研究課題/領域番号 |
22K06471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笠井 昌俊 京都大学, 医学研究科, 助教 (70625269)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 上丘 / in vivo イメージング / 視覚 / 方位選択性 / 方向選択性 / DREADD / 化学遺伝学 / 光遺伝学 / カルシウムイメージング / 2光子顕微鏡 / in vivo |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の脳内に形成される神経回路には,解剖学的または機能的に形成される計算モジュールがあると考えられる.一般に機能的な細胞構築は発達とともに形成され,安定した構造である考えられているが,最近申請者は上丘の機能的な細胞構築(機能マップ)が動物の状態によって動的に変化する可能性を見出した. 本研究課題では上丘の機能マップの動的変化の神経基盤を解明するために,機能マップを可視化しつつ,抑制性の神経回路が機能の影響を検証する.さらに神経修飾因子の影響を明らかにする.本研究により,動物の「注意や意識の生成」機構の理解にも発展すると期待される.
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研究実績の概要 |
本研究は,注意の生成や,感覚情報に基づいて適切な行動を生成するための,感覚ー運動情報変換を担うと考えられている中脳の上丘を対象とし,上丘における視覚情報処理のメカニズムと,その生理機能を理解することを目的としている.特に,大脳皮質でもよく知られているような脳内の機能的な細胞構築が,上丘においてどのように構成されるのかに注目し.上丘および,上丘に関連する領域との情報処理において,機能的な細胞構築からなる計算モジュールの性質がダイナミックに変化し,その変化が,さまざまに変化する外界の環境 に応じて知覚を変化させることが可能になるのではないかという仮説を検証する. 令和5年度は,前年度に立ち上げた化学遺伝学的な神経活動の活動操作を用いて,上丘内の抑制性細胞と上丘の機能マップの関係について検討した.抑制性の神経細胞に Cre を発現する遺伝子改変マウス (VGAT-IRES-Cre) を用いて,上丘に Cre 依存的に DREADD 受容体を発現させ,Cre 依存的に興奮・抑制性の DREADD 受容体を発現させた.抑制細胞の活動の変化が,上丘における,方位選択性・方向選択性の機能マップをどのよう変化するかを,in vivo 2光子カルシウムイメージングで記録・解析をおこなった. 二傍丘核(PBN) はコリン作動性の神経核であり,上丘と相互に神経投射を持つ.本研究では,神経活動を修飾するアセチルコリンの関与も調べるため,コリン作動性神経細胞に特異的に Cre を発現する ChAT-IRES-Cre マウスを用い, PBN に局所的に DERADD 受容体を発現させることが可能になった.このマウスに DCZ を投与し,PBN と上丘の機能マップの変化について記録・解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,somaGCaMP7f および 8f を用いた in vivo 2光子カルシウムイメージングと合わせて,興奮性・抑制性の DREADD 受容体である hM3Dq または hM4Di を上丘の抑制性神経細胞に同時に発現させ,局所回路機能の変化によって,方向選択性・方位選択性が,どのように変化しうるかを解析した. 興奮性の DREADD 受容体である,hM3Dq を抑制性細胞に発現させた場合,DCZ 投与前後において上丘の方向選択性を示す細胞の視覚応答が減弱することを確認した.一方で,最適な刺激方向自体は大きく変化せず,機能マップが大きく変化する可能性は低そうである. 上丘の抑制性神経細胞に抑制性の DREADD 受容体である hM4Di を発現させた場合,DCZ の投与後に,不均一だった方位選択性マップが,特定の方向にそろう変化を示す個体を確認した.これは以前の研究で発見したイソフルラン麻酔による機能マップの変化に似ている (Kasai & Isa, 2022).今後個体数を増やしてこの現象を確かめるとともに,個々の神経細胞で応答性や選択性がどのように変化するかをさらに解析する. 上丘内の局所回路だけではなく.上丘外の神経回路からの影響も検討するため,上丘の視覚領域である浅層と相互に神経投射をもつ,二傍丘核 (PBN) についても実験を開始した. コリン作動性の神経核である PBN 特異的に,DERADD 受容体を発現させるため,ChAT-IRES-Cre マウスを用いて,PBN 上丘へのアセチルコリンの入力を変化させる実験を開始した.記録する上丘と同側の PBN に hM3Dq を発現させた場合に,上丘の抑制性細胞を抑制した場合と同様に,方向選択性・方位選択性が,そろう傾向にある個体が確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
現状までで,上丘内の抑制性の神経細胞の抑制,および,同側の PBN からのアセチルコリン入力の増強により,上丘内の機能マップのひとつである,方向選択性・方位選択性マップが変化する可能性を見出した.今後は個体数を増やして,これが正しいかどうかをさらに確かめるとともに,個々の神経細胞レベルでどのような変化が起きているのかについて,詳細を調べていく.前年度までの検討事項であった,AAV の血清型の違いによる遺伝子発現効率の違いを補償するために.GCaMP 発現用と DREADD 発現用の AAV の血清型を 2/9 にそろえることができたので,均一な遺伝子発現が期待される.また,同側の PBN の活動を特異的に操作できるようになったことから,反対側の PBN もしくは,両側の PBN を同時に操作することも進めていく.特に,PBN から同側と対側の上丘への軸索投射が空間的に異なることから,影響を及ぼす視覚刺激もしくは視野領域に違いがあると示唆されることから,この点についても検討し,生理学的な機能についても調べていく.また,上丘から PBN へは,興奮性の当社だけでなく,抑制性の投射もあり,さらに小さな PBN の中でもその投射先が異なる可能性が示唆されている.今回の結果をもとに,上丘と PBN の回路特性についても詳しく調べていく予定である.
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