研究課題/領域番号 |
22K06612
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
周 越 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (10733339)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | EphA2 / RSK / MK2 / リン酸化 / 細胞遊走 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
受容体型チロシンキナーゼEphA2はがんの悪性進展に関わる分子である。我々はこれまでにERKキナーゼがその下流のRSKキナーゼの活性化を誘導し、その結果、EphA2のSer-897残基がリン酸化することでがん細胞の遊走を促進することを示した。最近、ストレス条件下において、ERKとは独立してストレス応答キナーゼMK2がRSK-EphA2経路を制御することを見出した。本研究では、申請者らの先駆的な研究を発展させる形で、MK2-RSK-EphA2経路の分子機構と生理機能の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度はMK2を介したRSKの活性化機構とがんにおけるその機能を明らかにした。 RSKは分子内にNTKDとCTKDという2つのキナーゼドメインを持つ分子であり、その活性調節は複雑に制御されている。これまでの報告により、ERKによるRSKの活性化では、①ERKがRSKに結合することでCTKDの活性化を誘導する。②活性型CTKDがリンカー部位に存在するSer残基のリン酸化を誘導する。③セリン・スレオニンキナーゼPDK1が結合し、NTKDの活性化を誘導する。④活性型NTKDはEphA2などの下流の基質のリン酸化を誘導する。しかし、MK2によるRSKの制御では、MK2が直接リンカー部位のSer残基をリン酸化するため、CTKDの活性が必要ないと考え、これを実証した。この結果により、がん細胞はストレスに曝されると、活性型MK2を介してRSKのリン酸化が誘導され、CTKDの活性に依存せずにNTKDが活性化し、EphA2の非定型的活性化を誘導することが明らかになった。 MK2によって制御されるRSK-EphA2の機能について、グリオブラストーマ細胞株を用いて実験を行った。グリオブラストーマの治療にはアルキル化剤であるテモゾロミドが使用される。興味深いことに、我々は以前にテモゾロミドはグリオブラストーマ細胞株の細胞遊走を亢進させることを報告している。テモゾロミドは細胞内ストレスを負荷するため、テモゾロミドによって誘導されたMK2-RSK-EphA2経路が細胞遊走を制御するのではないかと考えた。実際にグリオブラストーマ細胞株にテモゾロミドを作用させたところ、MK2-RSK-EphA2経路の活性化が誘導され、細胞遊走も亢進した。これに対し、MK2やRSKの阻害剤、もしくはEphA2のノックダウンをしたところ、細胞遊走の亢進が抑制された。以上の結果により、テモゾロミドはMK2-RSK-EphA2経路を活性化させることで、細胞遊走を促進することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はMK2を介したRSKの活性化機構を明らかにした。また、細胞内ストレスによって誘導される細胞遊走をMK2-RSK-EphA2経路が制御することを明らかにした。これらの内容をまとめた論文を投稿し、受理された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、MK2-RSK-EphA2経路と細胞遊走の関係を明らかにしたが、がんの悪性進展には抗がん剤への耐性化、がん幹細胞性、がん細胞の血管擬態などがある。これらへのMK2-RSK-EphA2経路の寄与について今後は検討していく予定である。また、MK2を介したRSKの活性化制御機構について、NTKDの活性化に注目して実験を進める予定である。
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