研究課題/領域番号 |
22K06617
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
板部 洋之 昭和大学, 薬学部, 教授 (30203079)
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研究分担者 |
小濱 孝士 昭和大学, 薬学部, 准教授 (60395647)
牧山 智彦 昭和大学, 薬学部, 講師 (60733102)
渡邉 雄一 昭和大学, 薬学部, 助教 (70792729)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 細胞内脂肪滴 / Sar1 / COPⅡ小胞 / PLIN2 / 中間比重粒子 / LC-MS/MS |
研究開始時の研究の概要 |
脂肪滴の形成における小胞体からの出芽過程は、まだよく分かっていない。最近、COPⅡ小胞の形成に関わる低分子量Gタンパク質Sar1bが脂肪滴形成を促進することを見出した。そこで、脂肪滴の出芽過程で、Sar1bを含む種々タンパク質による複合体が形成される可能性を考えた。Sar1bを免疫沈降しプロテオーム解析によりSar1bのパートナー分子を探索し、候補分子をshRNA法で発現抑制してその機能を確認する。小胞体からの脂肪滴の出芽機構を解明し、細胞内脂質代謝制御の基盤となる小胞体膜及び脂肪滴の挙動の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
脂質代謝の制御機構を理解するためには、細胞内脂肪滴の形成機序や細胞内での挙動を明らかにすることが重要である。しかし、脂肪滴の形成は小胞体膜内でのトリアシルグリセロールの蓄積と小胞体膜の変形と出芽の過程を経ると考えられている。さらに、脂肪滴の肥大化には、脂肪滴どうしの融合も関わっていると考えられるが、小胞体からの出芽や、脂肪滴の融合の過程に必要な因子の探索は進んでいない。これまでに当研究室では、COPⅡ小胞の形成に関わる低分子量Gタンパク質Sar1bが脂肪滴へのPLIN2局在に関わることを見出した。 Sar1にはSar1aとSar1bの2つのサブタイプが存在するが、まずこの細胞での発現量の多いSar1bについて、過剰発現細胞及びドミナントネガティブ体を発現させて作用を抑制した細胞を作成し、脂肪滴及び脂肪滴タンパク質への影響を調べた。過剰発現したSar1bは細胞内脂肪滴に局在した。Sar1bのドミナントネガティブ体(Sar1b G79H)を発現した細胞では、PLIN2の脂肪滴局在が抑制され、細胞内の発現量も減少した。Sar1のサブタイプであるSar1aでも同様の影響が確かめられた。shRNAでSar1b及びSar1aのmRNAを枯渇させると、やはりPLIN2の脂肪滴局在が抑制され細胞内の発現量が減少した。これらの結果から、PLIN2を脂肪滴に局在させる過程にSar1bが関わっていることが示された。脂肪滴のTG量には変動がなく、PLIN2 が減少する一方で、代償性にPLIN3 が増加していることが、ショ糖密度勾配で脂肪滴を分画する実験及び顕微鏡観察から確認できた。PLIN2のmRNA量には変動がなく、転写レベルではなく、分解系による調節の可能性が考えられた。 ここまでの成果をまとめて論文として公表した。(Makiyama T, et al. Int. J. Mol. Sci. 2022, 23:6366)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アデノウイルスベクターを用いてSar1bの発現量を増減させた、ヒト肝臓がん細胞株であるHuH-7細胞を作成し、これらの細胞にオレイン酸 (Oleic acid: OA) を添加して脂肪滴を蓄積させた。GFP融合Sar1bは細胞質全体に発現するが、OA添加細胞では一部がLD周辺部に局在した。細胞破砕液をショ糖密度勾配遠心で分画したところ、PLIN2はトップに浮上した脂肪滴画分に回収され、局在が確認された。この時、LDタンパク質であるPLIN2の細胞内発現量にOA添加による変動は見られなかった。1アミノ酸置換によりGTPase活性を失活させたH79G変異体を発現させたHuH-7細胞では、OA添加時にPLIN2発現量が減少することを見出した。Sar1b過剰発現、H79G変異体発現細胞において、OA添加の有無に限らず、細胞内TG量、およびPLIN2のmRNA量にも大きな変化がなかった。さらに、shRNAを発現させてSar1a及びSar1bのmRNAを枯渇させた細胞を作成したところ、やはり脂肪滴へのPLIUN2局在が低下した。これらの結果から、Sar1bが細胞内のPLIN2の発現量の制御に関わっていることが示唆された。転写レベルでの変化が無いことから、分解系による制御の可能性が考えられる。PLIN2がLDへの局在性を失い分解を受けている可能性を考えると、Sar1bのGTPase欠損変異体発現細胞ではPLIN2の一部がLDへの移行が抑制され、PLIN2の局在変化に伴う分解亢進を受けている可能性が想定された。 現在、PLIN2の発現制御に関わる因子を探索し、いくつかのリン酸化酵素による細胞内情報伝達系の関与について調べている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Sar1bが直接PLIN2結合したり、あるいはリン酸化をしたりしているのかどうかを検討するため、免疫沈降実験を試みる。場合によっては、Sar1bの標的タンパク質として第3の因子が考えられる場合は、LS-MSによる網羅的解析で同定を試みる。 また、PLIN2の脂肪滴局在を制御する因子を探索する。現在、いくつかのリン酸化酵素について予備検討をしているが、その中で、細胞分裂時の中心体の分裂開始を促すNEK2A(NIMA-related kinase 2A)が、PLIN2に影響を与える可能性を見出し、細胞分裂と脂肪滴の関連性にも通目して検討を進める。
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