研究課題/領域番号 |
22K06662
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山野 喜 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (70650597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 難培養性微生物 / 天然物化学 / 生物活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
自然環境に近い条件で微生物を分離培養できる特殊な培養装置を用いて難培養性微生物を培養し、そこから薬の元となるような化合物を精製し、その化合物の構造や生体への影響を明らかにする研究。これまでの実験で、微生物の分離培養・同定の手法は確立されているが、得られる微生物の中での新種の割合の低さ、得られた微生物の増殖速度の遅さや突然増殖を停止する株が散見されることなどから、効率的な探索研究が行えていない。そこで、それらの問題を回避しユニークな化合物を効率的に単離できる方法を確立することが本研究課題の達成目標。
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研究実績の概要 |
微生物は薬の基となる化合物の重要な探索源として知られているが、近年、これまで一般的に用いられてきた培養方法では、環境中に存在している微生物の数%程度しか培養できず、残りの90%以上は利用できていなかったという事実が明らかとなってきた。そこで本研究では培養が難しい微生物を特殊な培養器具を用いることで培養可能にし、新たな薬の候補化合物の探索源として利用することを目的としている。 これまでに研究代表者はgichipと名付けた培養器具を作成し、それを用いて新規性が高い微生物数十種を環境中から分離培養し、取得した微生物の培養物から新規抗腫瘍物質(2-(3-hydroxybutyl)-3-methylhexahydropyrrolo[1,2-a]pyrazine-1,4-dione)や新規抗リーシュマニア活性物質Leucinostatin類などを単離構造解析してきた。 本年度は、全ゲノム解析済みの新規細菌L3-i22を培養し、その抽出物のLC-MS/MS解析で確認された特徴的な化合物ピークを指標に化合物を精製・単離した。単離した化合物を構造解析した結果、抗生物質として知られているLincolnenin類と同様の骨格を持つ新規Lincolnenin類であることが推定された。単離した新規化合物の生物活性は今後評価していく予定であるが、これまでに報告されたLincolnenin類はヒト細胞に毒性を示さず薬剤耐性菌を含む種々のグラム陽性細菌に選択的な毒性を示すことから、本化合物もドラッグライクな活性を有することが期待される。またL3-i22株のゲノム中に、今回単離した新規化合物と同じbianthraceneであるjulichrome Q3-3の生合成遺伝子クラスターと似た配列が存在していることから、当該領域が本化合物の生合成遺伝子クラスターであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の欄に記載した通り、Gichipを用いて取得した新規細菌L3-i22株の培養抽出物から、LC-MS/MS分析で見られる特徴的な化合物ピークを指標に、新規Lincolnenin類と予想される化合物を単離・構造解析した。また、全ゲノム解析結果から本新規化合物の生合成遺伝子クラスターと推定される配列を見いだした。 その他に、申請書に記載した通り、新規微生物の取得効率を上げることを目的に、gel microdrop flow cytometry法を用いて、Gichipに導入する環境微生物液からあらかじめ易培養性(一般的な培地で容易に増殖する)微生物を除く検討を行った。大腸菌をモデル微生物として用い、1cell/dropのゲルドロップを作成すること、大腸菌が増殖したゲルドロップとそれ以外のゲルドロップをセルソーターで分離することなどに成功したが、本手法を環境微生物に応用する際には、採取した環境培養液ごとに最適な条件を見出す必要があり、それが検討の結果実際には困難であることや増殖した易培養性微生物による汚染のリスクがあることなどが明確になり、Gichip培養に本手法を適用することは現実的ではないと判断した。 他に申請書に記載の通り、分離した新規細菌株の全ゲノム解析を行い、生合成遺伝子情報を基にした株の選別を行ったが、新規細菌のほとんどが生合成遺伝子を数個しか保有しておらず、有望株とは判断しがたい結果となった。それらの新規株を実際に培養し、その抽出物をLC-MS/MS分析したが、すべての株の培養液に特に特徴的な化合物ピークは見いだされなかった。 当初計画時の予想よりも課題が多く見られているため、進捗状況を「やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
Gichip由来の新規微生物からの効率的な化合物取得を目標に本研究課題を設定しているが、新規微生物の取得効率や取得株からの化合物取得効率の向上の試みが当初の見込みを満たせていない。そのため、新規微生物の取得率の向上の検討は一時保留とし、現在難培養性微生物培養の専門の先生との共同研究を開始している。 共同研究を行うことにより難培養性微生物からの効率的な化合物の探索のみに集中することが可能となったため、今後は化合物単離の成果を積み重ねながら難培養性微生物からの生物活性物質探索の手法を確立して行く予定。
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