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線虫の冬眠制御に関わる神経ネットワークと寿命制御の相互作用解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K06596
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
研究機関広島大学

研究代表者

堀川 誠  広島大学, 統合生命科学研究科(先), 研究員 (50775997)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
キーワード冬眠 / 寿命 / 老化 / 休眠 / 温度 / 線虫 / 神経制御
研究開始時の研究の概要

高齢化が急速に進む現代社会において、抗加齢研究は基礎生命科学としても医学研究としても重要度が増している。線虫は古くから抗加齢研究のモデル生物として利用されており、特に耐性幼虫とよばれる休眠現象の制御遺伝子は線虫の寿命制御にも関与しているという発見を機に様々な寿命制御メカニズムが発見され、それらは哺乳類においても保存されている事が明らかになっている。
本研究では、新しく発見された冬眠に似た休眠現象である低温休眠を利用し、新しい寿命制御遺伝子・メカニズムの発見を目指す。また、先行研究において低温休眠は神経の制御を受けている事が分かっており、本研究ではその詳細な制御ネットワークも明らかにする。

研究実績の概要

本研究では線虫の冬眠様現象である低温誘導性休眠(以下、低温休眠)の制御機構を明らかにするとともに、低温休眠を制御する神経機構の解明と低温休眠現象の抗老化研究への応用を目的とする。先行研究より熱ショック因子 (hsf-1)機能欠損株は9℃において孵化直後に発生を停止し、通常の飼育温度 (20℃)に戻す事で成長を再開する可逆的な低温誘導性の休眠表現型を示す事を発見し、線虫の低温休眠と定義・命名した。低温休眠は様々な抗老化・抗ストレス遺伝子の導入により抑制される事から低温休眠と寿命制御・ストレス応答には共通の制御メカニズムが存在すると仮説を立て、低温休眠を指標とした長寿変異株スクリーニングシステムを開発し、この新規スクリーニングシステムにより長寿変異株の獲得に成功した。さらに、全ゲノム解析 (WGS)と量的形質遺伝子座 (QTL)解析を組み合わせたMutMap 法により低温休眠と寿命の共通制御遺伝子の同定に成功した。新規に同定された休眠制御遺伝子はNMD (nonsense mediated mRNA decay)を制御するキナーゼsmg-1およびsmg-2、MAPK経路の制御因子nsy-1/MAPKKK, mtk-1/MAPKKKおよびMAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23など寿命制御にも関与する事が知られている遺伝子であった。そして、これまで寿命制御に関して報告の無かったsur-2/MED23遺伝子の機能欠損が寿命を延長する事を明らかにした。低温休眠を制御する神経経路の解析では、低温休眠制御に線虫のneuromedin U様神経ペプチドcapa-1およびneuromedin U受容体ホモログnmur-1、およびモノアミン神経伝達物質チラミンの合成遺伝子tdc-1が関与している事を明らかにした。これらの成果をまとめた論文を投稿し、現在審査中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

線虫の冬眠様現象である低温休眠を指標とした長寿変異株のスクリーニングシステムを樹立し、複数の長寿変異株を取得する事に成功した。得られた長寿変異株の全ゲノム解析より低温休眠と寿命を制御する遺伝子を複数同定し、それらはNMD (nonsense mediated mRNA decay)を制御するキナーゼsmg-1およびsmg-2、MAPK経路の制御因子nsy-1/MAPKKK, mtk-1/MAPKKKおよびMAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23など寿命制御にも関与する事が知られている遺伝子であった。さらに、MAPK経路下流の転写制御因子sur-2/MED23が新規の寿命制御遺伝子である事も明らかにした。また、線虫の低温休眠の制御に関わる神経伝達物質・神経ペプチドの同定にも成功し、線虫のneuromedin U様神経ペプチドcapa-1およびneuromedin U受容体ホモログnmur-1、モノアミン神経伝達物質チラミンの合成遺伝子tdc-1が低温休眠の神経制御に関与している事を明らかにした。これらの成果をまとめた論文を投稿し、現在審査中である。
さらに低温休眠表現型を示す新規変異株を複数、単離する事にも成功しており、これら新規の低温休眠変異株はhsf-1機能欠損によらない異なるメカニズムにより低温休眠を誘導しているが、一方でhsf-1変異株の低温休眠を制御するMAPK経路の機能欠損により休眠が抑制されるなど、低温休眠の誘導には複数の異なる上流経路と共通する下流の制御メカニズムが存在することをあきらかにしている。現在、これら新規の低温休眠変異株の休眠制御メカニズムに関する論文を準備中である。

今後の研究の推進方策

現在審査中の論文の受理を目指すとともに、先行論文に続く2番目の論文の投稿準備を進める。
また複数の低温休眠変異株の遺伝学的解析により低温休眠にはMAPK経路など共通の制御メカニズムが存在する事を明らかにしており、これら上流の制御メカニズムが異なる複数の低温休眠変異株の比較解析により低温休眠制御に共通する中心的なシステムの発見を目指す。具体的な手法としてRNA-seqなどオミクス解析により低温休眠制御の中枢遺伝子候補を絞り込み、変異株やRNAi法を用いた遺伝学的解析により低温休眠のマスターレギュレーターの同定を目指す。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Max Planck Institute Biology of Ageing(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] Max Planck Institute(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 低温休眠現象の制御機構と抗老化研究への応用2023

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠
    • 学会等名
      線虫研究の未来を創る会2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 栄養応答メカニズムmTORC2により制御される線虫の低温休眠現象2023

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠, 水沼 正樹
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Regulatory mechanism of cold-inducible diapause2022

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠, 福山 征光, Adam Antebi, 水沼 正樹
    • 学会等名
      9th Asia-Pasific Worm Meeting.
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Interaction between cold-inducible diapause and longevity mechanism in C. elegans2022

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠
    • 学会等名
      第45回 日本基礎老化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 低温休眠の発見とその応用2022

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠
    • 学会等名
      線虫研究の未来を創る会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 線虫の低温休眠現象の発見と寿命制御メカニズムとの相互作用2022

    • 著者名/発表者名
      堀川 誠, 水沼 正樹
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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