研究課題/領域番号 |
22K06467
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 活動電位 / 軸索 / 神経可塑性 / 海馬 / シナプス / オリゴデンドロサイト |
研究開始時の研究の概要 |
神経可塑性は神経機能発現と密接に関連しており,さまざまなタイプの存在が知られている。神経可塑性研究を発展させ,脳機能との関連をより適切に探求するには,個々の可塑性の追求だけではなく,可塑性同士がどのように連携するかについての理解が必要である。シナプス可塑性と軸索伝導可塑性の大きさの相関関係を検討したり,両者の時間経過を比較したりすることにより,どのように関連するか多角的に評価する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、ラット海馬のスライス標本を用い、ATPあるいはGroupⅡ代謝型グルタミン酸受容体アゴニスト(LY354740)を灌流投与し、シナプス可塑性を誘導させたときの軸索伝導可塑性を検討した。海馬CA1ニューロンの細胞体からホールセル記録を行い、興奮性シナプス後電流(EPSC)と逆行性活動電位を記録して薬物投与による変化を観察した。ATPは、10 microMの濃度で10分間投与した。投与中はEPSCの減弱が観察され、投与終了後より徐々に回復していった。そして、終了後10~20分後にはコントロールレベルを超えて大きくなった(ATP-induced LTP)。しかし、このLTPの大きさは、有意ではあるものの、予想していたよりは小さかった。同時に測定した逆行性活動電位の潜時は、ATP投与中には変化を示さず、投与終了後より潜時が短くなり始め、およそ20分後に変化のピークに達した。潜時の短縮は、40分間以上持続した。以上のことから、1)ATPそのものは軸索伝導に影響しないこと、2)軸索伝導の促進的な可塑的変化は、ATP-induced LTPに関連して生じていることが示唆された。LY354740を用いた実験では、先行論文においてEPSCではなく興奮性シナプス後電位(EPSP)の記録によりシナプス可塑性を評価していたため、本研究でもEPSP記録を用いた。1 microMの濃度で10分間投与したが、EPSPの有意な変化は観察することができなかった。一方、逆行性活動電位の潜時は投与中から延長し、投与終了後も延長したままであった。この実験結果からは、シナプス可塑性と軸索伝導可塑性との関連は見出せなかったが、代謝型グルタミン酸受容体活性化が軸索伝導に影響するという、軸索伝導制御の新たな一面を見つけることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間では、シナプス可塑性-軸索伝導可塑性連関について、細胞外記録とホールセル記録を用いて、主に以下の事項を検討していく。 1)高頻度刺激(テタヌス刺激)によってLTPが誘導されたときの軸索伝導の変化 2)低頻度によってLTDが誘導されたときの軸索伝導の変化 3)薬物によってシナプス可塑性が誘導されたときの軸索伝導の変化 4)軸索伝導変化の無髄線維と有髄線維の比較 そして、必要に応じて、カルシウムキレート剤やグルタミン酸受容体阻害薬でシナプス可塑性誘導を阻害したきの軸索伝導可塑性の変化を観察する。さらに、軸索伝導可塑性を阻害するカリウムチャネル阻害薬存在下で実験を行う。昨年度までに、1)および2)に関する結果は得られている。本年度では、3)について、ATPと代謝型グルタミン酸受容体アゴニストを用いた実験を行うことができ、興味深い結果が得られている。データ取得・解析とも問題なく行えており、研究進捗状況としては、順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、薬物投与によって誘導される可塑性について、引き続き例数を重ねて再現性を確認するとともに、可塑性の大きさと軸索伝導可塑性の大きさとの相関について検討する。その際、研究実績の概要でATP-induced LTPのところでも触れたように、LTPの大きさが十分ではないこともあったため、これに対する対策をとる必要がある。EPSPの記録では、EPSC記録に比べ大きなATP-induced LTPが得られることがわかってきたので、EPSP記録と逆行性活動電位記録を組み合わせて行っていく。電気条件刺激によるLTPでもEPSP記録を取り入れ、LTPと軸索伝導可塑性の相関についてさらに検討を加える。また、軸索を2か所で刺激して得られる潜時差をパラメーターとして追加し、細胞体での変化を除去することによって実験結果の精密さを高めていく。薬物によってシナプス可塑性が誘導されたときの軸索伝導の変化については、活性化Srcの細胞内投与を行う予定である。さらに、海馬内の他のシナプスでの記録も随時行っていき、上記4)で示した、無髄線維と有髄線維の比較による検討の準備もしていく。
|