研究課題/領域番号 |
22K06447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古市 貞一 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50219094)
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研究分担者 |
篠田 陽 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80403096)
定方 哲史 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90391961)
前澤 創 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (90548174)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 膵外分泌 / 腺房細胞 / CAPS2 / Cadps2 / エキソサイトーシス / 分泌顆粒 / 慢性膵炎 / アミラーゼ / 開口放出 / 有芯小胞 / 分泌障害 / CAPSタンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
神経伝達物質やホルモンなどの生理活性をもつ因子は、どのタイミングで、どこへ向けて、どれだけの量を放出(分泌)されるかが、エキソサイトーシスと称する現象によって細胞タイプごとに適正にコントロールされています。エキソサイトーシスの変調は、精神神経疾患や代謝生理疾患につながります。 本研究では、エキソサイトーシスにはたらくCAPSタンパク質に着目して、神経系における神経伝達物質や神経ペプチド、非神経系である膵臓における膵液やインスリンの分泌など、異なった細胞タイプにおけるエキソサイトーシスの多様性とその障害によって発症する病態について、CAPSを基軸として統合的に理解することをめざします。
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研究実績の概要 |
研究の目的:本研究では、エキソサイトーシスの促進に関わる分泌制御因子CAPS/Cadpsに着目し、神経細胞/神経内分泌細胞/膵内外泌細胞におけるシナプス小胞/有芯小胞のエキソサイトーシスとその欠損で発症する病態との関連を明らかにすることを目的としている。 研究の内容と背景:2022年度は、3種類の遺伝子改変マウスCadps2 KOマウス、膵臓特異的Cadps2 cKOマウス(Ptf1a-Creマウス×Cadps2 floxマウス)、exon3欠損型Cadps2-dex3マウスを利用して、膵臓外分泌細胞(腺房細胞)におけるCAPS2/Cadps2依存的な分泌顆粒(チモーゲン顆粒)のエキソサイトーシスと、その障害による膵疾患の発症との関連について主に研究を行った。 研究成果:CAPS2欠損は、膵腺房細胞内における分泌顆粒の生成と輸送経路の微細形態の異常、分泌顆粒の異常な細胞内蓄積などを引き起こし、血清アミラーゼ活性の低下、腺房の萎縮や細胞死、脂肪細胞や間質細胞の増加、線維化の亢進、免疫細胞の浸潤など、膵炎様症状を引き起こすことが明らかとなった。また、膵臓特異的Cadps2 cKOマウスも同様の病態を示すことから、膵臓におけるCAPS2欠損が主因であると示唆された。さらに、非アルコール性のヒト慢性膵炎患者において稀なCADPS2遺伝子変異型p.Met224Valを同定した。この変異部位はexon3にあり、Cadps2-dex3マウスも膵腺房細胞の異常を示すことを実証した。 意義と重要性:膵腺房細胞のエキソサイトーシス機能は食物代謝に不可欠であり、その機能不全は膵炎発症につながる。本研究の成果は、CAPS2/Cadps2が膵外分泌調節に重要な役割をもち、膵疾患の危険因子の一つであることを示唆する。また、Caspd2 KOマウスは、慢性膵炎や膵外分泌不全のモデルになると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である①エキソサイトーシスにおけるCAPSタンパク質の役割と、②CAPSタンパク質機能の欠損による疾患との関連性について、3種類のCadps2遺伝子改変マウスを用いた膵外分泌を担う腺房細胞の研究によって、膵外分泌における消化酵素アミラーゼを含有する分泌顆粒のエキソサイトーシスにおけるCAPS2/Cadps2の機能的な役割を示すことができ、またその欠損は慢性膵炎様の症状発症の原因になることを明らかにすることができた。さらに、ヒト慢性膵炎患者よりCADPS2遺伝子変異を同定し、変異部位のexon3を欠損するCadps2発現マウスも同様の細胞異常を発症することを実証することができた。これらの研究成果は、学術雑誌に発表することができた。また、オキシトシン分泌と発達障害におけるCAPS2/Cadps2の関連性に関する総説を学会誌に発表することができた。以上のことから、順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、マウスにおけるCAPS2/Cadps2遺伝子の欠損が引き起こす膵炎様病態に関連する遺伝子発現を明らかにするため、KOマウス膵臓におけるトランスクリプトーム解析を行う。これによって、CAPS2/Cadps2欠損によって発症する膵炎様の病態に関わる分子機構についての理解を深める。 また、中脳ドーパミン産生細胞におけるエキソサイトーシスについて研究を進める計画である。CAPS2は中脳の腹側被蓋野と黒質緻密部のドーパミン産生細胞に発現することがわかっている。ドーパミンはシナプス小胞(SV)に取り込まれてシナプス伝達に関わる他、有芯小胞(DCV)にも取り込まれて傍分泌や自己分泌による制御も行う。本研究では、主に細胞体や近位樹状突起周辺の有芯小胞のエキソサイトーシスにCAPS2が関与するのかについて解析する。Cadps2 KOと野生型マウスから調製した初代ドーパミン培養細胞を用いて、疑似蛍光神経伝達物質FFN511をモノアミントランスポーターVMAT2によって小胞に充填させて、蛍光イメージングの比較解析を行う。
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