研究課題/領域番号 |
22K06521
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 北海道大学 (2023) 東京大学 (2022) |
研究代表者 |
長友 優典 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70634161)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 全合成 / 天然有機化合物 / 中分子 / チグリアンジテルペン / ラジカル反応 / ホルボール / HIV / shock and kill / テルペノイド / ダフナンジテルペン |
研究開始時の研究の概要 |
分子量500-4,000の中分子天然物が低分子・抗体医薬の優位点を併せ持つポストバイオ医薬として注目を集めている。しかし、それらを医薬品開発のリード化合物として活用する事は、その化学構造の複雑さから極めて困難な課題である。 この社会的要請の高い問題の解決に向け、高酸化度中分子テルペノイドの実用的かつ網羅的な全合成を可能とする発散的合成戦略の確立を目指す。 具体的には、特異な化学構造と顕著かつ広範な生物活性を有するダフナンジテルペン:グニジマクリン、マプロウネアシンおよびトリゴノステンペンAの天然・人工類縁体合成、ライブラリー創出を視野に入れた、汎用性の高い全合成経路を確立する。
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研究実績の概要 |
チグリアンジテルペンはトウダイグサ科およびジンチョウゲ科の植物から単離される天然物である。この天然物群に属する化合物は、高度に縮環した5/7/6/3員環からなる複雑な炭素骨格上に多数の酸素官能基を有している。化合物毎に酸化様式およびアシル化様式が異なっており、これがチグリアンジテルペン類に多様な生物活性をもたらす。特にHIV潜伏感染細胞を再活性化する能力は、今なお世界規模で蔓延しているHIV感染症の根治に向けた新規治療戦略の根幹をなすものとして注目を集めている。今日実用化されている抗HIV薬は高い抗ウイルス活性を示すが、潜伏期HIVを排除できないため、HIV感染者は生涯にわたって薬剤を服用する必要がある。したがって、HIV潜伏感染細胞を再活性化剤で活性化させたのち排除する「Shock and kill」アプローチは、HIVを体内から完全に排除できる可能性を持っている。また、複雑な三次元構造を有するチグリアンジテルペン類を有機合成化学によって網羅的に合成することは、有機合成化学上、極めて挑戦的な課題であるとともに、天然物を基盤とした未踏創薬領域の開拓に大きく貢献する。 我々は、チグリアンジテルペンであるホルボールの全合成を達成した。続いて、ヒドロキシ基の反応性の違いを利用したアシル化、一重項酸素を用いた位置・立体選択的な酸化、基質の三次元構造の精密な制御によるエポキシ化を組み合わせることで、ホルボールから11種類のチグリアンジテルペンの世界初となる網羅的全合成を実現した。さらに、共同研究により、全合成した12種類のチグリアンジテルペンのうち7種類が強力なHIV潜伏感染細胞の再活性化能を示すことを見出した。 本全合成法は有機合成化学の発展に寄与し、多種多様な誘導体の合成が可能となるため「Shock and kill」アプローチを一層推進させる創薬シード化合物の創出が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、既知の三環性中間体に対する酸素官能基導入と三員環形成反応によりホルボールの全合成を達成した。また、官能基直交性の優れた反応剤と基質の三次元構造の精密な制御の組み合わせにより、アシル化様式および酸化様式の異なる11種類のチグリアンジテルペンの全合成を達成した。チグリアンジテルペンの網羅的全合成は包括的なHIV潜伏感染細胞の再活性化試験を可能とし、顕著な活性を示す7種類の天然物を見出した。本研究で確立した全合成法は、チグリアンジテルペンを基盤とした多種多様な誘導体の合成を可能とし、HIV感染症の根治戦略の一つである「Shock and kill」アプローチを強力に推進することが期待されるから。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、レジニフェラトキシンの全合成で活用したラジカル合成戦略を最大限応用し、マクロ環を有する極めて高酸化度なダフナンジテルペンであるグニジマクリンの全合成研究を強力に推進する。 また、合成中間体をを含めた、化合物の生物活性試験を共同研究先とともに実施し、中分子創薬シード・リードとしての活用を目指す。
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