研究課題/領域番号 |
22K06593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30291131)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 神経芽腫 / 糖転移酵素 / 転写制御 / センサー細胞 / 薬剤スクリーニング / 転写活性化 |
研究開始時の研究の概要 |
高リスク神経芽腫は予後が悪く、治療が難しい小児癌である。糖鎖は細胞の癌化に伴って構造が変化し、癌の悪性形質を担っている。これまでに、糖鎖の癌性変化を担う糖転移酵素の発現を制御し、糖鎖構造を改変することで癌の悪性形質を改善できることを見出してきた。最近、神経芽腫の悪性形質に関わる糖鎖を合成する糖転移酵素の基本的な転写制御機構を明らかにした。本研究では、この糖転移酵素の転写活性化機構を新しい治療ターゲットと考え、転写活性化の分子メカニズムを明らかにし、この知見を基に薬剤スクリーニングシステムを構築して薬剤の探索を試みる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は研究実施計画に基づいて、神経芽腫の悪性形質に関わるβ4-ガラクトース転移酵素 (β4GalT) 3の転写因子N-Mycによる転写活性化の分子メカニズムの解析を実施した。定量的RT-PCRによって、N-MycのmRNA発現はSH-SY5Yヒト神経芽細胞腫ではA549ヒト肺癌細胞に比べて12倍高いことが示された。そのため共導入実験ではN-Mycの効果がより顕著に現れることを期待して、N-Mycの発現が低いA549細胞を使用することとした。初めに、β4GalT3遺伝子の5’-上流領域に存在する3箇所のN-Myc結合部位のうち、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には-1148/-1143のN-Myc結合部位が関わっていることを特定した。次に、β4GalT3の転写を制御する転写因子Sp3とN-Mycの相互関係を明らかにするために、Sp3結合部位 (-39/-30と-19/-10) に変異を導入したレポータープラスミドとN-Myc発現プラスミドを共導入することで、N-Mycによるβ4GalT3プロモーターの活性化の有無を解析した。その結果、Sp3結合部位に変異を導入すると、N-Mycを共導入してもプロモーター活性は増加しなかった。従って、N-MycがSp3と共同してβ4GalT3の転写を活性化することが初めて明らかにされた。さらに、β4GalT3の転写活性化にSp3とN-Mycがどのような分子メカニズムで関与するかを明らかにするために、Sp3とN-Mycの相互作用を解析した。SH-SY5Y細胞から調製した核抽出物を試料として抗Sp3抗体を用いた共免疫沈降を行ない、ウエスタンブロット解析によりSp3とN-Mycを検出した。その結果、共免疫沈降物中にSp3が検出されたが、N-Mycは検出されなかった。従って、Sp3とN-Mycは直接相互作用していない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であるβ4GalT3の転写因子N-Mycによる転写活性化の分子メカニズムの解明を達成するために、3項目から成る研究実施計画 (N-Mycによる転写活性化に関与するN-Myc結合部位の決定、N-MycのN-Myc結合部位への結合性の解析、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化へのSp3の関与の解析) を立てた。令和4年度は研究実施計画に基づいて、幾つかの新しい知見が得られた。ヒトβ4GalT3遺伝子の5’-上流領域に存在する3箇所のN-Myc結合部位のうち、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には-1148/-1143のN-Myc結合部位が関わっていることを特定した。また、N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化には、β4GalT3のプロモーター領域に存在するSp3結合部位 (-39/-30と-19/-10) が重要な役割を果たしていることを示した。さらに、抗Sp3抗体を用いた共免疫沈降により、Sp3とN-Mycは直接相互作用しない可能性を見出した。以上の研究成果から、研究目的を、おおむね順調に達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はSp3とN-Mycのβ4GalT3への転写活性化への関与の分子メカニズム研究をさらに発展させ、これを薬剤スクリーニングに結びつけるため、以下の実験を予定している。令和4年度に得られた共免疫沈降実験の結果を検証するために、タグを付きのSp3を発現するためのプラスミドを作製する。このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、タグに対する抗体を用いた共免疫沈降によってN-MycとSp3の相互作用を解析する。また、免疫沈降実験に用いることができる良い抗N-Myc抗体がないため、共免疫沈降やクロマチン免疫沈降アッセイを行うために、同様にタグ付きのN-Mycを発現するためのプラスミドを作製する。タグ付きN-Myc発現プラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、タグに対する抗体を用いた共免疫沈降によってN-MycとSp3の相互作用を解析する。さらに、このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、クロマチン免疫沈降アッセイによりN-MycのN-Myc結合部位への結合を解析する。N-Mycによるβ4GalT3の転写活性化がSp3を介して行われているかを検討するため、Sp3ノックダウンプラスミドを作製する。このプラスミドをSH-SY5Y細胞に導入し、Sp3とβ4GalT3のmRNA発現やプロモーター活性を解析する。また、この実験をN-Myc発現プラスミドを導入しても行う。令和4年度に明らかにしたN-Mycによる転写活性化に関わる領域を、抗生物質耐性遺伝子を有するルシフェラーゼレポーターベクターに組込む。これをSH-SY5Y細胞に導入して、抗生物質存在下で培養することでセンサー細胞を樹立する。
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