研究課題/領域番号 |
22K06439
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
櫻井 晃 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (50749041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | シナプス可塑性 / 連合学習 / シナプトタグミン / GRASP / カルシウムイメージング / キイロショウジョウバエ / ショウジョウバエ / コマンドニューロン |
研究開始時の研究の概要 |
シナプスの可塑的変化によって記憶はつくられると考えられており、両者の因果関係の追及は記憶研究の重要課題の1つである。そこで、シナプスの変化と、記憶形成による動物行動の変化を同時にリアルタイムで追跡することが可能な独自の連合学習実験系を構築し、摂食を司る中枢コマンドニューロンに統合されるシナプス入力の強化によって記憶が形成されることを明らかにした。これに基づき、本研究ではシナプス前後の相互作用を通じてシナプス可塑性に関与することが示唆されている分子に着目し、神経活動依存的にシナプス入力の変化を生み出すミクロな機構が、マクロな脳機能の変化(記憶)へとつながる分子細胞基盤を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、中枢において同定した単一ニューロン間のシナプスをモデルとして、シナプス可塑性と記憶を明確な因果関係のもとに結びつけて、その分子細胞基盤を理解することを目指す。神経筋接合部シナプスの電気生理学的解析により、エキソサイトーシスのためのCa2+センサーと想定されるシナプトタグミン7(Syt7)がシナプス促通のために機能していることがわかっていたが、その記憶形成への寄与については不明であった。学習の神経基盤を理解するためには、学習による行動の変化を解析し、その行動を制御する神経回路を同定し、その神経回路内で行動の変化を担う主要な部位を同定する必要がある(塚原仲晃ら、1981年)。この方法論にならい、中枢シナプスの変化と動物行動の変化を同時にリアルタイムで追跡することが可能な独自の連合学習実験系を構築した。これを用いて前年度にSyt7突然変異体を解析したところ、短期記憶に欠損があることがわかった。そして今年度は正常型のSyt7タンパク質をSyt7突然変異体の神経系で発現させたところ、正常な短期記憶が観察された。Syt7による短期シナプス可塑性が、短期記憶の基盤となっていることが示唆された。Syt7の機能を細胞レベルでさらに調べるためには、記憶形成を担うシナプスの同定が不可欠である。この連合学習では、摂食を司る中枢コマンドニューロン「feeding neuron (FN)」に統合されるシナプス入力の強化によって記憶が形成されることがわかっており、FNと接続するシナプス前細胞を同定するために、前年度にGRASP法を用いた解剖学的なスクリーニングを開始した。今年度はカルシウムイメージング法を用いて条件刺激への応答を調べるという2次スクリーニングを行ったところ、シナプス接続可能なほどFNに近接しており、なおかつ条件刺激に反応するニューロンを同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短期シナプス可塑性を担うSyt7の機能が失われると、連合学習の実験系において訓練直後から記憶異常が観察されるが、神経系における正常型Syt7タンパク質の強制発現により、その異常が救済されることが確認され、短期シナプス可塑性と短期記憶の結びつきを示唆する新たな実験結果を得ることができたため。また、記憶を担うシナプス前細胞の同定については、解剖学的なスクリーニングから選出された候補ニューロンの中から、条件刺激を与えると活動するニューロンをカルシウムイメージング法を用いて同定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行ったGRASP法を用いたスクリーニングとカルシウムイメージング法を用いた実験から、記憶形成を担うシナプス後細胞であるfeeding neuron(FN)とシナプス接続可能な距離にあり、なおかつ条件刺激で活動するニューロンを同定した。しかし、このニューロンとFN間に機能的なつながりがあり、その可塑的変化が記憶形成に関与しているかはまだ不明である。そこで、光遺伝学的な手法を用いてこのニューロンを人為的に活動させ、条件刺激を代替可能であるかを検討する。本研究で用いる独自の実験系では顕微鏡下で脳を露出させた状態のハエにおいて記憶形成の観察が可能であるため、訓練中や記憶のテスト時に特定の単一ニューロンを狙って光を照射することが可能である。そこで、テストの際にこのニューロンを活動させることで記憶の想起が起こるのか、そして訓練の際にこのニューロンの活性化の直後に無条件刺激を対呈示することで記憶形成が起こるのかを検討する。そうして同定された記憶形成を担うシナプス前細胞及び後細胞(FN)のそれぞれにおいてSyt7の機能解析を行う。
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