研究課題/領域番号 |
22K06511
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
廣谷 功 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (70192721)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ケタール / ジアステレオ選択性 / 分子内反応 / 有機合成化学 / アルカロイド / α位四置換グルタミン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
1,3-シクロへキサンジオンの C2 位側鎖上の水酸基によるジアステレオ選択的ケタール化反応を検討し,任意の絶対配置を有する不斉第四級炭素構築法を確立できた.しかし,五員環は六員環とは異なる挙動を示すことが明らかになっており,選択性が制御される理由と選択性の向上を目指すことを第一の目的とした.さらに,本反応をベンジル位に不斉炭素を有する化合物の合成に適用可能かどうかを検討し,本法を生物活性アルカロイド不斉合成へ応用することを検討する.また,α位に他のアミノ酸の置換基を有するハイブリッド型四置換グルタミン酸誘導体の合成も検討し,ジアステレオ選択的ケタール化法と生成する化合物の有用性を実証する.
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研究実績の概要 |
(1) 2,2-二置換-1,3-シクロヘキサンジオン誘導体のジアステレオ選択的ケタール化反応による特異な生物活性を有するアルカロイド類の不斉合成研究 ジアステレオ選択的分子内ケタール化反応による不斉第四級炭素構築法を抗ウィルス作用や抗マラリア作用のような生物活性をもつ (+)-mesembrane および (-)-amabiline のような多環性アルカロイド類の不斉合成に適用とした. まず,(+)-mesembrane の不斉合成の検討を行った.4-iodo-1,2-dimethoxybenzene と 1,3-cyclohexanedione を CuI 存在下にカップリングし,さらに C2 位に Pd(PPh3)4 を触媒として 4-methoxycarbonyl cinnamyl 単位を導入した.さらに,AD-mix-a を用いる反応,引き続く分子内ケタール化反応では,89%e.e. の光学純度,99% 以上のジアステレオ選択性で生成物を得ることに成功した.続いて,カルボニル基をトシルヒドラゾンに変換し,NaH を用いる Shapiro オレフィン化反応によりアルケンに変換した.現在までのところ,(1) ケタールの部分加水分解,(2) ヘミケタールと平衡関係にあるジオールの酸化的開裂,(3) 二重還元的アミノ化反応により,(+)-mesembrane の基本骨格の合成に成功した.今後,N-メチル化とアルケンの還元により不斉全合成を達成する予定である. (2) 2,2-二置換シクロペンタンジオン誘導体のジアステレオ選択的ケタール化反応 2位にアルキル基と不斉炭素を有する側鎖をもつ1,3-シクロペンタンジオン誘導体についても検討を開始し,高いジアステレオ選択性で分子内ケタール化反応が進行することを確かめた.一般性の有無や合成科学的な応用について検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は,コロナ禍の影響により,研究の円滑な進行が妨げられたことがやや遅れていることの主な原因である. (-)-amabiline の合成に関する研究遂行にあたっては,原料として 1,3-benzodioxole を用いて (+)-mesembrane 合成と同様の合成経路で検討を行ってきた.しかし,合成途中の化合物の性質は,(+)-mesembrane の合成の際に合成した化合物とは大きく異なっており,特に有機溶媒への溶解性が著しく減少していることが明らかとなり,この予想しなかった事態が,反応の再現性に大きく影響を与え,原因解明のために多くの時間を割くことになった.現在,不斉ジヒドロキシル化反応の最適反応条件を検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
より単純な構造をもつ (+)-mesembrane の不斉全合成は,もうすぐ完成予定である.同様な合成経路により, (+)-mesembrane より複雑な構造をもつ (-)-amabiline の合成研究にも着手しているが,わずかな構造の違いにより,化合物の有機溶媒への溶解度が著しく変化し,化合物の取り扱いが,予想以上に困難であった. 最も重要な段階である不斉ジヒドロキシル化反応も反応速度,時間,および化学収率の再現性が極めて低く,その原因がこれまでの研究により最適化した溶媒への溶解性が異なるためであることが理由であることが分かった.今後は,用いる溶媒系を検討しながら合成を進める予定である. 一方,1,3-シクロペンタンジオン誘導体を用いる検討は概ね良好な結果を得ることができており,今後は反応の一般性の確認と合成化学的応用について検討を行う予定である.
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