研究課題/領域番号 |
22K06463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
本多 祥子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40287313)
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研究分担者 |
守屋 敬子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (70392371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 記憶 / 神経線維連絡 / トレーサー手法 / 前海馬台 / 海馬 / 記憶回路 / 嗅内野 / マーモセット |
研究開始時の研究の概要 |
記憶回路を構成する線維連絡は、齧歯類が基本型との前提で多くの研究がなされてきたが、実際に霊長類まで共通する線維連絡はどの部分なのか、各動物種で特徴的に発達した部分が存在するのかは未解明である。申請者はすでにラット(齧歯目)とウサギ(ウサギ目)に共通する記憶回路とウサギで付加的に発達した線維連絡を発見しており、本研究では霊長目マーモセットの記憶回路を網羅的に解析しラットやウサギと比較することで、「動物種を超え保存された基盤的線維連絡」および「霊長目で付加的に発達した未知の線維連絡」の存在を明らかにし、記憶回路の基盤構造の解明や霊長類の記憶形成機構の本質に迫る。
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研究実績の概要 |
初年度である2022年度は主にマーモセットのトレーサー注入実験を実施し、複数の新知見を得ることができた。具体的には、ラットには殆ど見られない海馬体CA1から前海馬台領域への直接投射が量的に非常に多く存在すること、他にも複数のラットに見られない投射関係が存在すること、他方でラットやウサギに共通する嗅内野ー海馬体間の主要線維連絡はほぼ全てマーモセットにも認められることなどを明らかにし、これらの成果を原著論文としてFrontiers in Neural Circuitsに発表した。この実験の過程でマーモセット前海馬台にトレーサーを限局注入できた例を得ることができ、この前海馬台限局注入例では前脳領域に多くの標識が認められたため、次に前脳領域に焦点を絞り前海馬台との線維連絡を調べた。結果として前障ー梨状内核複合体と前海馬台との間に双方向性の強い結合関係があることを明らかにした。前海馬台の層別、部位別に打ち分けた複数の注入例を比較したところ、主に前海馬台深層と前障ー梨状内核複合体との間に多量の線維連絡が存在することが示唆された。この成果は2022年度の日本神経科学大会、日本マーモセット研究会にて発表し、論文投稿準備中である。さらに新知見として、げっ歯類にはない高次の感覚統合を担う脳領域であるSuperior Temporal Polysensory area (STP野)と前海馬台の間にも強い結合関係があることを示唆する所見が得られた。これを確認すべくSTP野にトレーサーを限局注入し、前海馬台の主にV層がSTP野と結合関係を持つことが分かった。前海馬台は記憶形成回路の重要な中継点であるだけでなく、意識や多種感覚の統合にも絡んでいる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は東京都医学研にて共同研究者(守屋)とマーモセットのトレーサー注入実験を予定通り実施できている。当初の必要頭数よりも少ない頭数で効率的にデータを得られるよう工夫しながら、その分切片標本の観察に十分な時間をかける形で進行中である。既に前海馬台と前脳領域との結合関係における新たな知見を複数得ており、学会発表等で報告している。2022年度は主にマーモセットの実験に注力したためラットのトレーサー(ウイルスベクター)注入実験が停滞したが、今後透明化などの新たな手法との組み合わせも含め効率的な解析手法を検討しながら実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降も東京都医学研にてマーモセットを購入し、共同研究者と共にトレーサー注入実験を行う体制が整っている。切片作成や染色についても、防衛医大の共同研究者から引き続き協力を得られる予定である。切片観察とデータ解析はこれまで通り研究責任者の所属する東京女子医大にて行う。さらに今後は、都医学研の共同研究者の研究テーマ(大脳皮質発達機構解明)にも部分的に協力しながら本研究の方向性や応用範囲を広げていく予定である。 ラットのウイルスベクター注入実験については当初マーモセット実験と同時進行を予定していたが、単一ニューロンという微細な構造を観察する作業の性質上、集中的に多くの時間を要することから、当面はマーモセットのデータが一通り集まり論文化する段階となってから、改めてそちらにシフトする方針とする。
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