研究課題/領域番号 |
22K06421
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
清水 悠路 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員准教授 (40569068)
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研究分担者 |
川尻 真也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20457576)
延末 謙一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (20823272)
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
山梨 啓友 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60709864)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | ミトコンドリア機能低下 / 血糖スパイク / 早食い / 動脈硬化 / 身長低下 / 甲状腺 / GDF15 / エネルギー代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
効率的な動脈硬化疾患予防に有用な新知見を得るため、甲状腺が有するエネルギー代謝調整機能(機能的潜在性)に着目し、エネルギー産生能(ミトコンドリア代謝)マーカーであるGrowth Differentiation Factor 15(GDF15)を用いた住民コホートを構築する。 この住民コホートを用いて、ミトコンドリア機能(GDF15)と動脈硬化指標[頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)および、心臓足首血管指数(CAVI)]の関連、さらには、この関連への甲状腺機能の影響を明らかにすることで、未知の「甲状腺の有するエネルギー調整機能の動脈硬化指標への影響」を解明する(全身的協関)。
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研究実績の概要 |
2022年度の解析において認めたミトコンドリア機能が低下するとその血清濃度が上昇してくるGDF-15と頸動脈中内膜肥厚(CIMT)で定義した動脈硬化の間の有意な正の相関に関しては、論文にての発表を行った。 さらに2023年度の解析では、早食いは糖代謝に影響を及ぼし血糖スパイクをもたらすこと、血糖スパイクは血清GDF-15濃度を上昇させると報告されていることから、早食いの健康への影響に着目。成人における身長低下は全死亡及び心臓血管病リスク因子であるとの報告があるが、これに関連し、職域健診受診者を対象に実施した検討において、太っていない(body mass index [BMI]が25kg/m2未満)者において、人と比べて食べる速度が速いと答えた者は、そうでない者に比較し有意に身長低下のオッズをあげることが判明したため、論文報告した(PLoS One 2023;18(4):e0284998)。 また60歳以上の高齢者を対象にした解析において、動脈硬化(CIMTが1.1mm以上)も有意に身長低下のオッズを上げた。従って、動脈硬化形成が心臓血管病リスク因子としての身長低下の背景に存在すると考えられた。しかしながら、早食いと動脈硬化との関係に関しては不明であった。 そこで早食いで誘発される血糖スパイクは、血管内皮を障害するとともに血清GDF-15濃度をあげることに着目し解析を実施。血清GDF-15 が高値(中央値以上)の者においてのみ早食いは動脈硬化と有意な正の関係を認めた。 本研究結果は、ミトコンドリア機能低下が、早食いと動脈硬化との関係における決定因子となり得ることを意味し、本研究目的であるエネルギー調整機能の動脈硬化指標への影響の解明の一端を担う内容であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に研究実施に必要なデータセットは組まれており、このデータセットを用いて解析も進んでいる状態である。この解析の結果の一部は既に、論文報告もされている。またさらには、心臓血管病リスク予測因子としてなり得ると報告されている身長低下が早食いの影響を受けることに着目したことで、血清GDF-15高値が示唆するミトコンドリア機能低下が、早食いと動脈硬化の関係の決定因子として働く可能性が示唆され、新たな血清GDF-15値の健康指標としての役割を見出すことができた。この結果においても現在、専門誌での発表のために投稿中の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
今までの本研究における定期健診受診者を対象に行った解析において、ミトコンドリア機能を示唆し得る血清GDF-15値が、生活習慣である早食いと動脈硬化指標との関係に影響を及ぼし得ることが判明した。この結果は動脈硬化形成にエネルギー代謝が決定因子として働くことを示唆しており、血管リモデリングに未知の新たなメカニズムが存在していることを意味する。 しかしながら、まだ多くの生活習慣データと動脈硬化指標との関係における血清GDF-15値の影響は解析できていない。特にエネルギー代謝に関係する生活習慣は強力にミトコンドリア機能の影響を受けることが想定される。 従って今後は現行の論文を進めて行くことに加え、エネルギー調整機能の動脈硬化指標への影響をさらに解明する目的で、まだ検討が充分にできていない生活習慣への血清GDF-15値の影響を解明していくことを目指す。
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