研究課題/領域番号 |
22K06581
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
菅原 栄紀 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50405916)
|
研究分担者 |
井ノ口 仁一 大阪大学, 大学院理学研究科, 特任教授(常勤) (70131810)
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | EMARS法 / Gb3 / レクチン / 細胞内輸送 / Rab ファミリー / 糖脂質 / precision medicine |
研究開始時の研究の概要 |
ナマズの未受精卵中から発見されたレクチン(Silurus asotus lectin, SAL)はバーキットリンパ腫や子宮頚がん,腎がんなどの細胞膜表面において発現が増加している糖脂質Gb3と特異的に結合することで,がん細胞の内部に取り込まれることを見出している.さらに,SALは抗がん剤の効果を増強させる効果も有している.そこで本研究では,がん細胞内にSALが取り込まれる分子メカニズムを解明することと共に薬剤融合SALの作製および有用性の検討を行い新規がん治療方法の開発を目的とする.
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,がん細胞内にSALが取り込まれる分子メカニズムを解明することと共に薬剤融合SALの作製および有用性の検討を行い新規がん治療方法の開発することである.ナマズ卵レクチン(SAL)は,バーキットリンパ腫細胞株 Rajiの細胞膜表面上に発現しているglobotriaosylceramide(Gb3)に結合しカベオラ非依存性脂質ラフトエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ,核近傍に集積する.本年度は,取り込みに関与するあるいはSALがGb3に結合することに引き起こされるMEK-ERKシグナル伝達活性化に影響する分子をFITC-conjugated aryl azide を利用したEnzyme-mediated activation of radical sources(EMARS)法を用いて探索した.また,抗がん剤融合SALの作製において重要な効果的な反応条件の検討も行った.EMARS法を行った後,ラフトに局在する分子を標的にする目的でUltraRIPA lipid raft kitを利用してラフト画分の抽出を行いGb3 近傍の分子の探索を試みた.蛍光イメージング解析装置を用いて候補分子を探索したところ32.7 kDaおよび97.8 kDa のタンパク質がGb3 近傍に存在する候補分子として見出した.この結果から,SALの取り込みあるいはシグナル伝達活性化にはこれらの分子が関与している可能性が示唆された.また,抗がん剤融合SALの作製においては,抗がん剤を融合させる際に利用する反応条件でSALの活性が変化するか否かをウサギ赤血球を用いた凝集反応およびフローサイトリー法を用いてSALのがん細胞に対する結合活性を指標に調べた.今回利用した反応条件では,SALのGb3結合活性に変化が認められないことを確認し,効果的にSALを抗がん剤融合できる条件を見出した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究計画は,globotriaosylceramide(Gb3)近傍に存在する分子を探索することおよび抗がん剤融合SALの作製である.令和5年度は,Gb3を高発現しているバーキットリンパ腫細胞株Rajiを用いてHRP標識したSAL(HRP-SAL)およびFITC-conjugated aryl azideを用いてEMARS法を行いGb3 近傍に存在する分子をFITC標識した.Gb3は,Glycosphingolipid-enriched microdomain(GEM)に存在することから,細胞膜よりGEMを回収し,SDS-PAGEを行った後,蛍光イメージング解析装置を利用してFITC標識されたタンパク質を検出した.本研究では,32.7 kDaおよび97.8 kDa のタンパク質がHRP-SAL処理試料に特異的に見られるバンドでありGb3近傍に存在する分子の可能性が示唆された.抗がん剤融合SALの作製においては,抗がん剤を融合させる際に利用する反応条件でSALの活性が変化するか否かを検討した.ウサギ赤血球を用いた凝集反応およびフローサイトリー法を用いてSALのがん細胞に対する結合活性を調べた結果,今回利用した反応条件ではSALの活性に変化が認められなかった.本年度は,Gb3近傍に局在する候補分子を得ることができ,また抗がん剤融合SAL作製に利用できる反応条件を明らかにすることができた.このような成果から令和5年度の研究がおおむね順調進んだと考えております.
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度に行った研究から,Gb3近傍には,32.7 kDaおよび97.8 kDa のタンパク質が存在し,SAL処理により誘導されるMEK-ERKシグナル伝達経路の活性化にはこれらの分子が関与している可能性が示唆された.しかし,これらの分子を同定することはできなかった.今後は,質量分析計を用いてこれらの分子を同定すると共にGb3と同定された分子の相互作用を明らかにする.これによりSALがGb3に結合することにより引き起こされる細胞増殖あるいはSALの取り込み機構の解明に繋がる.抗がん剤融合SALの作製に関しては,微小管重合阻害剤であるMMAEを融合させてGb3を発現しているがん細胞特異的に抗腫瘍効果を発揮するか否かについて解析し,SALががん治療に応用できることを確認する.
|