研究課題/領域番号 |
22K06444
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井上 蘭 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (70401817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 遠隔恐怖記憶 / 扁桃体 / 記憶痕跡細胞 / グルココルチコイド受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
過剰な遠隔恐怖記憶がPTSDの病態形成に深く関わると考えられているが、脳内でどのような細胞、神経回路レベルの変化が過剰な遠隔恐怖記憶の基盤となっているかは不明である。本研究では過剰な遠隔恐怖記憶が認められた扁桃体外側核選択的グルココルチコイド受容体ノックアウト(LAGRKO)マウス用いて、遠隔恐怖記憶の形成に関わる脳部位である内側前頭前皮質(mPFC)並びに聴覚皮質(AC)に出現する記憶痕跡細胞がLAGRKOマウスでどのように変化し、これらの変化と過剰な遠隔恐怖記憶との因果関係を明らかにすることでPTSDの病態解明を目指す。
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研究実績の概要 |
過剰な遠隔恐怖記憶は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の病態形成に深く関わると考えられている。しかしながら、PTSDの原因となる過剰な遠隔恐怖記憶を引き起こす脳内機構はほとんど不明である。 これまで我々はグルココルチコイド受容体(GR)を扁桃体外側核(LA)選択的に欠損させたマウス(LAGRKO)において、音依存的恐怖条件付け28日後の遠隔恐怖記憶がコントロールマウス(Floxed GR)に比べ有意に増強されることを見出した。また、Floxed GRマウスに比べLAGRKOマウスでは遠隔恐怖記憶の想起を担う記憶痕跡細胞が恐怖条件付け時に内側前頭前野(mPFC)で有意に多く形成され、逆に聴覚皮質(AC)では少なく形成されることを明らかにした。今年度では、LAGRKO マウスで認められた記憶痕跡細胞の変化と過剰な遠隔恐怖記憶との因果関係を明らかにするため、記憶痕跡細胞の活動抑制を可能とするアデノ随伴ウィルスAAV-c-fos-rtTAとAAV-TRE-hM4D-mcherryをLAGRKOマウスとFloxed GRマウスのmPFCあるいはACに注入し、2カ月後に音依存的恐怖条件付け解析を行った。その結果、Floxed GRマウスのACにおける記憶痕跡細胞の神経活動を抑制すると遠隔恐怖記憶が有意に増加したが、LAGRKOマウスでは記憶痕跡細胞の抑制効果が認められなかった。また、Floxed GRマウスのACでは記憶痕跡細胞の約60%が抑制性ニューロンであることが明らかとなった。一方、mPFCにおける記憶痕跡細胞の神経活動を抑制するとLAGRKOマウスでは遠隔恐怖記憶が有意に低下し、Floxed GRマウスでは有意な差が認められなかった。 これらの結果から、ACならびにmPFCを中心とした神経回路の異常が過剰な恐怖記憶を引き起こす原因であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度では化学遺伝学手法を用いて、ACならびにmPFCにおける記憶痕跡細胞の形成と遠隔恐怖記憶との因果関係を明らかにし、これらの脳部位における記憶痕跡細胞の異常な形成が過剰な恐怖記憶を引き起こす原因であることを明らかにした。また、LAGRKOマウスで記憶痕跡細胞に異常が生じた原因を検討するため、LA-AC間のシナプスを標識するAAVベクターを新たに作製した。
よって、予定のとおり研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、LAGRの欠損により生じたACならびにmPFCの記憶痕跡細胞の変化が過剰な遠隔恐怖記憶の原因であることが考えられた。本年度ではFloxed GRマウスと比較して、LAからACへの神経連絡がLAGRKOマウスでどのように変化したかを検討する。具体的にはAAVベクターを用いて、hSyn-FLEx-mGFP-2A-Synaptophysin-mRubyをFloxed GRとLAGRKOマウスのLAに注入し、ACで形成されるシナプスの数を計測する。また、抑制性シナプスマーカーであるgephyrinと興奮性シナプスマーカーであるVGluT1の免疫蛍光染色を行い、LA-AC間のシナプスが興奮性あるいは抑制性であるかを検討する。
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