研究課題/領域番号 |
22K06506
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
嶋田 修之 日本大学, 文理学部, 准教授 (00455601)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 有機ホウ素触媒 / ボロン酸 / 第一級アミド / アンモニア / 脱水縮合 / 糖 / アリル化 / 位置選択性 / 有機ホウ素触媒反応 / ジケトピペラジン / ペプチド / アミド / ジボロン酸無水物 / 触媒反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,新しい触媒的活性化機構に基づく有用分子変換法の開発を志向し,優れた反応性と選択性を兼ね備えたデザイン型有機ホウ素触媒の創成を目的とする。本研究の技術的基盤は,これまでに我々が独自に見出したルイス塩基含有芳香族ボロン酸による4配位ホウ素中間体を経たジオールの触媒的求核活性化法,およびジボロン酸無水物触媒によるヒドロキシカルボン酸の化学選択的求電子活性化法である。本研究の進展により,入手容易な化学原料を高付加価値物質に変換するための新たな分子変換反応の開発が期待され,医薬品をはじめとした機能性分子の創出に貢献できるものと考えられる。
|
研究実績の概要 |
ボロン酸は鈴木-宮浦クロスカップリング反応としてのカップリング試薬の他,さまざまな有機合成反応における金属試薬として広く利用されている。また,近年ではボロン酸構造を有する医薬品のほか,バイオセンサーが開発されている。さらには,共有結合生有機(MOF)の構成単位としても利用可能である。一方で,カルボン酸やアルコールと穏和な条件下反応し,脱水を伴う可逆的な共有結合を形成するボロン酸の化学的性質を触媒として利用する試みも行われている。それらは,主にカルボン酸の求電子活性化とジオール類の求核活性化に大別される。当研究室では,これまでに独自に開発したジボロン酸無水物DBAAはヒドロキシカルボン酸のアミド化反応における高活性な触媒として機能することを明らかにしてきた。また,分子内にイミダゾール環を組込んだボロン酸誘導体が糖質の位置選択的分子変換における高活性な触媒として機能することを見出した。本研究は,こうした独自の知見に基づき,従来実現困難であった分子変換を実現するべく,新たな有機ホウ素触媒反応の開拓を目指すものである。 当研究室ではこれまでに,DBAA触媒によるβ-ヒドロキシカルボン酸を基質とする触媒的ペプチド結合形成反応の開発に成功している。DBAA触媒反応は,従来の有機ホウ素触媒反応では必須であった,厳密な脱水操作を必要としない点にある。前例のない,水溶性のアミンをアミン基質とする脱水縮合アミド化反応が開発できるのではないかと着想した。 また,当研究室ではこれまでに,分子内にルイス塩基を含有した芳香族ボロン酸を触媒として利用した,糖質の位置選択的アシル化反応の開発に成功している。今回,独自に開発したボロン酸を遷移金属錯体触媒が併用できるのであれば,新たな糖質の位置選択的分子変換反応の開発が可能と考え研究に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目となる令和5年度は,独自に開発したジボロン酸無水物DBAAを触媒に用いた第一級アミドの触媒的合成法の開発に成功した。本触媒反応では,アミン基質として,取り扱い容易で安価なアンモニア水溶液を用いることが可能であった。本結果は,カルボン酸からの触媒的脱水縮合反応により,第一級アミドを合成することに成功した初めての例である。また,触媒的脱水縮合アミド化反応にアミン水溶液を用いることに成功した初の例でもある。得られた第一級アミドから様々な生理活性物質への誘導を行い,開発した反応の有用性を実証することができた。 また,糖質関連の研究では,ボロン酸触媒と0価パラジウム錯体触媒が併用可能であることを見出し,糖質の位置選択的アリル化反応を開発することに成功した。本反応では,ボロン酸により糖質ヒドロキシ基の求核活性化が起こるとともに,パラジウム錯体触媒によりπ-アリルパラジウム中間体が生成することで,高位置選択的かつ高収率で所望とするO-アリル化体が得られる。合成した生成物から全てのヒドロキシ基にオルソゴナルな保護基を有数する有用糖質アクセプターへの誘導を行い,開発した反応の有用性を実証することができた。 以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は計画通りに推移していることから、令和6年度も引き続き、研究実施計画に従い,研究を推進する。当研究室のこれまでの知見により,独自に開発したジボロン酸無水物DBAAが,前例のないアンモニア水溶液を用いた脱水縮合アミド化反応における高活性な触媒として機能することを見出している。今後,本知見を踏まえ,様々なアミン水溶液をアミン基質として用いた触媒的脱水縮合反応の開発を目指す。 自然界には,フラボノール配糖体の糖質部位の一部のみがO-アシル化された天然物が豊富に存在している。こうした天然物は,創薬リード化合物として有望ではあるものの,そうした天然物の化学合成法が確立されていないため,構造活性創刊を基盤とした創薬研究は実施されていない。今後,当研究室で開発した,糖質の位置選択的アシル化反応を基盤として,特徴的な化学構造有するフラボノール配糖体の網羅的全合成を実施する。
|