングが可能となり,眼病の早期発見に貢献できると期待される.
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