研究課題/領域番号 |
22K06570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
奥田 健介 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00311796)
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研究分担者 |
高木 晃 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (00758980)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 亜鉛 / プローブ / シグナル増幅 / MRI / 代謝 / 動態 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では種々の疾患との関連性が指摘されている遊離亜鉛の動態・代謝機構の解明を目指し、in vivoイメージングを可能にするべく亜鉛応答性MRIプローブの合成を行う。この際にシグナル増幅機構をプローブ分子に組み込んで感度の向上を図る。続いて創製したMRIプローブを用いて生物試料および培養細胞系での評価を行った上で、in vivoイメージングで顧みられることのなかった低濃度での遊離亜鉛の挙動および機能を解明する。
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研究実績の概要 |
近年、遊離亜鉛がシグナル伝達経路のメディエーターとして機能することが提唱されており、亜鉛ホメオスタシスの崩壊とアルツハイマー病、糖尿病、がんなどの多様な疾患との関連性も明らかとなってきている。これらの研究とも相まって、蛍光法に代表される光イメージングによる遊離亜鉛を可視化するイメージングプローブが多数開発されてきた。しかし光では組織透過性に限界があるため、非侵襲的な亜鉛のin vivoイメージング技術が遊離亜鉛のホメオスタシスと病態との関連性の更なる解明のために望まれている。 この観点から、すぐれた生体透過性を備えたモダリティとして知られる磁気共鳴イメージング(MRI)に着目し、生体内での高い特異性を利用するべく、MRシグナル原子としてフッ素(19F)を利用することとした。MRIの感度は蛍光プローブと比較して数桁も劣るため、MRIの感度を向上させる設計をプローブデザインに導入することにより、従来の亜鉛MRIプローブでは観察することが不可能な低濃度の遊離亜鉛を非侵襲的に観測することが可能となる。そこで、感度を向上させるシグナル増幅機構としては、私たちが高感度亜鉛蛍光プローブの開発の際に活用した亜鉛選択的なβ-ラクタム環の加水分解反応を活用した。1年目となる前年度においては、第一世代の亜鉛MRIプローブの設計・合成を行い、19F-NMRによる評価を行ったところ、期待通りに亜鉛が触媒回転してシグナルを増幅していること、さらには細胞内環境を模倣した還元的環境においても多少の阻害は見られるものの亜鉛によるMRI検出が可能であることが明らかとなった。2年目となる本年度においては、二価金属イオン間での亜鉛選択性を評価したところ、細胞内環境を模倣した還元的環境においては本プローブに亜鉛選択性がみられることを明らかにした。以上、第一世代の亜鉛MRIプローブによって19F-MRIでの選択的な亜鉛の検出が可能であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、第一世代の亜鉛MRIプローブとして、ACLE(7-amino-3-chloromethyl-3-cephem-4-carboxylic acid p-methoxybenzyl ester)塩酸塩、bis(pyridin-2-ylmethyl)glycine、ならびに2,6-difluorophenolより調製可能なDpa-SoxLdiFの設計・合成を行った。続いて19F-NMRでの評価により、1) Dpa-SoxLdiFが期待通りに触媒量の亜鉛と完全に反応して2,6-difluorophenolを放出し、この反応は19F-MRIにて十分追跡可能であること、2) 細胞内環境を模倣したグルタチオン存在下での還元的環境においても多少の阻害はみられるものの、亜鉛によるDpa-SoxLdiFからの2,6-difluorophenolの放出は進行すること、3) 種々の二価金属イオン(Mg, Ca, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Cd)との比較を行ったところ亜鉛以外(Co, Cu, Cd)にも応答性が確認されたが、生体内でこれら金属は亜鉛に比べて微量であるため他金属イオンでのプローブの応答による干渉は弱いものであること、さらには、より細胞内環境に近いグルタチオン存在下ではこれら亜鉛以外の二価金属イオンによる応答性は減弱した一方、亜鉛は比較的グルタチオンによる影響を受けにくくDpa-SoxLdiFとの選択的応答性が見られること、等を明らかにした。以上、細胞内遊離亜鉛のMRI検出にむけて期待が持てる結果が得られたことより、19F-MRIでの亜鉛検出を目指した基礎的な検討を行うこととしたが、MRI測定を予定していた大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの共同研究者が退職し、欠員補充が行われない中で測定自体を行うことができない状態となった。他の研究者にも問い合わせを行ったものの装置の性能が大阪大の当該機器と比べて大きく下がることもあり、現状MRI評価は進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
プローブとしての性能の向上を図るべく、亜鉛認識部位であるDpa部位の変換を行うことによって、亜鉛への親和性を調節するとともに亜鉛錯体上の配位水の求核性を向上させて2,6-difluorophenolの放出を加速させる設計を施す。この際に、Dpa-SoxLdiFとは異なりセフェム骨格を持たない単純化した発蛍光性のモデル化合物を利用して合成・評価の迅速化を図る。さらに、脱離能の変化によるプローブの応答速度の向上を目指して脱離基部位でのエーテルからチオエーテルへの変換も試みる。なお、以上の検討によってDpa-SoxLdiFを最適化したプローブは4位カルボキシ基に由来する水溶性のために細胞膜透過性をもたないことが予想される。そこで、このカルボキシ基を変換して細胞膜透過性を付与した上で細胞内遊離亜鉛のMRイメージングを目指す。 並行して、抜本的な19F-MRIプローブの感度向上を目指して等価な19F核を1,000万個のオーダーで1粒子中に有するperfluorocarbon封入コアシェル型ナノ粒子を活用するべく、ガドリニウム錯体とナノ粒子との間の共有結合が亜鉛との反応により開裂してガドリニウムによる常磁性緩和促進効果が解消され、19F-MRシグナルがoffからonへと変化するように設計・合成したプローブへの展開も試みる。
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