研究課題/領域番号 |
22K06504
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 道子 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30379888)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | キラルカルバニオン / Brook転位 / 相間移動触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
脱プロトン化によって,シアノ基,スルホニル基,ホスホリル基などのα-アニオン安定化置換基の隣接位にキラルカルバニオンを発生させることは極めて困難である.本研究では,Brook転位を利用することにより,塩基を使用することなくキラルカルバニオンを発生させ,求電子剤で捕捉することによってsp3不斉炭素中心を構築するという汎用性の高い合成方法論の開発を目的とする.
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研究実績の概要 |
本研究は,アシルシランに対しスルフィネート,ホスファイト,アミドなどのα-アニオン安定化求核剤をエナンチオ選択的に付加させた後Brook転位を起こすことにより共役性α-アニオン安定化置換基の隣接位にキラルカルバニオンを発生させ,それを求電子剤で捕捉することによってsp3不斉炭素中心を構築するという方法論の開発を目的としている. これまでに,二相系の溶媒中でキラルな相間移動触媒であるシンコナアルカロイド由来の四級アンモニウム塩存在下アシルシランにシアニドイオンを付加させると,Brook転位後にプロトン化されたO-シリルシアノヒドリン誘導体が中程度のエナンチオ選択性で得られることを明らかにしていた.本反応の成績体であるO-シリルシアノヒドリン誘導体の絶対構造は既知であるものの,Brook転位前駆体であるシリルアルコールは単離することができなかったため,Brook転位および求電子剤との反応における立体過程は不明であった.そこで,別経路によりシリルアルコールの単一のエナンチオマーを合成し,塩基性条件下でO-シリルシアノヒドリン誘導体に変換した後,その絶対構造およびエナンチオ選択性を明らかにすることで,α-シアノカルバニオンが発生するBrook転位の立体過程を明らかにすることができた.また,シアノヒドリン誘導体がエナンチオ選択的に得られたことから,不斉源が系内に存在しなくとも,Brook転位によって生成したキラルα-シアノカルバニオンのプロトン化がエナンチオ選択的に進行することが判明した.さらに基質のシリル基の種類,隣接位の二重結合の有無などにより,中間体および成績体のエナンチオ選択性が大きく変化することも明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで不明であったBrook転位によるα-シアノカルバニオンの発生およびその求電子剤との反応における立体過程を明らかにすることができた.従来α位にシアノ基のような共役性α-アニオン安定化置換基が存在する場合,Brook転位によって生成したカルバニオンは瞬時にラセミ化するため,求電子剤での捕捉自体が不可能と考えられていたため,反応の立体過程に関する報告も存在しなかった.したがって今回の知見はBrook転位の基礎研究という観点からも価値が高いものと考えている.また,それに伴いシリル基の種類,隣接位の二重結合の有無などにより,中間体および成績体のエナンチオ選択性が大きく変化することも明らかになったため,現在シリル基と基質の構造との相関について網羅的に検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
Brook転位によってα-シアノカルバニオン生成する過程の立体化学が明らかになったので,そのエナンチオ選択性に影響を与える因子を明らかにするため,基質のシリル基の種類,隣接位の二重結合の有無,反応条件などを網羅的に検討する.また,計算化学による反応機構の解明も並行して行う. また,スルフィネート,ホスファイト,アミドなどのα-アニオン安定化求核剤の検討および水以外の求電子剤の使用の可能性を検討し,合成反応として確立していく.
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