研究課題/領域番号 |
22K06480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
榎本 一紀 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究員 (10585904)
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研究分担者 |
渡邉 慶 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (00772740)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 社会性 / 霊長類 / 報酬 / 嫌悪 / 意思決定 / 学習 / 大脳基底核 / 大脳辺縁系 / 懲罰 |
研究開始時の研究の概要 |
階層性のある社会構造のもと、行動が相互に影響し合う環境のなかで適切な意思決定をするために必要な神経基盤はいまだ全容が不明である。本研究では社会的関係において適切にふるまうための霊長類に共通する神経回路を明らかにするため、ヒトおよびマカクザルの被験体を用いて同一パラダイムの行動課題を行わせ、行動・生体データ解析および神経活動操作によって学習・行動モデル推定を行い、大脳皮質―皮質下ネットワークの計算機構を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
ヒトを含む多くの霊長類動物は集団で生活し、階層性のある社会を構成している。社会関係のなかでリスクや大きなコストを避けて効率的に利益を獲得するためには、自己と他者との社会的地位などにもとづいて適切にふるまう必要がある。個体行動への他者の影響は、ヒトのみならず類人猿やマカクザルなどにおいても認められていることから、社会的状況における学習や意思決定に関わる脳神経メカニズムは霊長類や他の社会的動物で共通していると考えられる。本研究では社会的状況において適切に行動するための霊長類に共通する神経回路を明らかにするため、ヒトおよびニホンザルを被検体として、行動・生体データ解析および神経活動操作によって計算理論に基づいた学習・行動モデル推定を行い、神経ネットワークの計算機構を解明することを目指す。 今年度は、社会的地位や他者への報酬や嫌悪刺激がどのように意思決定者の行動や神経活動に影響するのかを明らかにするため、複数頭のニホンザルに社会的状況における意思決定課題を学習させ、行動パターンや生体データを解析した。この課題では、2頭の動物が透明なタッチパネルディスプレイを挟んで向かい合わせに座り、相手の顔が見える状況でディプレイに提示した画像刺激に従って行動選択を行う。動物は画像刺激に関連付けられた自己もしくは相手への報酬(ジュース)の量および嫌悪刺激(顔面への空気吹き付け)の強度に従った行動を示し、特に、社会的地位が低い個体は地位の高い個体に対して向社会的な行動を選ぶことが明らかになった。 本研究の成果は、情動や価値に基づく意思決定・行動発現の脳神経メカニズム解明において重要な知見となりうる。依存症や、自閉症・うつ病や不安神経症などの神経疾患の原因解明や治療法の開発に寄与し、また、社会的認知機能にもとづくアルゴリズムを導入した、より効率的なAI開発にも貢献すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3頭のニホンザルを用いた社会的コンテクストにおける行動選択実験を行い、記録した行動データおよび生体データの解析を行った。2頭の動物のインタラクションに基づいて社会的順位を決定し、社会的文脈を導入した行動課題遂行中のデータから、社会的順位や他者への報酬・嫌悪刺激の価値などを含んだ行動モデルを設計、評価した。また、ヒトを対象として経頭蓋集束超音波刺激を行い、刺激前後の行動課題中の脳活動データをfMRIを用いて取得し、解析した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、今後の研究を推進してゆく。ヒトおよびニホンザルを被検体として超音波刺激による神経活動操作実験を行い、刺激前後の行動データと脳活動データから、行動モデルの設計と評価を行う。ニホンザルを用いた実験では、神経回路選択的な情報表現の解明、経路選択的な神経活動操作のための光遺伝学・化学遺伝学的手法を用いた実験、安静時fMRI画像撮影実験の実施についても検討する予定である。
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