研究課題/領域番号 |
22K06679
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
人羅 勇気 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 准教授 (00755308)
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研究分担者 |
人羅 菜津子 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 特任助教 (40762191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | プロテアソーム / 天然物 / 活性化 / α-synuclein / タンパク質分解 / スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内で変性したタンパク質が蓄積すると様々な疾患の原因となる。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は、神経細胞内にα-synucleinやタウタンパク質が蓄積することで発症すると考えられている。そのため、α-synucleinやタウなどのタンパク質を分解し、蓄積を抑える化合物は、神経変性疾患の治療薬として期待される。 本研究では、プロテアソームを活性化し、細胞内のタンパク質分解を高めることで神経変性疾患の原因となるタンパク質の分解を促進する天然物を探索する。また、見出した天然物の作用メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、神経変性疾患の原因タンパク質であるα-synucleinのプロテアソームによる分解を促進する天然物の探索を目的としている。本年度は、天然化合物ライブラリならびに天然物エキスライブラリをスクリーニングするための評価系を構築し、天然化合物ライブラリをスクリーニングした。 当初の研究計画では、プロテアソーム依存的なタンパク質分解を化学発光によって評価するレポーターアッセイの構築を計画していたが、培養細胞を用いた評価系では検出感度が低く正確なプロテアソームのタンパク質分解活性を評価することが困難であることが分かった。そこで、組換え20Sプロテアソームを用いて、酵素レベルでのタンパク質分解活性を評価することができるハイスループットな評価系を構築した。また、酵素活性のカイネティクス測定や、細胞内のプロテアソーム活性を評価することができる蛍光プローブを用いた評価系も構築した。構築した評価系を用いて天然物ライブラリ約300化合物についてプロテアソーム活性化作用を調べ、プロテアソームによるタンパク質分解を促進する天然物を見出した。さらに、Western blottingにより実際にプロテアソームによるα-synuclein分解を誘導する作用があることを明らかにした。 本年度はスクリーニング系の構築を達成し、天然物スクリーニングにより目的とするプロテアソーム活性化物質を見出すことに成功しており、当初の予定以上に研究を進展することができた。また、現在は天然物エキスライブラリのスクリーニングも進めている。なお、本研究成果に関しては、論文を作成中であり、国際学術誌へ投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、評価系の構築と天然物ライブラリのスクリーニングを予定していたが、既にいずれの工程も完遂しており、天然化合物ライブラリのスクリーニングによってプロテアソームによるα-sycucleinの分解活性化する化合物を見出すことに成功し、次年度以降に計画していたプロテアソーム活性化作用の詳細なメカニズム解析も進めることができた。さらに、本年度発見した化合物は、既存のプロテアソーム活性化物質に比べてより強い活性化作用を示し、培養細胞においてもプロテアソームによるタンパク質の分解を促進する作用を示すということを明らかにした。 研究計画段階では、プロテアソーム活性化作用を示す化合物または天然物エキスをスクリーニングするために、ハイスループットな評価系である培養細胞を用いたレポーターアッセイを検討していた。しかし、実際に評価系を構築しプロテアソーム活性化作用を評価したところ、タンパク質分解作用と細胞毒性の判断が困難であり、また検出感度が低く安定した活性評価ができないことが分かった。そこで、計画を変更し、20Sプロテアソームを用いた酵素活性化試験を構築し、酵素レベルでプロテアソームによるタンパク質分解活性を高める化合物を評価する実験系を採用した。さらに、384ウェルプレートで活性評価できるようにアッセイフォーマットを調製することに成功し、ハイスループットな評価が可能となった。また、細胞内のプロテアソーム活性を検出できる蛍光プローブを用いた実験系と組み合わせることで、細胞レベルでタンパク質分解活性を高める作用を示す化合物を見出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、約300種類の天然化合物のプロテアソーム活性化作用を評価し、プロテアソームによる細胞内のタンパク質分解を促進する天然物を見出した。また、分解基質としてα-synucleinを用いた20Sプロテアソームの酵素活性化試験を実施し、実際にα-synucleinの分解を促進する作用を示すことを明らかにした。現在、神経芽腫由来の培養細胞を用いた実験系を構築しており、細胞内のα-synuclein分解を促進するか評価することができる実験系を構築中である。さらに、パーキンソン病のモデルマウスを用いたin vivoの評価についても計画中である。 また、約3000種類の天然化合物についてもスクリーニング予定である。さらに、当研究室が保有する約40000種のエキスから構成されたオリジナル天然物エキスライブラリのスクリーニングも実施予定であり、プロテアソームによるタンパク質分解を促進する天然物の探索を実施する予定である。 スクリーニングによって見出した天然物について、類縁体間の構造活性相関研究を実施することで、プロテアソーム活性化に関連する化学構造を明らかにし、活性化の機構について調べる予定である。 本研究で見い出す天然物は、α-synucleinのみならず、tauやアミロイドといった神経変性疾患の原因とされているタンパク質の分解促進作用も期待できるので、α-synuclein以外の天然変性タンパク質の分解促進作用についても検討する。また、強力な活性化作用を示す天然物についてはin vivoでの作用を評価し、神経変性疾患の治療薬シーズとしての利用可能性について検討する。
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