研究課題/領域番号 |
22K06678
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松浪 勝義 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (70379890)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | リーシュマニア / 細胞毒性 / ヤブコウジ属 / 亜熱帯植物 / 化学構造 / 生物活性 / 天然物 |
研究開始時の研究の概要 |
リーシュマニア症は、WHO(世界保健機構)が「顧みられない熱帯病」(NTDs: Neglected Tropical Diseases)として指定している20種の感染症の一つである。亜熱帯・熱帯域を中心に大きな被害がもたらされているものの、感染者が発展途上国などの貧困地域に多いことから、これまで欧州などの先進国の製薬企業等から十分に注目されず(顧みられず)対策が遅れている感染症である。本研究によりリーシュマニア原虫に対する活性成分が見いだされればリーシュマニア感染症の新たな治療薬につながることになり医薬学分野のみならず、国際的な課題の解明にもつながるため波及効果が大きい。
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研究実績の概要 |
当研究ではこれまでにサウラソウ科ヤブコウジ属のシシアクチ(Ardisia quinquegona)から種々の新規アルキル化ベンゾキノン化合物を単離し、その化学構造を決定、リーシュマニア原虫に対する活性を評価し報告してきた(J Nat Med. 2021 Jun;75(3):643-654、 Chem Pharm Bull (Tokyo). 2018;66(7):757-763)。そこで、今回、同じヤブコウジ属植物であるモクタチバナ (Ardisia sieboldii) の葉部について詳細な検討を行った。本植物は、沖縄、中国や台湾といった亜熱帯地域で自生しており、詳細な成分研究はまだ行われていないことから、さらなる有用化合物の発見が期待された。まず、乾燥したArdisia sieboldi葉部をMeOHで抽出後、酢酸エチル、1-ブタノールと水で分配した。得られた酢酸エチル可溶画分を各種クロマトグラフィーを用いて繰り返し分離・精製し、2種の新規化合物(1, 2)を単離した。これらの化学構造はNMRやMSなどの各種スペクトルデータの解析により、アルキル化ベンゾキノン類であることが推定された。また、アルキル側鎖内の2重結合の位置についてはジメチルジスルフィド法により誘導体化したのち、MS/MSによる開裂パターンの解析により決定し、その幾何配置もケミカルシフトの比較により決定することで化学構造を明らかにすることに成功した。その他に得られた既知化合物とともにリーシュマニア原虫やヒトがん細胞に対する細胞毒性を評価し、有益な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のモクタチバナ (Ardisia sieboldii) の研究が順調に進み、新規化合物の発見に至り、また、その化学構造をNMRやMSおよび化学的手法により明らかにできたことから、国際学術論文として報告するに値する成果が得られたことは大いに評価できると考えている。また、この成果については国内学会にて口頭発表しており、学術面での発展に寄与することができた。また、その他にも、ゴンズイ (Euscaphis japonica Kanitz)、ナシカズラ(Actinidia rufa)といった植物についても成分研究が進んでおり、そのうち一つからは新規フラボノイド化合物を得ることができたことから、同様に国内学会での口頭発表をすることができている(2022年11月5、6日、日本薬学会中国四国支部学術大会)。その他にも検討を開始した植物は多数あり、単離精製、構造解析、活性評価が順調に進んでいることから順調に進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
①順次、得られた研究成果については国際学術誌への投稿を進める。また、現在進行中の他の植物についても成果が得られ次第、学会にてその研究成果を発表し、学術面での貢献を果たしたい。 ②進行中の植物サンプルについては引き続き分画、精製を行う。活性化合物が単離されればNMR, MS, IR, UV, MSなどの種々のスペクトルデータの測定と解析を行い、相対配置までの化学構造の解明を達成する。次に絶対配置の決定にあたってはCDスペクトルの解析や、場合によっては改良Mosher法などの化学的手法により絶対配置の検討をおこない、最終的に絶対配置を含めた化学構造の決定を達成する。 ③得られた活性化合物についてそのメカニズム解析の手掛かりを得るため、mRNAの発現変動について解析を始める。 <次年度の研究費の使用計画>①については投稿費用や学会参加費が必要。②分画精製に必要なカラムクロマトグラフィー担体、TLCプレート、各種有機溶媒、NMR測定用サンプルチューブや重水素化溶媒、共通機器であるNMR使用料などが必要。また、活性を指標に分画を進めるので細胞培養に必要な培養ディッシュ、96well プレート、培地、動物血清、抗生物質、発色試薬などが必要③mRNAの抽出に必要なTrizolなどのRNA精製試薬、cDNA合成に必要な逆転写酵素やプライマーなど高価な試薬類が必要である。また、Real time PCR試薬が必要。その他、NMRやMSなどは共通機器であるため、装置の使用料が必要である。以上の研究に必須の費用が本年度の予算として使用を計画している。
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