研究課題/領域番号 |
22K06585
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
津川 仁 東海大学, 医学部, 講師 (30468483)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 胃がん幹細胞 / 短鎖脂肪酸 / 胃がん / 共生細菌 / がん幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
ピロリ菌の感染者はすべて胃がんを発症するわけではなく、胃がん発症者はH. pylori感染者の中から何らかの理由で選択されている。しかし、どの様なメカニズムで胃がん発症者が選択されていのるかは明らかにされていない。本研究では、ヒト胃がん患者由来検体を用いて胃がん患者胃内に特異的に共生するCAPZA1発現の脱制御に関わる細菌を探索・同定し、同定した胃内共生菌とピロリ菌の共感染がCD44v9陽性がん幹細胞を誕生させるかを明らかにする。これらの成果は胃内共生細菌への介入による胃がんの発症・再発リスク評価系やがん予防・治療法開発に繋がりがん治療分野に大きな技術革新の提唱が期待できる。
|
研究実績の概要 |
H. pylori感染胃がん患者50例、H. pylori感染胃炎患者50例を対象に十分なインフォームドコンセントと文書同意を得たのち採取した胃液検体を用いて、胃内の短鎖脂肪酸(SCFAs)濃度を液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(LC-ESI-MS/MS)により測定し、胃がん患者の胃内SCFAs濃度と胃炎患者で比較した。その結果、胃がん患者胃内でのpropionate濃度は有意に高くまた、butyrate濃度も上昇傾向を示すことを明らかとした。この結果は研究代表者の仮説である「胃粘膜内へSCFAsを供給する胃内共生細菌はCAPZA1の過剰発現を誘導し、そこへH. pyloriががん蛋白質CagAを注入すると細胞内でCagAは安定化し、CD44v9陽性がん幹細胞が発生する」の仮説を支持する結果であり、次に、胃発がんカスケードの進展に関わる胃内共生細菌を、SCFAs産生性という細菌学的特性を指標に、胃がん患者より採取したヒト胃液検体から抽出した細菌性DNAを用いて次の方法で特定の細菌探索を行った。ヒト胃液検体から抽出した細菌性DNA から16SrRNAをPCR増幅しTA cloningにより16SrRNAをクローン化し、16SrRNAのサンガーシークエンスから細菌種を同定し、胃炎患者に比べ胃がん患者でその存在量が亢進しているかを定量的real-time PCRにて評価し、胃がん患者特異的にその相対的存在量が亢進しているSCFAs産生細菌を探索した。その結果、Streptococcus属細菌が同定され、本菌とH. pyloriの共感染状態により、胃発がん性シグナルが惹起されている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胃液検体内の短鎖脂肪酸濃度の測定と標的細菌の絞り込みができたことで、今後、胃がん幹細胞の発生過程解明に向けて、計画している細菌学的な分子生物学的学試験に取り掛かることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、胃液内で検出されたSCFAsが胃がん部組織内へどの様にアクセスしているかについて、胃がん組織検体に対するイメージングマススペクトロメトリー解析を実施し、胃がん部組織内と非がん部組織内のSCFAs濃度レベルを定量的視覚化比較解析し、がん部組織内へのSCFAs集積性を明確にする。SCFAs濃度の亢進が認められるがん部領域特異的にCD44v9陽性細胞が検出されるかを免疫組織化学的に解析し、CD44v9陽性細胞の発生に対するSCFAsの関与を明確にする。また、同定されたStreptococcus属細菌の胃オルガノイド及びマウスモデルを用いてH. pyloriとの共感染モデルを構築しCD44v9陽性がん幹細胞発生機序の解明に向けた解析を開始する。
|