研究課題/領域番号 |
22K06572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
山川 直樹 就実大学, 薬学部, 教授 (20583040)
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研究分担者 |
田坂 祐一 就実大学, 薬学部, 准教授 (00574758)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 酸化ストレス / 抗炎症 / Nrf2 / 非ステロイド系抗炎症薬 / 核因子赤血球系2-関連因子2 / ヘムオキシゲナーゼ-1 / 抗炎症薬 |
研究開始時の研究の概要 |
核因子赤血球系2-関連因子2(Nrf2)は、酸化ストレスにより活性化される転写因子であり、炎症増悪因子に関わる遺伝子発現の抑制や、生体防御に関与する遺伝子群の転写を促進することが知られている。これまでに研究代表者らは、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に分類される医薬品の中から、Nrf2の活性化に依存して発現するヘムオキシゲナーゼ(HO)-1を誘導する化合物を発見した。本研究では、NSAIDsによるNrf2の活性化メカニズムを化学構造の観点から解析すると共に、化合物のNrf2の活性化に関する構造活性相関を有機合成化学的手法を用いて明らかにする。
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研究実績の概要 |
核因子赤血球系2-関連因子2(Nuclear factor-erythroid 2-related factor 2: Nrf2)は、酸化ストレスにより活性化される転写因子であり、炎症増悪因子に関わる遺伝子発現の抑制や、生体防御に関与する遺伝子群の転写を促進することから、新しいタイプの抗炎症薬の標的として注目されている。近年、天然物や食品由来の成分などからNrf2を活性化させる化合物が多数同定され、これらの中には実際に医薬品として臨床使用されているものも含まれる。一方、アスピリンやインドメタシンに代表される非ステロイド系抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)は、優れた解熱・鎮痛・消炎作用を示す医薬品として知られているが、一部のNSAIDsはNrf2の活性化に依存して抗炎症・抗酸化に関わるヘムオキシゲナーゼ(HO)-1を誘導することが報告されている。そこで本研究では、NSAIDsの化学構造とNrf2の活性化作用との相関(構造活性相関)を解析し、どのような化学構造がNrf2の活性化に寄与しているのかを明らかにする。2022年度は、細胞株を用いたin vitroの評価系を用いて、既存NSAIDsのNrf2活性化作用を網羅的に解析した。具体的には、国内外から入手した約60種類のNSAIDsについて、ルシフェラーゼ遺伝子が導入されたHEK-293細胞株(ヒト胎児の腎由来の細胞株)を用い、それぞれの化合物のNrf2活性化作用をルシフェラーゼレポーターアッセイ法で評価した。その結果、8種類の化合物が細胞生存率に影響を与えない濃度でNrf2活性化に対して有効性を示した。また、類似の基本骨格をもつNSAIDsであっても、基本構造に結合している官能基の種類に依存してNrf2活性化の程度が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、NSAIDsのNrf2活性化に関する構造活性相関を解析し、NSAIDsの化学構造とNrf2活性化作用の関連を明らかにすることである。この課題を解決するにあたり、2022年度はまず、国内外から約60種類の既存NSAIDsを入手し、化合物ライブラリーを構築した。また、NRF2/ARE応答性ルシフェラーゼレポーターHEK293細胞株を用いて化合物のレポーターアッセイ系を構築した。次に、in vitro におけるNSAIDsのNrf2活性化作用について、コントロールに対するルシフェラーゼ発光強度を相対値で比較した。さらに、WST法を用いてレポーターアッセイを行う濃度におけるNSAIDsの細胞毒性を観察した。これらの実験を計画的に実施した結果、8種類の化合物が細胞生存率に影響を与えない濃度でNrf2の活性化に対して有効性を示すことが示唆された。以上より本研究課題の当該年度における研究は概ね当初計画通りに進展している。また、これまでの研究成果を日本薬学会主催の学会にて報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまでに細胞株を用いたレポーターアッセイによって、Nrf2の活性化に有効性を示すいくつかのNSAIDsが得られている。今後はスクリーニングで抽出されたこれらの化合物が効率的にNrf2を活性化する条件を検討し、実際に抗炎症・抗酸化に関わるHO-1を誘導するかについて調べる予定である。また、NSAIDsによるNrf2の活性化と抗酸化作用の応答が、細胞の核内への移行を介した遺伝子発現に依存するものであるかについても調べる予定である。具体的には、Western blottingにより細胞質のKeap1、細胞質および核内のNrf2の発現について調べ、NSAIDsのNrf2活性化に関するメカニズムの解明へと繋げたいと考えている。一方で、Nrf2の活性化に有効性を示した化合物の化学構造的な観点から解析を行い、Nrf2活性化に重要な基本構造または官能基の同定について検討を行う。具体的には、有機合成化学的手法を用いて抽出された化合物について複数の誘導体を合成し、これらのNrf2活性化に対する構造活性相関について解析を行う予定である。
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