研究課題/領域番号 |
22K06475
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
大野 孝恵 帝京大学, 医学部, 准教授 (60508109)
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研究分担者 |
福田 諭 帝京大学, 医学部, 助教 (50425641)
林 俊宏 帝京大学, 医学部, 教授 (60505890)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 赤核回路網 / 下オリーブ核投射 / 脊髄投射 / 光遺伝学的刺激法 / ホールセル記録 / イムノトキシン / 選択的細胞除去法 / 赤核 / 小細胞系 / 細胞間ネットワーク / 運動学習 / 可塑性 |
研究開始時の研究の概要 |
種によるバリエーションが多彩で、古くから知られていながらその機能が明らかにされていない赤核ネットワークに注目し、大細胞及び小細胞系の両者を活用している齧歯類を実験動物とした。まずは大細胞と小細胞それぞれ単独の機能と、未だ研究されたことのない両者の細胞間ネットワークを明らかにする。また、運動学習に伴う赤核の可塑性について明らかにし、赤核ネットワークを含む運動学習回路について検討する。運動下行路として行動を実装する大細胞系と回帰性ループを形成することにより評価回路として運動学習を動的に行っていると考えられる小細胞系が連絡を取り合うことで、赤核はコンパクトな運動学習回路を形成している可能性を考えた。
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研究実績の概要 |
運動情報網のハブ的な存在である中脳赤核は、細胞構築、核内分布など解剖学的特徴から大細胞と小細胞と呼ばれる2つの細胞に分けられ、前者は赤核脊髄路として脊髄に投射、後者は下オリーブ核に投射したのち回帰性ループを形成して小脳からのフィードバックを受けていると考えられてきた。しかしながら、四肢の進化と共に発達を遂げた赤核大細胞と小細胞は、比較解剖学的に発達度合いの種差が極めて大きく、霊長類に当てはまる上記分類法もすべての種に当てはまるとは限らず、齧歯類もその例外でない。そこで、申請者らは解剖学的サイズや分布ではなくその機能を重視した、投射先による新たな分類(脊髄投射細胞(RS細胞)と下オリーブ投射細胞(RO細胞))を提唱した。 まずは、光遺伝学的刺激法によるホールセル記録法にて電気生理学的に両細胞を比較すると、大脳皮質からのシナプス入力にそれぞれの細胞特性があり、シナプス可塑性にも相違が観察された。また、過去に調べられたことのない赤核内ネットワークでは、RO細胞からRS細胞への直接結合が存在することがわかり、逆方向の入力がないことも確認し得た。 免疫組織学的には、RS細胞とRO細胞がそれぞれ大細胞と小細胞に分かれる訳ではなく、RS細胞にも小型の、RO細胞にも大型の細胞が混在しており、両者共に吻尾側領域にとわず分泌したいたが、双方に投射する細胞は極めて少なかった。RS細胞とRO細胞の興奮性あるいは抑制性シナプスの分布については、過去の文献と照らし合わせながらVGluT2/T1, VGAT, GLyT2抗体等を用いて現在確認中である。上記結果は日本生理学会100周年記念大会にてポスター発表し、多くのご意見をいただくことができ、それらを踏まえた上で、本年度は、福島県立医科大学小林研との共同研究となるイムノトキシンによる選択的細胞除去法を用いての、行動実験をスタートする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍にて元気の良い妊娠マウスの入手が以前に比べ難しくなり、仔ネズミの発育が悪く、生後1日齢での光遺伝物質(チャネルロドプシン)の脳内インジェクションが必要な光遺伝学的刺激によるホイールセル記録が思うように進まなくなったが、注文匹数を増やし搬入時期をずらすなどの努力により、概ね計画通りに進められている。また、投射先である下オリーブ核ならびに脊髄へのインジェクション技術が安定し、各種実験に必要な逆行性アプローチが確実にできるようになり、複数の免疫染色を組み合わせた免疫組織学的実験に加え、光遺伝学的または化学遺伝学的抑制法を用いた系選択的阻害による行動実験も計画通りスタートし得た。行動実験には、シングルペレット把握試験に加え、学習を必要としない歩行運動を加え、3台の高速ビデオカメラを用いた3次元画像解析を用いてDeepLabCutによる行動解析を進めている。ただし、マンパワーの不足により、動物を学習させるステップに時間がかかり、また脳深部へのインジェクションにともなう副作用を伴うこともあり、巧緻運動習得済みマウスの確保に苦労しており、改善策を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
電気生理実験では、昨年度に引き続き、RO細胞とRS細胞の細胞特性を比べるホールセル記録のデータ数を増やしていくと同時に、発達に伴う変化の有無確認するため週齢をふっての実験計画をくみ、更に細胞種によるシナプス可塑性(具体的には長期増強(LTP)の有無)を確認する。また、過去に調べられていない、RO細胞とRS細胞両者に入力のある皮質赤核路起始細胞の皮質内分布パターンを把握するため、逆行性越シナプス性に感染する狂犬病ウイルスの導入を検討している。ただし、狂犬病ウイルス使用に際しては、学内での動物実験許可、大臣承認などの手続きと、研究支援グループによる支援が必要であり、現在各種手続き中である。更に、組織透明化技術を取り入れることにより(研究支援グループとの共同研究の相談済み)、大脳皮質のみならず全脳的に赤核細胞への入力元を知ることができる可能性にも期待している。 行動実験では、今までの急性阻害実験(光遺伝学的ならびに化学遺伝学的抑制操作法)に加え、慢性実験として、イムノトキシンを用いた選択的細胞除去法を、福島県立医科大学小林研との共同研究にて開始する予定である。また、シングルペレット把握試験のトレーニングを自動化する方向で、装置の作製にも取り組んでいる。
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