研究課題/領域番号 |
22K06436
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 勝重 駒沢女子大学, 人間健康学部, 教授 (80291342)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 光学イメージング / 膜電位感受性色素 / 機能発生 / 機能形成 / 嗅神経 / 神経回路網 / 終脳 / 鶏胚 / optical imaging / voltage-sensitive dye / embryo / olfactory nerve / neural circuit |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、胎生期の終脳における嗅覚神経回路網の機能発生/構築過程を解明することを目的とする。研究方法としては、①膜電位感受性色素や、膜電位タンパクセンサーを用いたニューロン電位活動の光学的イメージング法による機能マッピングと、②カーボシアニン系蛍光色素や、rhodamine dextranを用いた形態マッピングを組み合わせた多角的解析を行う。具体的には、まず、発生初期の鶏胚を対象とした実験から、嗅覚神経回路の機能発生/構築過程の基本的プロフィルを明らかにし、さらに、実験対象をラット/マウス胎仔に広げて、個体発生と系統発生の両側面からデータの比較を行い、本命題の解明を進める。
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研究実績の概要 |
本研究は、胎生期の終脳における嗅覚神経回路網の機能発生/構築過程を解明することを目的とする。研究方法としては、①膜電位感受性色素や、膜電位タンパクセンサーを用いたニューロン電位活動の光学的イメージング法による機能マッピングと、②カーボシアニン系蛍光色素や、rhodamine dextranを用いた形態マッピングを組み合わせ、多角的な解析を行う。具体的には、まずは発生初期の鶏胚を対象とした実験から、嗅覚神経回路の機能発生/構築過程の基本的プロフィールを明らかにし、さらに、実験対象をラット/マウス胎仔に広げて、個体発生と系統発生の両側面からデータの比較を行い、本命題の解明を進める。 令和5年度は、令和4年度に引き続き、鶏胚「N.I-嗅球-終脳標本」を用いて実験を行った。まず、孵卵10日の標本を膜電位感受性色素(NK2761)で染色し、嗅神経を吸引電極で刺激して、終脳内の嗅覚神経回路網に関係する応答領域の同定を行い、令和4年度に得られたデータの再現性を確かめた。さらに、"optical sectioning"を組みあわせることにより、光学的三次元機能マッピングが可能であるか否かを再検討した。実験からは、波形解析を行うのに十分なS/N比を持つ光学シグナルが記録され、終脳内における神経細胞の活動電位や興奮性シナプス後電位を分離することができた。それらの光学シグナルの時空間的分布パターンを調べるために、データをカラー表示して形態マッピングと比較した。 一方、孵卵10日の標本だけでなく他の発生段階の標本でも、同様の光学計測が可能であるかを検討した。その結果、孵卵10日前後の発生段階の標本においても、終脳から光学シグナルを安定して記録することに成功した。これらの実験結果により、終脳における嗅神経関連の神経回路網の機能発生/形成について、令和6年度に行う予定の実験の基本的なデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、個体発生過程、特に胎生期の嗅覚神経回路網に焦点をあて、①膜電位感受性色素や、膜電位タンパクセンサーを用いた神経活動の光学的イメージング法による機能的マッピングと、②カーボシアニン系蛍光色素やrhodamine dextranを用いた形態的マッピングとの比較から、終脳における嗅覚神経回路網の機能発生・構築過程を明らかにすることを第一の目的とするものである。 令和5年度は、令和4年度に引き続き、嗅神経の電気刺激により終脳に誘発される光学シグナルのマッピングをいくつかの発生段階の標本で行った。これにより、終脳における嗅覚神経回路網発達の基本データを取得することに成功した。実験は、現在まで当初の実験計画通りにほぼ順調に進んでいる。今後の研究遂行の上での問題点は今のところ見当たらず、令和6年度の研究の展開が期待できた。
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今後の研究の推進方策 |
様々な発生段階の鶏胚を用いて実験を行ない、基本データを得る。それを元にラット/マウス胎仔で解析を進める。 (1)大脳における嗅神経(N.I)の神経回路網の解析: 「N.I-嗅球-大脳標本」を膜電位感受性色素NK2761で染色し、嗅神経を吸引電極で刺激し、終脳内で応答領域の同定を行う。初期胚脳幹は光透過性がよいので、顕微鏡の焦点面をz軸方向に移動させて"optical sectioning"を行うことにより、光学的三次元機能マッ ピングを行う。さらに、光学的シグナルの波形解析から、大脳内におけるニューロンの活動電位、興奮性シナプス後電位、抑制性シナプス後電位を分離し、これをさまざまな発生段階の標本を用いて行い、その機能発生・構築過程を調べる。 (2)トレーサーを用いた形態学的観察: (1)で用いた標本をトレーサーで染色して形態学的観察を行い、機能マッピングの結果と比較して、嗅覚回路網を構成する神経核の同定を行う。 (3)疎水性膜電位感受性色素による測定: 疎水性膜電位感受性色素で嗅神経末端や特定の神経核だけを染色し、嗅球や大脳におけるシナプス前応答を独立して 記録する。得られた結果を、(1)の結果と比較し、興奮性および抑制性シナプス応答の詳細な分析を試みる。 (4)ラット/マウス胎仔を用いた実験: 以上の項目に関して、ラット/マウス胎仔を用いて同様の実験を行う。得られたデータを鶏胚での結果と比較し、種による違いを明らかにする。 (5)これまでの研究において、鶏胚、ラット/マウス胎仔の脳幹における顔面神経、舌咽神経、迷走神経の機能発生・構築過程の一端を明らかにしてきている。 これまでに得られているデータを、本研究の嗅覚系で得られるデータと比較して、様々な脳神経系関連神経回路網の発達過程の一端を明らかにする。
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