研究課題/領域番号 |
22K06460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60239605)
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研究分担者 |
百瀬 修二 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70360344)
横尾 友隆 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80400688)
藤原 正和 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20312069)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / アポリポプロテインE / アミロイド前駆体蛋白 / アミロイドβ蛋白 / ペプチド / 遺伝子改変マウス |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、脂質・コレステロール調節を担うアポリポ蛋白 E(ApoE) とアミロイド前駆体蛋白の結合部位の配列に lysine (K) 残基を付加したペプチド阻害剤(K-ApoE-ペプチド)を設計し、アルツハイマー病の原因蛋白であるアミロイド β 蛋白増産の抑制に成功した。本研究では、次の段階に進み、革新的なペプチド治療薬を開発する。具体的には、1)病態マウスに、K-ApoE-ペプチドを投与し、有効性(認知機能やアミロイド β 蛋白の蓄積への改善効果)・安全性を試験する。2)臨床応用に向け、特定した低密度リポ蛋白受容体結合領域を短く絞り込み、有効性と脳内移行性に優れたペプチド阻害剤に改良する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、アルツハイマー病の病態改善を目指した革新的ペプチド治療薬の開発である。「アミロイド前駆体蛋白がApoEとの結合で細胞膜に輸送・蓄積し、その結果、細胞膜でのアミロイド産生経路が亢進して、アミロイドβ蛋白が増産される機構」をペプチド治療薬の標的としている。従来のアミロイド前駆体蛋白切断酵素阻害剤の開発とは異なり、新たな機構を標的とした点で、独自性が高い研究である。また、アミロイドβ蛋白そのものではなく、アミロイドβ蛋白の生産源となる細胞膜のアミロイド前駆体蛋白を減らすことに注目した点も創造的で、これまでにない効果的な次世代の治療薬の開発が期待される。 具体的には、前臨床研究として、設計したペプチド阻害剤(K-ApoE-ペプチド)をスウェーデン型アミロイド前駆体変異遺伝子(APPswe)・プレセニリン1(PS1)変異遺伝子(exon-9-deleted PS1)・ヒトアポリポプロテインEアイソフォーム遺伝子を導入した遺伝子改変マウス(アルツハイマー病マウス)に、250 μg/kg(7.5 μg/マウス)のK-ApoE-ペプチを1日1回腹腔内投与(12ヶ月齢から3ヶ月間)し、安全性と病態の改善効果を試験した。安全性に関しては、K-ApoE-ペプチドの3ヶ月間の腹腔内投与で、死亡を含めた試験中止となる一般状態の悪化は検出されていない。主臓器(脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓)を病理組織学的に解析し、異常所見を検出していない。特に、前臨床試験・臨床試験で報告されてきた副作用(脳内微小出血・T細胞性脳炎)を重点的に調べたが、K-ApoE-ペプチドを投与した何れのアルツハイマー病マウスにも検出されていない。有効性に関しては、K-ApoE-ペプチドを3ヶ月間の腹腔内投与した後に実施した行動・認知機能試験(新規物体認識試験・Y字迷路試験・放射状水迷路試験)にて、有効性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、前臨床試験として実施しているアルツハイマー病マウスへの250 μg/kg(7.5 μg/マウス)のK-ApoE-ペプチを1日1回腹腔内投与(12ヶ月齢から3ヶ月間)が終了し、安全性の解析が終了している。安全性に関しては、K-ApoE-ペプチドの3ヶ月間の腹腔内投与で、死亡を含めた試験中止となる一般状態の悪化は検出されていない。主臓器(脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓)を病理組織学的に解析し、病理組織学的異常所見を検出していない。特に、前臨床試験・臨床試験で報告されてきた副作用(脳内微小出血・T細胞性脳炎)を重点的に調べたが、K-ApoE-ペプチドを投与した何れのアルツハイマー病マウスにも検出されていない。有効性に関しては、K-ApoE-ペプチドを3ヶ月間の腹腔内投与した後に実施した行動・認知機能試験(新規物体認識試験・Y字迷路試験・放射状水迷路試験)にて、有効性が確認された。このため、有効性が見られない場合には、投与量・投与回数を改善する必要があったが、現行で良いことが分かった。令和5-6年において、残りのアルツハイマー様病態の脳アミロイド症の改善効果の解析を進めればよい進歩状況のため、おおむね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5-6年度においては、アルツハイマー様病態の脳アミロイド症の改善効果を解析していく。具体的には、①アミロイドβ蛋白量・アミロイド前駆体蛋白の変化を調べる。②脳ホモジェネートから可溶性、細胞膜、凝集分を抽出し、可溶性分画のモノマー・オリゴマー型のアミロイドβ蛋白量を、細胞膜・凝集分画のアミロイドβ40/42型の蛋白量をELISA・Western blot解析して、抽出分画別の減少効果を調べる。③細胞膜分画のアミロイド前駆体をWestern blot解析して、減少効果を調べる。④K-ApoE-ペプチドがβ-・γ-セクレターゼ、アミロイド前駆体蛋白の細胞内輸送、アミロイドβ蛋白の凝集反応のいずれの段階から作用するのかを示す。⑤過去に副作用が報告された標的である切断酵素(β-・α-セクレターゼ)の蛋白発現に対してK-ApoE-ペプチドは影響しないことを Western blot解析し、安全であることを示す。⑥ApoE 結合領域を解析し、臨床応用に向けたペプチド阻害剤を改良する。CHO/APPwt(ヒト野生型アミロイド前駆体蛋白遺伝子(APPwt)を発現するChinese hamster ovary (CHO)細胞を用いて、改良K-ApoE-ペプチドの探索を行う。低密度リポ蛋白受容体結合領域(ApoEの133-152アミノ酸配列)の解析: 10アミノ酸残基長のペプチドを5アミノ酸ずつオーバーラップするように設計した分断ペプチドを合成する。分断ペプチドにはN端に阻害作用をもたらすlysine(K)を1から10残基付加する。病態細胞に添加し、アミロイドβ蛋白産生への阻害作用をELISA・Western blotにて解析する。10アミノ酸まで結合領域を絞り込んだ、より脳内移行を考慮した小さな阻害剤を作製する。
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