研究課題/領域番号 |
22K06594
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 賀章 京都大学, 薬学研究科, 講師 (30467427)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 概日リズム / 視交叉上核 / Nmu / Nms / Gpr176 / Gpr19 / バソプレッシン / 時差症状の緩和 |
研究開始時の研究の概要 |
シフトワークや経済のグローバリゼーション、生活の夜型化による慢性時差環境は、体内リズム不全のみならず、高血圧、肥満、心血管障害、ガンの高リスク要因であり、その克服は現代社会の喫緊の課題である。本研究では、体内時計の中枢器官である視交叉上核 (SCN) に発現する新規オーファン受容体であるGpr19を介するシグナルと、SCNの神経ペプチドであるアルギニンバソプレシンを中心とした時差病態の脳内メカニズムを解明し、時差治療法の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
シフトワーカーは、自身の体内時計と環境周期が慢性的に乖離する時差ボケ状態にあるため、ガンや生活習慣病のリスクを負っている。しかし、その有効な治療法は皆無である。脳の視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN)は、1日24時間の概日リズムを司る中枢部位であるが、明暗周期が急激に変動した時差環境下では、まず2万個からなるSCNの神経細胞が新しい明暗周期に再同調し、続いて末梢臓器の時計がSCNの変動に追随する。したがって、光変動に対するSCNの応答性の解明が、シフトワーカーの病態を改善する創薬のターゲット探索に寄与すると考えられている。SCNの内部では、眼から直接的に光情報を受けとる腹側部は明暗周期の変動に素早く再同調するが、眼から直接光情報の入力を受けない背側部の再同調は遅い。私は、このSCNの再同調機構にAVPシグナルが関与することをこれまでに明らかにし、数理計算を用いたシミュレーションとマウスを用いた概日行動実験により、背側部のAVP神経細胞群に再同調の早い集団と遅い集団があることを示した。また、大きな謎である背側部の同調機構の解明を試み、新規オーファンG蛋白質共役受容体Gpr19が腹側部から背側部への神経連絡に寄与することを発見した。今回私は、AVPやGpr19と同様にSCNで高発現するGpr176とニューロメディンU(Nmu)およびニューロメディンS(Nms)の3遺伝子を同時にノックアウトすると、光パルスによる概日行動リズムの位相後退量が有意に大きくなることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCNは明暗サイクルの入力を受け、外部環境と適切に同調している。この同調能を調べる手段として、光パルスによる概日行動リズムの位相変動の大きさを計測する実験が実施されている。 Gタンパク質共役型受容体Gpr176はSCNに豊富に存在し、概日行動リズムの周期長を制御しているが、光同調には関与していないことを私たちは以前に報告した。今回、DNAマイクロアレイ解析を行い、Gpr176ノックアウトマウスのSCNにおいて、NmuおよびNmsのmRNAの発現が増加していることを見出した。 このNmuとNmsの増加は、Gpr176の欠損を代償しているという可能性を検討するため、Nmu/Nms/Gpr176の三重欠損(トリプルノックアウト)マウスを作製したところ、Nmu/Nms/Gpr176トリプルノックアウトマウスは野生型マウスに比べて主観的夜の早期の光パルスに対する概日行動リズムの位相変動が有意に大きかったが、Nmu/NmsダブルノックアウトマウスおよびGpr176ノックアウトマウスにおいては、光パルスによる位相変動量は正常であった。光パルスによる位相変動量は、SCNでの光パルスによるPer1およびcFos mRNAの発現量の誘導と正の相関があることが知られている。しかし、Nmu/Nms/Gpr176トリプルノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して、光パルスによるPer1およびcFos mRNAの誘導量が減少した。 本研究の成果から、光パルスによる概日行動リズムの位相変動の適切な調節には、Nmu、NmsそしてGpr176を必要とする分子機構が存在することが示唆された。したがって、NmuとNmsおよびGpr176を同時に操作すれば、概日時計の位相の調節できる可能性があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
夜間に野生型マウスに対して光パルスを照射すると、SCNにおけるPer1およびcFos mRNAの発現を誘導し、その誘導の程度は概日行動リズムの位相変動の大きさと正の相関があることが知られている。しかし、Nmu/Nms/Gpr176トリプルノックアウトマウスでは、概日行動リズムの位相変動量は増加していたものの、SCNにおけるPer1およびcFos mRNAの誘導量は減少していた。このように、Nmu/Nms/Gpr176トリプルノックアウトマウスにおいて光誘導遺伝子の発現量と概日行動リズムの位相変動量が乖離するメカニズムは、現時点ではよくわかっていない。しかしながら、このような乖離はCry2欠損マウス、PACAP-type1受容体欠損マウス、あるいはmiR-132/212欠損マウスなど、他の遺伝子改変マウスでも報告されており、Per1やcFos mRNAの変化とは異なる概日行動リズムの位相変動の大きさを調節するメカニズムがあると考えられる。先行研究では、Per2をリン酸化することで位相変動に影響を与えるプロテインキナーゼCαや、Perタンパク質の翻訳を促進することで位相リセットを促進するeIF4Eといった転写後メカニズムによって位相変動の大きさを調節できることが示されていることから、NmuやNmsあるいはGpr176がこのような転写後調節に関与しているかを今後検討していきたい。
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