研究課題/領域番号 |
22K06650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
中道 範隆 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (10401895)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳・神経 / アルツハイマー病 / アミロイドβ / エルゴチオネイン / mTOR / オートファジー / 脳神経疾患 / 神経科学 / 薬理学 / 抗酸化物質 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病(AD)は、最も一般的な神経変性疾患であり、認知障害を主症状とする。天然物由来のエルゴチオネイン(ERGO)は、強力な抗酸化作用を有しており、ADの発症に関与するアミロイドβ(Aβ)が誘発する神経細胞障害に対して保護効果を示す。一方、ERGOは抗酸化作用以外のメカニズムでも神経保護効果を発揮する可能性がある。本研究において、Aβ誘発神経細胞障害に対するERGOの保護メカニズムを解明することにより、AD治療に有用な薬理学的知見が得られると期待される。
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研究実績の概要 |
天然物由来の水溶性アミノ酸エルゴチオネイン(ERGO)は、強力な抗酸化作用を有しており、アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβ(Aβ)が誘発する神経細胞障害に対して保護効果を示す。研究代表者は、これまでにERGOが抗酸化作用以外のメカニズム、神経栄養因子の誘導やmTORシグナルの活性化を介して神経分化や神経成熟を促進することを明らかとした。神経栄養因子やmTORシグナルの活性化は神経細胞に保護的に働くことから、ERGOは抗酸化作用以外のメカニズムでも神経保護効果を発揮する可能性がある。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を10% FBSおよびレチノイン酸入りのDMEM/Ham’s F-12培地で培養後、1% FBS入りの同培地で培養した。本条件で培養したSH-SY5Y細胞では、コリン作動性神経マーカーChATのmRNA発現が増加した。コリン作動性神経に分化させたSH-SY5Y細胞にAβを曝露することにより、濃度依存的な細胞毒性が検出され、その細胞毒性はERGOにより濃度依存的に抑制された。オートファジーは細胞内の不要タンパクを除去するシステムであり、過剰にリン酸化されたタウタンパク質(Tau)の除去に働くと考えられる。一方、mTORを活性化するERGOはオートファジーを抑制する可能性があり、ERGO がTauのリン酸化にどのような影響を及ぼすのか興味深い。そこで、AβによるTauのリン酸化に対するERGOの効果についてウェスタンブロット法により検討を加えた。対照群と比較してAβ曝露群では有意にリン酸化Tauの発現量が増大し、その発現量増大はERGOにより濃度依存的に抑制された。したがって、ERGOはAβによるリン酸化Tauの発現量増大を抑制し、細胞毒性を軽減する可能性が示された。今後はERGOによるAβ細胞毒性の保護効果に神経栄養因子やmTORシグナル、オートファジーが関与するのかについて検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、天然物由来の抗酸化物質ERGOによるAβ誘発神経細胞毒性の保護メカニズムへの神経栄養因子やmTORシグナル、オートファジーの関与を解明し、アルツハイマー病治療に有用な細胞内シグナルの組み合わせを明らかにすることを目的として行っている。初年度は上記目的を達成するための実験系を確立することが重要であり、SH-SY5Y細胞および海馬由来初代培養神経細胞を用いてERGOによるAβ誘発神経細胞毒性の保護効果を検出できた。また、ERGOはAβによるリン酸化Tauの発現量増大を抑制し、細胞毒性を軽減する可能性が示された。オートファジーは細胞内の不要タンパクを除去するシステムであり、過剰にリン酸化されたTauを低下させると考えられる。一方、mTORを活性化するERGOはオートファジーを抑制する可能性があるにも関わらず、リン酸化Tauの発現量を低下させた。ERGOによる神経細胞保護メカニズムにおいて、神経栄養因子やmTORシグナル、オートファジー経路がどのように働いているのか興味深い。そこで次年度以降、ERGOによるAβ誘発神経細胞毒性の保護効果における神経栄養因子やmTORシグナル、オートファジーの関与について検討を加える。以上はおおむね予定通りの進行であり、本研究計画の現在までの達成度は「おおむね順調に進展している。」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
【ERGOの神経保護効果におけるmTORシグナルの関与】Aβの神経細胞毒性を検出するin vitro実験系として、Aβ神経毒性の評価に汎用されるヒト神経芽腫細胞SH-SY5Yおよびマウス海馬由来初代培養神経細胞を使用し、細胞毒性はCCK-8, LDH, Annexin V/PI assayにより評価する。SH-SY5Y細胞および海馬神経細胞にAβおよびERGOを曝露し、mTORシグナル関連分子の発現量を定量PCRやwestern blottingにより検討する。また、ERGOのAβ誘発神経毒性保護効果が、mTOR阻害剤やsiRNAによるRaptor(mTORC1)やRictor(mTORC2)のノックダウン、あるいはmTOR活性化剤よってどのような影響を受けるのかについて検討し、ERGOの神経保護効果にmTORシグナルがどのように関与するのかを明らかにする。 【ERGOの神経保護効果におけるオートファジーの関与】SH-SY5Y細胞および海馬神経細胞にAβおよびERGOを曝露し、オートファジー関連分子の発現量を定量PCRやwestern blottingにより検討する。また、ERGOのAβ誘発神経毒性保護効果が、オートファジー活性化剤、あるいはオートファジー阻害剤やsiRNAによるAtgファミリーのノックダウンによってどのような影響を受けるのかについて検討し、ERGOの神経保護効果にオートファジーがどのように関与するのかを明らかにする。
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