研究課題/領域番号 |
22K06556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
斎藤 博幸 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (60300919)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 薬学 / 生物物理化学 / タンパク質 / 抗体 / アミロイドーシス / アミロイド / 蛋白質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、全身性アミロイドーシスの前駆タンパク質としてアポA-Iや血清アミロイドA、さらには神経変性疾患タンパク質としてパーキンソン病αシヌクレインなどをターゲットとし、これら前駆タンパク質の生体夾雑環境における凝集・線維化、細胞間伝播が、細胞膜脂質や硫酸化糖鎖、アミロイド共存タンパク質であるアポA-IVやアポEなどの生体分子群との相互作用ネットワークによって制御されている分子メカニズムを解明する。さらに、アミロイド前駆タンパク質や共存分子を標的とした新規特異抗体の開発を行い、アミロイド線維高感度検出系の構築やin vivoイメージング法の検討を進める。
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研究実績の概要 |
全身性アミロイドーシスアポA-Iやパーキンソン病αシヌクレインなどのアミロイド前駆タンパク質の生体夾雑環境における凝集・線維化、細胞間伝播が、細胞膜脂質や硫酸化糖鎖、アミロイド共存タンパク質であるアポA-IVやアポEなどの生体分子群との相互作用ネットワークによって制御されている分子メカニズムを解明する。さらに、アミロイド前駆タンパク質や共存分子を標的とした新規特異抗体の開発を行い、アミロイド線維高感度検出系の構築やin vivoイメージング法の検討を進める。 令和5年度は、アミロイドーシス変異アポA-Iとαシヌクレインの凝集・アミロイド線維化メカニズムに関する検討を進めた。アミロイドーシス変異アポA-Iに関しては、アミロイド沈着領域であるN末側1-83残基フラグメント中でのΔ60-71/VerThe insertion、Δ70-72、F71Yの3つの変異に着目して検討したところ、Δ60-71/VerThe insertion変異がアポA-Iのアミロイド線維化を著しく促進し、その原因が新たに形成された高凝集性領域による線維核形成エントロピー障壁の消失であることが明らかとなった。一方、αシヌクレインに関しては、ヒトとマウスでのアミノ酸配列の同一性に着目して検討を進め、ヒトαシヌクレイン中のnon-amyloid β(NAC)領域に存在するSer87残基が、N末-C末間分子内相互作用を介してアミロイド凝集性を制御していることを明らかにした。 アミロイド共存タンパク質を標的とした新規特異抗体の開発に関しては、アポE4アイソフォームに特異的なアミノ酸配列を認識する抗アポE4特異的モノクローナル抗体を新たに開発した。さらに、他の抗アポEアイソフォームモノクローナル抗体と組み合わせることで、アポEアイソフォームを高感度で識別・検出可能なSandwich ELISA系の構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は近年、アミロイドーシス変異アポA-Iの凝集・線維化反応における2ケ所の高凝集性領域(14-22及び53-58残基)の役割を明らかにしてきた(JBC 294, 13515, 2019)。本研究では、3番目の高凝集性領域である67-72残基付近に位置する3つのアミロイドーシス変異Δ60-71/VerThe insertion、Δ70-72、F71Yに着目して速度論的並びに熱力学的な解析を進め、Δ60-71/VerThe insertion変異が新たな高凝集性領域を形成することで線維核形成をエントロピー的に促進していることを明らかにした(Sci. Rep. 13, 18514, 2023)。一方、パーキンソン病αシヌクレインでは、N末-C末間分子内相互作用によるαシヌクレインの凝集制御機構におけるSer87残基の関与を世界で初めて明らかにすることができた(Sci. Rep. 13, 10885, 2023)。アミロイド前駆タンパク質の凝集・線維化過程におけるタンパク質分子間並びに分子内相互作用の重要性を、速度論並びに熱力学的な観点から明らかにした重要な知見であると考える。 また、アミロイド共存タンパク質を標的とした新規特異抗体の開発に関して、アポE4アイソフォームに特異的なアミノ酸配列を認識する抗アポE4特異的モノクローナル抗体を新たに開発し、アポEアイソフォームを高感度で識別・検出可能なSandwich ELISA系の構築に成功した(FEBS Lett. in press.)。 以上のように、研究成果を3報の論文に公表するなど、当初の研究計画に対しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和6年度は、この2年間であまり進展のなかったアミロイド共存タンパク質アポEによるアミロイド沈着促進/抑制メカニズムの解明を目的として、アポA-Iやαシヌクレインなどのアミロイドタンパク質の線維形成過程や動的構造安定性、脂質や糖鎖との相互作用におけるアポEのcofactorとしての関与を明らかにする予定である。その際、野生型であるアポE3に加え、アルツハイマー病発症危険因子であるアポE4アイソフォームや、最近相次いで報告されたアルツハイマー病発症に対してprotectiveなアポE3変異体などの影響も検討する。さらに、細胞表面糖鎖を足場としたアミロイドタンパク質の凝集・線維化、細胞内取込み・代謝過程におけるアポEの関与を明らかにすることで、生体内夾雑環境下でのアポリポタンパク質アミロイド形成の分子機構解明に迫りたい。
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