研究課題/領域番号 |
22K06520
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
荒井 秀 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (20285224)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 合成化学 / 環化付加反応 / 含窒素複素環化合物 / 立体選択的合成 / アルカロイド / 含窒素複素環 |
研究開始時の研究の概要 |
複雑構造を持つアルカロイドはユニークな生物活性を有する場合が多く、創薬研究を展開する上で鋳型となる重要な分子群である。化学合成が困難かつ生物活性の詳細が不明な創薬未踏アルカロイド郡は一般に供給量に限界があり、創薬展開が全く進んでいないものが多い。筆者は、独自の化学合成法を考案して複雑骨格と官能基導入を同時実現する新しい環化付加反応を考案し、活性発現に必要な最小ユニット複素環構造を柔軟に合成しうる汎用性の高い化学合成法の確立を目指し、プロテオミクスによる活性評価とライブラリー構築に参画することで創薬展開を推進する。。
|
研究実績の概要 |
核酸医薬・抗体医薬の開発が主流となりつつある昨今の医薬開発において、 コスト面で優位な低分子化合物も依然として重要な創薬シーズである。特にアルカロイドの構造多様性は魅力的であり、それらを模倣した複雑骨格の自在合成・安定供給は創薬研究推進における不可欠な技術とな る。 申請者は、創薬ターゲットとして手つかずの複雑アルカロイドに頻出する高度に官能基化されたインドリン骨格に着眼し、独自技術による効率構築法を確立すべく研究を遂行している。 高度に酸化されたイサトゲンは、多様な炭素ユニットを様々な手法で導入できる汎用性の高いインドリン前駆体であり、その変換反応の開発が精力的に展開されてきた。筆者らはホウ素触媒によるC2へのシアノ基導入を見出し、熱的な[3+2]環化付加ではビニルエーテル、ビニルスルフィド、ビニルイミドやベンザインが円滑に反応し、対応する環化付加体が単一位置異性体で得られることを見出した。またDFT計算によって選択性発現機構を明らかにし、海洋アルカロイド ハリクロムA(抗悪性黒色腫活性)の全合成にも成功した。 一方、イサトゲン3位カルボニルを3級水酸基に変換したイサトゲノールのユニークな反応性も明らかにした。この分子は、容易に調製できるものの化学変換への展開例は皆無に等しく未開拓分子である。イサトゲノールの特徴・性質・有用性を明らかにできれば、複素環合成における新しいビルディングブロックとして期待される。アクリル酸エステルとの環化付加反応では水酸基ーカルボニル間の水素結合が1および立体化学制御における鍵となり、最大8種の生成物が想定される系でも単一成績体を与えた。速度論支配で反応は進行し、最大で4つの連続立体中心が容易かつ精密に構築できることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の反応点を有する有機分子を用いる分子間反応で単一成績体を得るためには、立体・位置選択性を高度に制御する手法の開発が不可欠である。筆者はイサトゲノールの3級水酸基の着眼し、分子間水素結合を駆使する複素環合成に成功した。また、DFT計算によって選択性発現の主要因を解明した。 イサトゲンやイサトゲノールを用いる熱的[3+2]環化付加反応を網羅的に調査し、アルケン、共役エンイン、不飽和エステル、アレン、ビニルエーテル、ビニルスルフィド、ビニルイミド、ベンザインなど多様な炭素炭素多重結合ユニットが反応基質として利用可能であることを明らかにした。本手法では、代表的な複雑アルカロイドであるコプシアアルカロイドの4環性部分構造の合成にも応用でき、高度に縮環した複素環多環システムの構築に有用であることを示した。また、確立した複素環合成法を応用して、海洋アルカロイドであるハレナクロムAの全合成にも成功した。 選択性発現の根拠を明らかにすることで、生成物の構造予測が容易になる。筆者らはDFT計算を駆使することでイサトゲンとアルキンの熱的[3+2]環化付加反応で発現する位置選択性が合理的に説明できることを明らかにした。これらの知見は、イサトゲンおよびその誘導体を用いる既存の合成反応には見られない反応挙動であり、複素環合成におけるイサトゲンの有用性を明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
シリルイサトゲンを設計・合成してその反応性を探る。既存のイサトゲン合成法ではC2に導入できる置換基が限定されており、イサトゲン合成化学が進展する上で深刻な障害となっている。そのために、様々な置換基に変換可能な汎用性の高い官能基をあらかじめ導入した新規イサトゲンを合成し、その特徴を検証することで、イサトゲン化学の新展開を着想した。 筆者らはC2位にケイ素官能基を導入したイサトゲンに着眼し、求核付加ー[1.3]Brook転位を組み合わせた新手法開発に取り組んでいる。本手法ではイサトゲンC2の極性転換が鍵であり、C2への求核剤の付加に次ぐシリル基の[1.3]転位によって、同一炭素をカチオン、アニオンとしての性質を付与して求核剤・求電子剤を逐次導入し、新規な4級炭素構築法を確立する。反応材の組み合わせのよって構築できる4置換炭素の多様性は飛躍的に高まり、アルカロイド合成や触媒的不斉合成に展開する。 ハレナクロムA(抗悪性黒色腫活性)の誘導体合成や複雑縮環インドリン合成を機軸とした誘導体合成を通して、 本学で推進している化合物ライブラリープロジェクトにおける系統的な生物活性位評価を行う。
|