研究課題/領域番号 |
22K06560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
冨永 昌人 佐賀大学, 理工学部, 教授 (70264207)
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研究分担者 |
三重 安弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00415746)
山本 雅博 甲南大学, 理工学部, 教授 (60182648)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | NADH / レドックス / 電極界面 / 過電圧 / 二量体 / 水素付加反応 / ラジカル中間体 / ナノ構造 / NAD+/NADH / 酸化還元補酵素 / ナノレベル構造 |
研究開始時の研究の概要 |
ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド(酸化体: NAD+;還元体: NADH)は、生体内で極めて重要なレドックス補酵素の一つである。医療診断用試薬の酵素反応として不可欠な生体分子であり、その反応は十分に解析がなされてきたが、それは溶液中での均一反応に限定されていた。この反応を電極上で可能にすることで、医療診断が格段に円滑かつ低コストで実現できる。しかし、電極上でのその反応は極めて困難で未だ進展していない。本研究では、新規観点からナノレベル構造界面をもつ新規電極を開発して、NAD+/NADHの円滑な電極反応の実現し医療診断分野に大きく貢献できることを目指す。
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研究実績の概要 |
ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド(酸化体: NAD+;還元体: NADH)は、生体内で極めて重要なレドックス補酵素の一つである。医療診断用試薬の酵素反応として不可欠な生体分子のため、均一溶液中のNAD+/NADHレドックス反応はこれまで十分に解明が進んできた。一方で電極の固/液界面におけるNAD+/NADHのレドックス反応は、これまでの多大な努力にも関わらず、未だ「反応過電圧」と「二量体形成」の電極界面の非効率な反応要素の本質的解明すら全く進展していない。本研究では、固/液界面でのNAD+/NADHレドックス反応において、これまで全く着目されてこなかった「立体特性を伴った水素移動反応」の視点から電極界面反応を解析し、固/液界面レドックス反応の「反応過電圧」の要因の本質的な解明に迫る。またその知見により、準化逆なNAD+/NADHのレドックス反応を得ることができる新規電極の創成を目的としている。 NADHの酸化反応は、2電子1プロトン反応である。反応完結には、1電子酸化後のラジカル中間体から2電子目の酸化反応までの活性化エネルギーが十分に小さい必要がある。この活性化エネルギーと水素付加反応との関係が、NAD+/NADH電極反応の重要なカギを握っているのではないかとの仮説に基づいて、ニコチンアミドと電極上ナノ構造部位との間での「円滑な水素移動反応」を達成できるナノレベル3D構造界面の設計によって、準化逆なNAD+/NADHのレドックス反応を得ることができる新規電極の創成を目指す。一方で、中間ラジカル体同士の二量体形成反応の抑制はそれとは別問題である。極めて反応が速いラジカル中間体同士の二量体形成反応を、適度な界面移動度をもった自発的凝集分散系自己組織化分子を用いることでラジカル中間体同士の接近を抑制して二量体化も抑制する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、NAD+/NADHの電極反応の過電圧は「立体特性を伴った水素移動反応」が円滑に進まないためとの仮説にも基づいて、ナノレベルで制御された3D構造界面でのNAD+/NADHの電極反応を検討した。 ニコチンアミドと電極上ナノ構造部位との間での「円滑な水素移動反応」をナノレベル3D構造界面を創成するために、ポリ-L-リジンで修飾した酸化インジウム電極(PLL-酸化インジウム電極)により、NAD+の還元反応を解析した。PLLはポリカチオン高分子であるが、PLLのプラスチャージとNAD+分子が有するリン酸2分子との相互作用を介した反応時の立体特性の発現を期待した。解析の結果、NAD+/NADHの本来の酸化還元電位である-0.4 V (vs.Ag|AgCl)付近からNAD+の還元反応が始まる様子を観測することができた。しかしながら、本還元反応の再現性が低く、用いる電極によってその反応特性に大きな違いがあった。また、PLLの分子量にもそれは大きく依存した。これは、PLLの修飾量がその反応に大きく影響を及ぼしていると考えた。さらに、用いる測定溶液によってもその反応は影響を受けた。例えば、生体分子でよく用いられるリン酸緩衝溶液を用いた測定では、その反応は全く観測できなかった。 上記の知見をベースとして、さらにナノレベル3D構造界面を創成するために、酸化インジウムナノ粒子(直径20 nm)と白金ナノ粒子(直径2 nm)からなるハイブリッド電極をベースとしたPLL修飾電極を用いて解析した。その結果、NAD+の還元反応を以前よりも再現性高く観測することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ナノレベル3D構造界面を創成するために、酸化インジウムナノ粒子と白金ナノ粒子からなるハイブリッド電極が有用であることが本年度示されたため、今後はハイブリッド電極を用いた解析を進める予定である。具体的には、下記の検討を行う予定である。1)酸化インジウムナノ粒子と白金ナノ粒子との混合比を変えた電極での解析、2)酸化インジウムナノ粒子と他の金属ナノ粒子とのハイブリッド電極での解析、3)PLL以外のポリペプチドで修飾したハイブリッド電極の解析、4)電極上でNAD+還元によって生成したNADHの酵素活性を解析する。 酸化インジウムナノ粒子修飾電極にはポリペプチドが容易にかつ安定的に吸着する。その一方で、ポリペプチド分子はその界面上で揺らいでいると思われる。これは適度な界面移動度をもった自発的凝集分散系自己組織化分子として機能することが期待され、NAD+/NADHの酸化還元反応における中間ラジカル体同士の二量体形成反応を抑制することが期待できる。そこで、電極界面上でのポリペプチド分子の揺らぎを酸化還元錯体等を用いて解析する予定である。
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