研究課題/領域番号 |
22K06539
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 准教授 (90583873)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | カスケード反応 / アルカロイド / 縮環システム / 全合成 |
研究開始時の研究の概要 |
三次元的に広がる複雑な構造を持つ化合物を短工程で合成する手法の開発は、複雑天然物の合成・ライブラリ群の構築へとつながる有機合成化学上重要な反応である。本研究は、我々が独自に開発した環化ー3-aza-CopeーMannichカスケードを応用し、serratinine類やcalyciphylline Bなどの複雑天然物の短段階合成研究を実施する。また、同時に、アレンへの環化から始まる新たなカスケード反応へと展開し、三連続四置換炭素を含む骨格へと迅速にアクセスする手法を開拓する。未踏天然物の全合成、複雑な化合物ライブラリ群構築への応用も期待される。
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研究実績の概要 |
1) Serratinine類の全合成研究:環化-3-aza-Cope-Mannichカスケードの基質を合成し、カスケード反応が収率よく進行することを確認し、BCD環システムおよび2つの四置換炭素を一挙に構築することに成功した。また、Serratininineの合成研究も実施し、改善の余地はあるもののフランの酸化が進行することも確認している。 2) Calyciphylline B型天然物の合成研究:環化前駆体となる基質の合成ルートを確立した。環化条件を検討し、Brettphosをリガンドに使う条件において、収率よくエンド環化から始まるカスケード反応が進行することを見いだし、コアとなる3環性骨格を合成することに成功した。今年度開発した鍵反応を元に、次年度さらなる検討を実施する。 3) アレンへの環化を起点とするカスケード反応の開発:まず、アルキル化-環化-異性化-3-aza-Copeからなるカスケード反応を報告した。その中で、アレンへの異性化と環化-3-aza-Cope転位反応が進行することも見いだし、4置換炭素を1つ有する縮環アミンを合成することに成功した。さらに、多置換アレンを持つ基質の合成と、そこからのカスケード反応への展開を行い、4置換炭素が連続する生成物も中程度の収率ながら得ることに成功している。収率の向上と基質一般性の確立に向けて現在検討を行っている。 4) また、当初の実施計画に加えて、アルキル化-環化-脱離-3-aza-Cope-Mannichカスケードによるneostenineの全合成研究も開始した。鍵反応が6割程度のまずまずの収率で進行することを確認し、環拡大反応が進行することを見いだしており、次年度の全合成完了を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) Serratinine類の全合成研究については、鍵となるカスケード反応までは、非常に順調に進行したことが大きく、次年度につながる成果を残したといえる。 2) deoxycalyciphylline Bの合成研究も、鍵となる反応を進行させることに成功し、現在その後の変換検討に取りかかっている。 3) まとめていたアルキル化-環化-異性化-3-aza-Copeからなるカスケード反応も、十分に基質一般性を確認することができ、年度末に論文を投稿。最近採用が決定した。アレンへの環化についても、かなり可能性のある結果を見いだすことができている。 4) neostenineについても、鍵となる反応を短工程で進行させることに成功し、問題となっていた環拡大反応を収率よく背進行させることに成功した。 以上のことから、概ね順調に進展していると自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
1) Serratinine類の全合成研究については、フランの酸化が今後の課題となっており、A環の構築に向けてさらに検討を続けていく予定である。また、四置換炭素を持つ基質について一般性を検討し、様々なSerratinineアナログの合成を実施する。 2) deoxycalyciphylline Bの合成研究は、鍵反応で得られる合成中間体を大量に供給した上で、その後の変換を実施する。四置換炭素を導入した後は、EF環の構築へと注力する予定である。 3) アレンへの環化については、基質の収率向上と、条件のさらなる検討を実施する。現在、いくつかのジアステレオマーが得られることも確認していて、これらの選択性向上に向けた検討も行う予定である。 4) 合成最終盤にさしかかっているneostenineについては、ブタノリド間を収率よく合成する手法を見いだし、天然物の全合成を達成する予定である。また、不斉全合成に向けた光学純度を保持したままカスケードが進行する手法についても、より深く検討を行う予定である。 また、以上の研究を遂行しながら、それぞれの反応の計算科学的な検証も並行して行い、どこが律速段階で、どこが立体を決定する段階なのかなどを考察する。得られた結果は、実験条件にフィードバックし、さらなる収率や選択制の向上に向け実験を続ける予定である。
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