研究課題/領域番号 |
22K06426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩田 哲郎 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (30771563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 嗅覚受容体遺伝子 / 発現制御領域 / 長距離エンハンサー / エピジェネティック修飾 / 嗅覚受容体 / 遺伝子発現制御領域 / エンハンサー / 遺伝子クラスター / 遺伝子発現制御 |
研究開始時の研究の概要 |
ClassⅠタイプ嗅覚受容体は、動物の進化の過程ですべての遺伝子が染色体上の1カ所に留まり、長大な遺伝子クラスターを形成している。これまでの研究により、この遺伝子クラスターを制御する調節配列(エンハンサー)は、「制御する遺伝子数」と「ゲノム上の作用範囲」の2点において他に類を見ない規模で遺伝子発現を制御していることが明らかになった。本研究では、このエンハンサー中の特徴的な配列や、ClassⅠ嗅覚受容体遺伝子クラスターのゲノム構造に着目し、“超”長距離発現制御を可能にする分子基盤の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ClassⅠタイプ嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞特異的なエピジェネティックプロファイルを明らかにするため、昨年度から継続してFACSにより分取したClassⅠ発現嗅神経細胞を用いてATAC-sequencingを実施し、網羅的オープンクロマチンデータ(合計2 biological replicates)を取得した。このデータを、公開されている全成熟嗅神経細胞(大多数はClassⅡタイプ嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞)のデータと比較することによって、ClassⅠ嗅覚受容体遺伝子クラスターの近傍にClassⅠ発現嗅神経細胞でのみ特異的にピークが認められる領域、すなわちJ-element以外のClassⅠエンハンサー候補領域を見出した。候補領域の機能を明らかにするため、CRISPR-Cas9により欠失マウスを作出し、遺伝子発現解析に取り掛かっている。また、ClassⅠ発現嗅神経細胞におけるヒストン修飾プロファイルを明らかにするため解析条件を検討した。FACSにより分取できるClassⅠ発現嗅神経細胞数は少数のため通常のChIP-sequencing法は難しいと考え、CUT&Tag法を用いて、まず構成的ヘテロクロマチン修飾(H3K9me3)の解析を試みた。FACS前に酵素による分散処理をしているために使用した細胞数に対して取得ピーク量が少ない可能性があったが、修飾レベルを調べるには十分信頼できると考えられた。今後はこのアッセイ法によりユークロマチン修飾(H3K27ac)も解析するとともに、全成熟嗅神経細胞(コントロール)に対しても同様に解析を進め、修飾レベルの比較をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にClassⅠ発現嗅神経細胞のエピジェネティック解析を進め、網羅的オープンクロマチンデータ(n=2)の解析を実施した。この解析から未だ明らかになっていない新たなClassⅠエンハンサー候補領域を見出し、欠失マウスを作出してその機能解析に着手した。ヒストン修飾解析については、CUT&Tag法による構成的ヘテロクロマチン修飾(H3K9me3)の解析を通して、現状FACSにより収集できるClassⅠ発現嗅神経細胞数でも実施できる目処がついた。また、J-element中の新規コンセンサスモチーフの解析に関しては、昨年度中に作出した欠失マウスの遺伝子発現解析(RNA-sequencing)を実施し、より詳細な解析を進めている。以上の点から、一定の進捗と成果が得られており、総合しておおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ClassⅠ発現嗅神経細胞におけるヒストン修飾プロファイルを明らかにするために、構成的ヘテロクロマチン修飾(H3K9me3)およびユークロマチン修飾(H3K27ac)を対象とし、FACSにより収集したClassⅠ発現嗅神経細胞ならびに全成熟嗅神経細胞(ClassⅡ発現嗅神経細胞のプロファイルを反映)もコントロールとして解析を進める。これらのデータは、別途解析を進めている新たなClassⅠエンハンサー候補領域を見出すにも役立つ。最終年度となるため、ClassⅠ発現嗅神経細胞のエピジェネティック解析ならびにJ-element中の新規コンセンサスモチーフの機能解析を進めることで、長距離発現制御を可能にする分子基盤を明らかにし、論文化を目指す。
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