研究課題/領域番号 |
22K06603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
築地 信 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (90302611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | がん病態 / がん免疫 / 抗体 / T細胞受容体 / 可変部 / レパトア / バイオマーカー / 免疫記憶 / 抗原受容体 / scFv-Fc / scTCR-Fc / scFv / TCR-Fc |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに確立した、B細胞とT細胞の抗原受容体の多様性(レパトア)を評価することのできる「抗原受容体レパトローム解析法」(図1、図4) により得られた、担がんマウスの病態の変化と相関する可変部領域を創薬に応用するプラットフォームを構築する。(1) 可変部領域の遺伝子をクローニングする。(2) 組換えタンパク質としてscFv、scFv-Fc、TCR-Fcを作製する。(3) がん細胞を認識する分子を同定し薬物複合体を作製する。(4) 担がんマウスにおいて治療効果を検証する。抗体医薬品、がんワクチン、免疫細胞療法などへの応用により、効果的な治療につながり、プレシジョン医療へ貢献することを志向する。
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研究実績の概要 |
多様ながん病態に対する免疫応答のQualityを正しく把握し、それに基づく診断法の確立と個別治療戦略を支える研究は重要である。近年、がん免疫療法として、免疫チェックポイント阻害薬や養子免疫療法が開発されているが、がん患者の免疫状態の診断と治療戦略のための情報が不足している。免疫応答において「抗原受容体の多様性」が応答状態や病態の程度に相関して、経時的に変動することが分かってきた。さらに、がん関連抗原の認識に貢献できるのがB細胞抗原受容体(BCR)及びT細胞抗原受容体(TCR)の可変部であるので、それらを低分子化して薬物複合体とした組換えタンパク質が新規モダリティの候補となる。 そこで、私たちがこれまで確立したB細胞とT細胞の抗原受容体の多様性(レパトア)を評価できる「抗原受容体レパトローム解析法」により得られた、担がんマウスの病態の変化と相関する可変部領域を創薬に応用するプラットフォームを構築することを目的とした。 担がんマウスとして、C57BL/6マウス由来のリンパ腫細胞株EL4細胞と、その細胞にがん抗原のモデル分子として、トリのオブアルブミン(OVA)のmRNAを導入したE.G7-OVA細胞を接種する方法を利用した。これまでに、接種後の末梢血中のB細胞とT細胞の経時変化を解析し、可変部領域の遺伝子のレパトア解析をおこなってきた。腫瘍サイズの増加と伴って変化したBCRのクローニングを進めている。さらにOVA由来ペプチドが抗原提示された構造を認識するTCRのクローニングし、それらを組換えタンパク質としてscTCR-Fcを作製した。これまでに、E.G7-OVA細胞特異的に結合することが確認できているので、それを基盤に担がんマウスにおける治療効果を検証する。抗体医薬品、がんワクチン、免疫細胞療法などへの応用により、効果的な治療につながり、プレシジョン医療へ貢献することを志向する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OVAペプチド257-264であるSIINFEKLがMHC class I (H-2Kb)に提示された構造を認識するOT-I由来のTCRの可変部遺伝子について、TCRalpha/beta鎖をリンカーで結合しヒトIgG1 Fc部を融合した組換えタンパク質scTCR-Fcとして発現させるベクターを作製した。リンカー部の配列について、-SGGGG-の繰り返しが3回のものと4回のものを作製した。293A細胞へ遺伝子導入し培養上清に産生させProtein Aビーズにて精製した。それらについて、C57BL/6マウス由来のリンパ腫細胞株EL4細胞(H-2Kb)とその細胞にOVA mRNAが導入されているE.G7-OVA細胞に対する結合性の違いをFACSにて調べたところ、E.G7-OVA細胞に特異的に結合することが明らかになった。 一方、OT-II由来のscTCR-Fcも作製できたが、OVAペプチド323-339であるISQAVHAAHAEINEAGRがMHC class II (I-Ab)に提示された構造を認識するはずなので、それらの結合性を確認するための実験系を立ち上げた。脾臓細胞を調整し、OVAタンパク質を加えた培地で4日間培養することで、抗原提示をしている細胞を同定できた。今後はこれを利用する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、scTCR-Fcの作製を進める。各種scTCR-Fcの結合特異性と親和性の詳細をELISAにて明にする。特にリンカー部の繰り返しについて、親和性の高いものをスクリーニングする。結合能を高めるために多量体化を行なった方が良い可能性があるので、ビオチン化二次抗体とストレプトアビジン蛍光ビーズを用いてみる。加えて、抗がん剤との複合体を作製する。OT-II scTCR-Fcについては、脾臓細胞由来の抗原提示細胞に結合することを明らかにする。OVAタンパク質やOVAペプチドを加えることによる結合性の上昇効率を確かめる。脾臓細胞由来のCD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞について、TCR可変部のレパトア解析を行い、誘導されたT細胞の特徴を解析する。最終的には担がんマウスへの投与を行い、治療効果を解析する。
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