研究課題/領域番号 |
22K06615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
伊左治 知弥 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (80433514)
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研究分担者 |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | N-型糖鎖 / シア酸 / PI4P / シアリルトランスフェラーゼ / GOLPH3 / ユビキチン化 / シアル酸 / シアリル化 / 細胞接着 / インテグリン / Focal adhesion kinase |
研究開始時の研究の概要 |
細胞表面のシアリル化糖鎖は癌化に伴い変化することが知られている。申請者はこれまで蛋白質による糖鎖制御に着目し、細胞接着分子インテグリンやGolgi phosphoprotein 3 が糖鎖の調節因子であることを見出してきた。インテグリンの下流の中心分子としてFocal adhesion kinase (FAK)が知られる。申請者は最近FAKの欠失によってシアリル化糖鎖が抑制されることを見出し、インテグリンのシグナルが糖鎖の生合成に重要であることがあらためて示唆されたが、調節機序の詳細が不明である。本課題は特に分子間相互作用に着目しFAKを介した新規シアリル化の誘導およびその分子機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
細胞表面のシアリル化糖鎖は癌化に伴い変化する。糖鎖の制御には、糖転移酵素遺伝子の発現変化と蛋白質レベルによる調節の二つの要因が存在する。これまで、我々は、蛋白質レベルによる糖鎖制御に着目し、細胞接着分子インテグリンα3と癌遺伝子Golgi phosphoprotein 3 (GOLPH3)が糖転移酵素の調節因子であることを明らかにしてきた。しかし、細胞表面のインテグリンがゴルジ体で行われる糖鎖修飾をどのように調節するか詳細が不明である。本研究ではインテグリンの下流シグナルの中心分子であるフォーカルアドヘーションキナーゼ(FAK)に着目した。最近、我々はFAKの欠失によってシアリル化糖鎖が抑制されることを見い出した。本課題は、FAKを介した新規シアリル化の誘導およびその分子機序の解明を目指す。前年度に、これまで明らかにしていたGOLPH3とST3GAL4あるいはST6GAL1との複合体の形成およびホスファチジルイノシトール4-リン酸(PI4P)の発現量がKO細胞で減少していた。PI4Pの発現量低下に関してトランスゴルジやゴルジに存在するPI4KIIαやPI4KIIIβの発現量を調べたところ、PI4KIIαは蛋白質レベルで低下していた。シクロヘキシミドを用いてPI4KIIαの安定性を調べたところ、PI4KIIαはKO細胞において不安定化していた。さらにユビキチン化を抗体で測定すると、PI4KIIαはユビキチン化が増加していた。さらにKO細胞にPI4KIIαを過剰発現すると、SNAレクチンの染色性は回復傾向を示し、このFAKのKOにおいてPI4KIIαの不安定化が重要であることが分かった。質量分析で糖鎖を解析したところ、KO細胞では著しくシアリル化が低下していた。今後メカニズムや臨床的な意義を推進することで、癌の進展メカニズムの解明や新規治療法の開発に繋げることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度において、GOLPH3と糖転移酵素の複合体形成およびPI4Pの発現量がKO細胞で減少していることが確認された。これらのメカニズムに注目し、研究を進めた結果、PI4Pの発現量の低下に関連して、トランスゴルジやゴルジに存在するPI4KIIαが不安定化していることが明らかとなった。この不安定化の一因としてユビキチン化の増加が観察された、一方でPI4KIIαのmRNAの発現量は変化していなかった。従ってこれらの変化がシアリル化糖鎖の低下に蛋白質レベルで直接関与している可能性が高いと考えられる。多様な解析手法を駆使したことが研究の進捗に寄与している。さらに、質量分析による高精度なデータが本研究の進行において重要な役割を果たしている。これらの成果により、研究は全体として順調に進行しており、糖鎖の生合成と細胞機能との関連性をより深く理解するための基盤が着実に築かれつつあることが示されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まずPI4KIIαの不安定化に関与するユビキチン化経路を詳細に解析することが挙げられる。さらに、ユビキチン化を抑制の特異的阻害剤を用いて、PI4KIIαの安定化を図りこれにより、シアリル化糖鎖の回復効果を確認する。これによりユビキチン化抑制の効果的な方法を見出すことが期待される。 次に、FAKの欠失によるシグナル経路全体の変動を網羅的に解析する。プロテオミクスを用いて、影響を受ける他のシグナル分子や経路を特定し、FAK欠失による細胞機能の変化を包括的に理解することを目指す。また、糖転移酵素の相互作用分子の同定にも注力し、これにより糖鎖修飾の制御機構をさらに詳細に解明する。 シアリル化糖鎖の低下が細胞機能や癌細胞の挙動に与える影響を詳細に解析する。特に、細胞接着や移動能、増殖に対する影響や白血病細胞における分化の過程において評価することに重点を置く。加えて、シアリル化糖鎖の生理的な意義、例えばウィルス感染における役割も考慮する。 これらの施策を推進することで、シアリル化糖鎖の制御機構をより深く理解し、癌の進展メカニズムの解明や新規治療法の開発に繋げることを目指す。さらに、ウィルス感染におけるシアリル化糖鎖の役割の解明は、感染症研究にも新たな知見を提供しうる。
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