研究課題/領域番号 |
22K06663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
内田 俊平 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (20791099)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 希少糖 / 短鎖脂肪酸 / 免疫制御 / 腸内細菌叢 / D-タガトース |
研究開始時の研究の概要 |
希少糖のひとつであるD-タガトースの経口摂取がマウスの腸内細菌叢を有意に変動させ、特に短鎖脂肪酸のひとつである酪酸の産生能をもつ細菌を増加させることを見いだした。酪酸は過剰な免疫反応を抑制する制御性T細胞を誘導し、また腸管粘膜のバリア機能維持に重要であるとされる。希少糖が腸内細菌叢を変動させ生成された様々な代謝産物は、免疫細胞に様々な影響を及ぼすと考えられ、免疫関連疾患の制御に有効である可能性がある。本研究は希少糖を食べることによる腸内細菌叢と代謝産物の変化を詳細に評価し、これによって生じる免疫調整作用を明らかにすることで新たな免疫制御法を開発することを目指す。
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研究実績の概要 |
複数のC57BL/6Jマウスを同一ケージで飼育し腸内細菌叢を均一化した後に単頭飼育することにより、糞食が腸内細菌叢に及ぼす影響を回避する。この状態で、ベースラインの糞便と、3%D-タガトース水溶液または水道水を4週間自由摂取させた後の糞便を採取し、16S rRNA遺伝子領域を次世代シーケンサーで解析し、腸内細菌叢を決定した。統計学的に有意な変化が認められたのはClostridiales目に属している細菌群であることが改めて明らかとなった。Clostridiales目細菌は、難消化性である食物繊維を代謝して短鎖脂肪酸(主に酪酸、プロピオン酸、酢酸)を産生する。この中でとりわけ酪酸は、免疫調節作用や腸管上皮保護作用により、適切な腸管免疫環境の維持に重要な役割を果たすことから、糞便中の短鎖脂肪酸濃度測定を実施した。この結果、当初の想定に反して、3%D-タガトース水溶液投与群では、n-酪酸の糞便中の濃度が低下し、他の短鎖脂肪酸においては酢酸やプロピオン酸濃度の低下も同時に認められた。一方で乳酸やコハク酸は増加が認められた。ギ酸、iso-酪酸、iso-吉草酸、n-吉草酸に関してはいずれの群においても濃度が低く、有意な変化とは考えていない。他の希少糖についても、同様の検討を進めている。具体的にはD-アルロースについては腸内細菌叢解析を実施し、ラクノスピラ科の細菌群やアトポビアセア・パルブラム等の細菌の増加を認めている。D-アロースについても同様に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度に向けて全てのデータ取得を終了させる予定であったが、16S rRNA遺伝子領域解析の解釈による遅れおよび、この解析結果から発展的に予測メタゲノム解析を実施したために、遅延している。予測メタゲノム解析では、当初の想定通りD-タガトースの投与により酪酸産生に関与する遺伝子群の変化が改めて示されたが、コスト面から腸内細菌叢のメタゲノム解析は実施しないこととして、短鎖脂肪酸を中心とした質量分析法による直接測定を主軸にデータ取得を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
既に収集したデータについては、アップデートされた細菌ゲノムテンプレートを用いて再度解析を行うとともに、別の既報にある解析アルゴリズムを用いて再解析をすることで新たな知見が得られないか確認する。これらにより、精度の高いデータ抽出を行うとともに、複雑で理解しにくい腸内細菌叢データを、より視覚的に理解しやすいように作図をする。D-アロースについては、希少糖専門家からの意見により、他の希少糖と代謝に関わる経路が異なるために、より腸内細菌叢の変動に寄与しやすいだろうとの指摘があり、これに基づき細菌叢の再評価と短鎖脂肪酸またはメタボローム解析等によるより広範な代謝産物解析を予定する。
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