研究課題/領域番号 |
22K06640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
横江 俊一 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (40454756)
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研究分担者 |
朝日 通雄 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (10397614)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 心不全 / ユビキチン / SARAF |
研究開始時の研究の概要 |
心不全では、細胞質内カルシウム(Ca2+)濃度の慢性的な上昇が心機能の更なる低下を引き起こしていることも病態悪化の一因と考えられているが、申請者らは、心不全モデルマウスにおいて、Ca2+流入の抑制性制御分子であるSARAFの発現が大きく低下していることを見出した。さらに、SARAFの分解を抑制している分子であるALG-2の発現も低下していることを見出した。そこで、これらの分子の発現変化が、細胞質内Ca2+濃度上昇による心不全病態悪化の一因になっていると考え、SARAFおよびALG-2によるCa2+流入制御機構を解明し、心不全病態との関連を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
ヒト不全心筋では、慢性的な細胞質内カルシウム(Ca2+)濃度の上昇が心機能の更なる低下を引き起こしている。細胞外から細胞質内へのCa2+流入は、Ca2+チャネルのOraiとCa2+センサーのSTIM1が担うストア作動性Ca2+流入(SOCE)とよばれる機構によって制御されているが、研究代表者らは、種々の心不全モデルマウスの心臓において、SOCEの抑制性因子であるTransmembrane protein 66 (SARAF)の発現が顕著に低下していることを見出した。このことから、心不全病態下ではSOCEを介したCa2+流入の増加が、細胞質内Ca2+濃度上昇による心不全病態悪化の一因になっていると考えた。研究代表者らはさらに、SARAFの発現が低下している要因として、SARAFのユビキチン化を制御しているCa2+結合分子Apoptosis-linked gene-2 (ALG-2) の発現が低下していることを突き止めた。すなわち、ALG-2の発現が低下した不全心ではSARAFのユビキチン化および分解が亢進している事が考えられた。SARAFの発現低下が心不全の病態悪化と関連しているかどうかをさらに明らかにするために、マウスが心不全の病態を発症する前に、心臓組織特異的アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いてSARAFを心臓に送達させたところ、SARAFを送達させなかったコントロールマウスと比較して、心不全病態の進行が抑制された。以上の結果より、SOCE制御因子であるSARAFの発現低下による細胞質内Ca2+濃度異常が心不全病態悪化の一因であることが示唆された。今後、SARAFを標的とした治療戦略を立てることを目標としており、心不全症状の改善や治療法の向上を目指す上でとても意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心不全の重篤度によってSARAFとALG-2の発現がどの程度変動するのかを明らかにするために、各種心不全(遺伝性、圧負荷、イソプロテレノール負荷)モデルマウスの心臓切片やホモジネート、単離心筋細胞を用いて、トータルSARAF・ユビキチン化SARAFおよびALG-2の発現レベルや局在変化を観察することを計画していたが、現在までのところ、いずれの心不全モデルマウスにおいてもSARAFならびにALG-2の発現レベルの低下が観察できている。このことは、特定の心不全モデルマウスだけに観察される固有の現象ではなく、心不全病態において広く認められることを示唆しているため、SARAF/ALG-2の重要性をより示した結果と考えられる。また、心不全モデルマウス心臓において、SARAFのユビキチン化が増加していることが観察された。ALG-2がSARAFのユビキチン化を担っているかどうか明らかにするため、HEK293細胞を用いてALG-2を欠損させたところ、SARAFの発現が低下した。以上より、ALG-2の発現低下がSARAFのユビキチン化および分解に寄与していることを明らかにした。さらに、大動脈弓狭窄(TAC)による圧負荷誘発性心不全モデルマウスにおいてSARAFを心臓特異的に発現させたところ、心不全病態の進行・悪化の抑制が観察された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、遺伝発症性心不全モデルマウス(心筋特異的Na+/H+交換輸送体過剰発現マウス(NHE1-Tg)、心筋特異的R9C変異PLN過剰発現マウス(TgPLNR9C))や、植え込み型浸透圧ポンプを用いたイソプロテレノール持続投与誘発性心不全モデルマウスにおいても、心臓組織特異的アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)でSARAFを補填することにより、大動脈弓狭窄(TAC)による圧負荷心不全モデルマウスで観察された心不全病態の進行・悪化抑制効果が観察できるかどうか検証していく予定である。また、AAVでALG-2を補填することによる心不全病態の進行・悪化抑制効果も検証したい。
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