研究課題/領域番号 |
22K06591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
小西 守周 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00322165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | FGF21 / 胸腺 / 負の選択 / エネルギー代謝 / 胸腺上皮細胞 / 分泌因子 / 自己免疫反応 |
研究開始時の研究の概要 |
外来の異物を認識し攻撃する免疫においては、一方で自己の分子や細胞を異物として認識しないことが必要である。主要な免疫細胞であるT細胞は、胸腺において成熟する過程で自己を認識するクローンが排除される(負の選択)。負の選択の異常は自己免疫疾患の発症にもつながるため、そのメカニズムの解明は医学薬学的に重要な研究課題である。本研究では、分泌因子FGF21が、この胸腺の負の選択に重要な役割を担うこと、またその際の詳細なメカニズムを明らかにするものである。またFGF21が個体のエネルギー状況に応じて血中濃度が変化することから、個体エネルギー代謝と免疫機能との関係についても検討を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では、Fgf21が胸腺機能における「負の選択」を調節するメカニズムを明らかにしつつ、Fgf21あるいは栄養を通じた「負の選択」の調節の可能性を検討する。2022年度では、Fgf21の「負の選択」への関わりのメカニズムの解析を実施した。胸腺ストローマに含まれる細胞群において、Fgf21の受容体(βKlotho)は胸腺髄質上皮細胞(mTEC)にのみ存在することから、mTECの解析を進めた。その結果、成熟マーカーであるAireを有するmTECの数、割合が減少していること、さらに、KOマウスのmTECの増殖が低下していることも明らかにし、以上の結果からFgf21はmTECの成熟と増殖を促進しているものと考えられた。一方でKOマウス胸腺において、mTECではMHCクラスⅡ分子が増加し、胸腺内樹状細胞のMHCクラスⅡ分子が著しく減少することも明らかとなった。このKO胸腺のmTECで認められた表現形質を確認するために胎児胸腺器官培養に対するFgf21の添加実験を行い、Fgf21によりAire陽性mTECが増加すること、mTEC上のMHCクラスⅡ分子が減少することを確認した。その一方で、胸腺内の樹状細胞におけるMHCクラスⅡ分子が有意に増加することも見出した。またKOマウスの胸腺移植実験から、同マウスは「負の選択」異常による自己免疫反応が生じることを明らかにした。 mTEC、胸腺内樹状細胞は、いずれも、細胞表面のMHCクラスⅡ分子を介して未熟なT細胞の「負の選択」を司る細胞である。2022年度に得られた結果をもとに、Fgf21は胸腺内mTECに作用し、その増殖と成熟を促すこと、さらに成熟したmTECから樹状細胞へのMHCクラスⅡ分子の移行(トロゴサイトーシス)を促進することで、「負の選択」を維持する役割を担うことが明らかにできたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、2022年度はFgf21による「負の選択」の制御メカニズムを明らかにするとしていた。その計画どおりに、mTECへの作用やmTECから樹状細胞へのMHCクラスⅡ分子の移行を証明できたものと考えている。 一方で、Fgf21の血中濃度の亢進する栄養条件において胸腺機能が変化することを明らかにする実験はデータが集まりつつあるものの、2022年度中に結論が得られなかった。 以上の状況を考え、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降は、Fgf21のmTECに対する作用について、細胞内シグナルを中心に、そのメカニズムを解明することを考えている。まずFgf21KOマウスmTECを回収し、変化する遺伝子を網羅的に明らかにすることでFgf21の作用メカニズムや細胞内シグナルの手がかりを得る。その上で、KO胸腺mTEC の細胞内シグナルの変化などを、胎児胸腺器官培養を用いて解析を進める。さらに、例えばFgf21の中和抗体の投与など、Fgf21KOマウスを用いる以外の方法で胸腺のFgf21シグナルを抑制するモデルを作製し、Fgf21の生理的意義を補強することを検討している。 加えて、Fgf21の添加による胸腺機能変化に関して、組み換えFgf21タンパク質を大量に作製し、野生型マウスもしくはFgf21ノックアウトマウスに投与する検討も進める。胸腺上皮細胞、胸腺内樹状細胞の変化に加えて、T細胞のレパトア解析なども進め、自己免疫反応を薬理的に調節する手法の開発に繋げる。 また、Fgf21が個体のエネルギー代謝調節因子であり、血中濃度が栄養条件で著しく増減することに着目し、栄養条件による胸腺機能調節についても、引き続き検討を進める。2023年度以降は、同検討を野生型マウスとFgf21ノックアウトマウスの2種類で行い比較を行うことで、栄養条件による胸腺機能変化においてFgf21の意義を明確にしていく予定である。
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