研究課題/領域番号 |
22K06592
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (10389182)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | カドミウム / 腎障害 / 近位尿細管 / 再吸収 / ミトコンドリア / 腎臓 |
研究開始時の研究の概要 |
カドミウム(Cd)は腎臓に蓄積し、近位尿細管を障害するがその機構の詳細は明らかになっていない。腎臓は様々な物質の再吸収と排泄を調節する器官である。近位尿細管での栄養素や必須金属の再吸収には大量のエネルギーを必要とするため、ATP産生を行うミトコンドリアが重要である。腎臓のミトコンドリアがCd毒性の標的となり、その融合と分裂のバランスを障害する可能性を見出したため、Cd曝露による腎臓のミトコンドリアダイナミクスへの影響を解析し、Cdによる再吸収障害機構を明らかにすることを目指す。また、他の腎障害誘発薬物による腎障害についてもミトコンドリアへの影響を解析する。
|
研究実績の概要 |
カドミウム(Cd)曝露による腎臓のミトコンドリアダイナミクスへの影響を解析し、この障害とCdによる再吸収障害との関係を明らかにするか検討した。Cd-MT投与による腎障害誘発モデルを使用し、ICR雌マウスにCd-MTを0.05, 0.1, 0.2, 0.3 mg Cd/kg投与マウスの腎臓を摘出し、1日後の腎臓においてミトコンドリア形態異常が起こるかどうか、電子顕微鏡で解析した。Cd-MT投与により腎臓のミトコンドリアは、細胞によって障害の程度が異なっており、ミトコンドリア障害がヘテロに観察された。濃度依存的に障害を受けているミトコンドリアの割合が増加していた。Cd-MT投与によりミトコンドリアの密度が減少し、ミトコンドリア膜は障害を受け、脱落が認められ、形態がいびつになっていることが観察された。Cd-MT 0.2 mg/kg投与群以上の濃度では、クリステが崩壊しているミトコンドリアも観察された。最も高い投与濃度である0.3 mg/kg投与群では細胞の空砲化も観察された。 ミトコンドリアは常に融合と分裂を繰り返し、この構造変化はミトコンドリアの機能と密接に関連している。そこで、培養細胞ではラット由来のNRK-52E、マウス由来のS1細胞を用いてCd曝露を行い、Cd曝露がミトコンドリアの形態と機能に及ぼす影響、およびそれらを調節する因子を解析した。CdCl2曝露3日後にNRK52EおよびS1細胞において、CdCl21日曝露により、S1細胞ではOPA1, DRP1およびSIRT1の発現低下も見られた。NRK52E細胞では、OPA1, DRP1およびSIRT1, SIRT3の発現が低下した。またどちらの細胞においてもミトコンドリア呼吸鎖複合体の発現低下が見られた。以上の結果から、細胞レベルにおいてもCdによってミトコンドリア障害が起こっており、形態変化が起こっている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivoおよびin vitroの系でCd曝露によるミトコンドリア障害が観察された。培養細胞は複数の種由来の培養細胞を用いて検討したが、ヒト近位尿細管由来細胞はCdによる感受性が低く、ミトコンドリア障害についても高濃度のCd曝露によってのみ観察されたため、マウスおよびラットの培養細胞での実験が適していると考えられた。 In vivoおよびin vitroの系で、ミトコンドリア形態の制御に関わるOPA1の発現低下が共に見られており、この障害がミトコンドリア機能異常を引き起こしている可能性を見出した。ミトコンドリアで起こった障害に関わるタンパク質の変化が複数観察されたが、これらが障害の原因なのか結果なのかはまだわからない。 今後、ミトコンドリアの詳しい形態の変化や時間依存的な変化について解析することでさらに詳しいCdによる腎臓におけるミトコンドリアへの影響を明らかにできると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
Cdによってミトコンドリア障害が腎臓で起こっていることはわかったが、その詳しい機構は不明である。培養細胞において、ミトコンドリアでどのような形態変化が起こっているか、また膜電位の変化がおこっているか、細胞のエネルギー様式の変化などについても解析する。 また、in vitroおよびin vivoの両方の系を使用して、Cdによる再吸収障害を測定し、ミトコンドリア障害との関係性について濃度や時間を詳細に振って検討する。 特に、培養細胞系を用いて、リンやCaの取り込みを測定できる系を立ち上げ、Cd曝露によるその変化について解析する。Cd曝露による様々な再吸収障害、またその輸送に関わる因子の発現変化について検討する。
|