研究課題/領域番号 |
22K06486
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
松本 英之 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50511383)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 神経回路 / 電気生理学 / 光遺伝学 / 意欲 / 報酬系 / 学習 / 適応 / 齧歯類 / 神経科学 / 脳機能 / 情報処理 / 神経活動計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、学習と意欲をそれぞれ制御する報酬系神経回路網の情報処理機構を、大規模な神経活動同時計測技術を用いて解析する。さらに、その情報処理に関与する特定の神経回路の、特定の時間の活動に介入することで、学習と意欲に必須の神経回路機構を明らかにする。具体的には、(1)線条体マルチ回路を構成する細胞の活動を大規模に同時計測しながら神経修飾系の入力信号に介入する実験技術の開発、(2)学習と意欲の柔軟な変化を検証する行動課題の開発、(3)本課題中の学習と意欲を制御する報酬系神経回路機構の検証、について検討する。この理解を通して、複雑な生体脳の情報処理の理解を深め、優れた人工的知能の開発の糸口を見出す。
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研究実績の概要 |
前年度の実験結果から、腹側被蓋野から側坐核の亜領域へ向かう解剖学的に異なるドーパミン神経の投射パターンを見出しつつある。そこで本年度は、これらの異なるドーパミンニューロンあるいはその他の神経回路を構成するニューロンが学習や異なる意欲状態が観察される際にどのような信号を投射先へ伝達しているのか検証した。 本研究で用いる行動課題では、報酬価値が高い選択肢を選ぶようになる過程(選択肢の価値の学習)と、報酬価値が高い選択肢を選び続ける過程(意欲維持)がある。そこで、それぞれの過程における学習と意欲のコンポーネントと各ニューロンの応答パターンの対応を調べた。光遺伝学的にドーパミンニューロンの投射先を同定するため、腹側被蓋野へAAVを微量注入し、Cre組換え酵素を特異的に発現させるTH陽性細胞特異的にチャネルロドプシンを発現させる。次に、側坐核を含む複数の投射先に光ファイバーを刺入し、光照射に対する記録細胞の応答を調べた。これらの同定したドーパミンニューロンの報酬予測誤差応答(実際に得られる報酬と予測される報酬の誤差の大きさを表す応答)の変化を調べると、予測誤差学習を通して行動が適応的になる過程において投射先別の違いが見出された。この多様性と意欲の対応を調べると、意欲の種類に応じて、投射先別に差異が観察される場合と、一様で差異が観察されない場合があった。 前年度の実験結果から、投射先が異なるドーパミンニューロンの細胞体の位置は、腹側被蓋野内の、オーバーラップするが異なる部位に分布する傾向にあった。そこで光遺伝学的に同定・計測したドーパミンニューロンを計測された位置に基づいて分類し、より多くのドーパミンニューロンを加えて同様の解析を行うと、これまでと同様の結果を得ることができた。このように、学習と意欲を制御する報酬系神経回路の新規のメカニズムを見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習と意欲を制御するドーパミン神経回路の新規の制御メカニズムを見出しつつあること、また、報酬系脳領域にある、光遺伝学的に同定されたドーパミンニューロン以外の活動についても同様の解析を行い結果を得ており、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新規に見出されつつあるメカニズムの解析を進め、原著論文を投稿する。シリコンプローブの供給制限などがあり大規模神経活動計測技術の確立が予定より少し遅れたため、本年度はこの技術の確立の優先順位を上げる。
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