研究課題/領域番号 |
22K06656
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
松本 健次郎 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (10406770)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 内臓痛覚過敏 / TRPチャネル / 知覚神経 / マクロファージ / 大腸炎 / 温度感受性受容体 / 過敏性腸症候群 / TRPV2 |
研究開始時の研究の概要 |
内臓感覚は、臓器に分布する知覚神経が末梢で刺激を受けて生じる感覚である。過敏性腸 症候群(IBS)の主症状である内臓痛覚過敏は、内臓感覚の異常により引き起こされ、社会生活に大きな支障を与えることが問題となっている。IBSは難治性であり、患者数が増加の一途をたどっていることから、新しい標的の探索は国際的に重要な課題である。TRPチャネルは、知覚神経に多く発現し、腸の環境変化を感知するセンサーとして機能している。申請者は、知覚神経と腸管マクロファージに高発現するTRPV2に着目した。本研究では、内臓痛覚過敏における細胞特異的なTRPV2の役割を明らかにし、治療標的としての可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、52℃以上の熱刺激や機械刺激などで活性化する、多刺激応答性イオンチャネルTRPV2の炎症による内臓痛覚過敏や病態の進行における機能解明を目的とする。知覚神経および腸管マクロファージを制御する分子として推定されるTRPV2の治療標的としての可能性を検討する。 正常ラット大腸において、TRPV2は内在性抑制性神経、知覚神経、常在型マクロファージ、DRG(Aδ、β線維)およびNG由来外来性神経に発現していたが、TRPV1はDRG(C線維)およびNG由来外来性神経のみに発現していた。TNBS誘起大腸炎の病態時において、TRPV2およびTRPV1発現はDRGおよびNGで正常動物と比較して有意に増加した。また、TRPV2およびTRPV1とpERKの共局在の割合は大腸炎病態時に増加した。大腸炎病態時に観察された内臓痛覚閾値の低下は、TRPV2阻害作用を有するトラニラストおよびTRPV1拮抗薬であるBCTCの前投与により正常レベルまで低下した。ラット腸管神経系において、TRPV2はTRPV1とは異なり、外来性神経に加えて、内在性神経および常在型マクロファージにも発現していることが判明した。大腸炎病態時の内臓痛覚過敏の発症には、外来性神経に発現するTRPV1およびTRPV2が関与しているものと推察された。 2%デキストラン硫酸ナトリウム溶液(DSS)6日間処置によって惹起される腸管長の短縮、体重減少、下痢・血便スコアの上昇、遠位結腸の炎症の増悪は、TRPV2抑制薬SKF96365(20 mg/kg, i.p.)の1日1回6日間処置によって改善傾向を示した。特に下痢・血便スコアや組織炎症スコアはvehicle、6日間処置群と比べ、有意に減少した。よってTRPV2の抑制は大腸炎を改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ラット大腸炎モデルの内臓痛覚過敏において、TRPV2の役割を解明し学術論文にて公表した。さらにマウス大腸炎モデルの炎症の進行における機能解析を進めることができた、よって概ね順調に進行していると判断した。以下に詳細を示す。 はじめに、炎症やストレスなどによって惹起される内臓痛覚過敏におけるTRPV2の機能解析を目的として検討を行った。初年度はラット大腸炎モデルにおけるTRPV2の発現変化と内臓痛覚過敏との関連性を43℃以上の熱で活性化するTRPV1と比較検討を行った。炎症時TRPV2は、脊髄由来の知覚神経と迷走神経に発現増大し、内臓痛覚過敏を増悪させていることを明らかにした。さらに、炎症の進行との関わりを明らかにするため、マウス大腸炎モデルにおいて薬理学的検討を行った。TRPV2抑制薬の慢性投与によって、大腸炎症は抑制される傾向を示した。よってTRPV2は知覚神経の活性化と炎症の増悪の両方に関与する分子であることが示唆された。 上記のラット大腸炎時におけるTRPV2の役割を学術論文(Cell tissue Research)にて報告し、日本薬学会年会(札幌)のシンポジウムにおいてTRPチャネルと内臓痛覚過敏について発表することなどによって、研究成果を社会へ発信した。 しかしTRPV2のマウス大腸における発現部位と炎症制御メカニズムの解明にはいたっておらず。次年度以降の課題であると考えている。また過敏性腸症候群モデルにおける内臓痛覚過敏とTRPV2の関係性についても次年度以降取り組むべき課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討からTRPV2は、ラット遠位結腸においてマクロファージや知覚神経に発現して内臓痛覚過敏や大腸炎の増悪に関与していることが示唆された。発現量としては粘膜の腸管マクロファージに多いため、次年度はマクロファージにおけるTRPV2の機能解析を中心に行っていく予定である。 はじめに、マウス大腸におけるTRPV2の免疫活性のキャラクタリゼーションを2重免疫組織染色によって解明する。次にDSS誘起大腸炎モデルにおいて、定量的RT-PCRによる炎症性サイトカインやケモカインの変化を解析する。さらにフローサイトメトリーによって正常時と大腸炎時のTRPV2陽性細胞の解析、特にM1とM2タイプのマクロファージ上のTRPV2について明らかにしていく。これらの結果を基にして、in vitroの検討で使用するマクロファージの細胞(候補としては腹腔マクロファージや骨髄分化マクロファージ)を決定する。選択したマクロファージを用い、抑制薬やノックダウン、ノックアウトマウスによって炎症応答におけるTRPV2の役割を解明する。評価系としては、定量的RT-PCRやWestern blottingによって各炎症性サイトカイン・ケモカインと細胞内情報伝達機構の解明を行っていく。課題としては、選択的拮抗薬の不足とノックアウトマウスの入手があげられる。拮抗薬については、複数の薬物を用いて検討をおこなうことで、TRPV2の関与を薬理学的に解明していくが、TRPV2の関与を明確にするためには、ノックダウンやノックアウトを活用していくことが妥当であると考える。
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