研究課題/領域番号 |
22K06708
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
岡田 賢二 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00396673)
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研究分担者 |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
山口 浩明 山形大学, 医学部, 教授 (80400373)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 母集団薬物動態解析 / 生理学的薬物速度論解析 / 小児感染症治療 / 治療薬物モニタリング / モデリング・シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
Therapeutic drug monitoringは、抗菌薬の投与量の個別化に有用な方法である。適切な母集団薬物動態(PPK)モデルを活用することで、患者個別の至適投与量を決定できる。一方、小児の薬物動態は、患児の臓器の成長度や病態の影響を大きく受けるため、PPKモデルからの血漿中薬物濃度の予測値のバラツキは大きく、小児におけるPPKモデルの臨床での活用は極めて少ない。本研究では、in silicoの手法を用いて、小児感染症治療に実用できる、PPKモデルの評価法を確立する。臨床データを生理学的モデルに組み込むことで、精緻なモデルを構築し、患児の血漿中薬物濃度の予測精度を高める。
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研究実績の概要 |
Therapeutic drug monitoring(TDM)において、母集団薬物動態モデル(PPK)を活用した投与設計は感染症治療に不可欠である。成人に比べ小児の薬物動態は、患児の成長や病態の影響を大きく受けるため、モデルパラメータの変動が大きくなりやすい。一方、小児薬用量の決定には、精度の高い患児個別の薬物動態パラメータの推定手法の開発が望まれる。本研究では、in silicoの手法を用い、小児感染症治療に実用できる抗菌薬投与設計のPPKモデルの評価法を確立する。令和4年度は、TDM対象抗菌薬の小児PPKモデルを網羅的に収集し、患者ごとの濃度および背景データを既報より収集し、複数のPPKモデルの構築を検討した。モデル構築時に一般的に用いられるモデル診断の手法を用い、観測値とモデルからの予測値の予測区間を視覚的に比較することで、モデルの適用性を評価することとした。既報PPKモデルを用いてモンテカルロ・シミュレーションを行ったところ、既報の観測値の多くが、シミュレーションで発生させた予測値の90%タイル内に分布していたことから、既報PPKモデルの再構築が確認された。小児の既報PPKモデルの検証に必要な臨床データを収集するために、症例調査を医療機関に依頼し、臨床研究倫理委員会の申請に着手した。一方、既報の小児PPKモデルに適用できない小児患者集団では、PPKモデルと生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを統合することで、新たな小児PPK-PBPKモデルを構築する。これに先駆け、血漿中濃度が公表されている成人について、アルベカシン(ABK)のPBPKモデルの構築を試行した。ABKの化合物情報と生体情報、文献値から算出した腎クリアランスおよび既報の健康成人の血漿中濃度より、組織-血液間分配係数の補正パラメータおよび腎外クリアランスを最適化することで、ABKのPBPKモデルを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、TDM対象抗菌薬の小児の既報PPKモデルの構築を目指した。TDM対象抗菌薬であるグリコペプチド系抗菌薬およびアミノグリコシド系抗菌薬についてPPKモデルの情報を網羅的に収集したところ、日本人小児を対象としたPPKモデルの報告は極めて少なく、多くが外国人小児を対象とした報告であった。日本人の小児感染症治療に実用できる抗菌薬投与設計のPPKモデルを評価するためには、日本人小児データの外国人小児のPPKモデルへの適用性を評価する必要がある。そこで、対象抗菌薬の既報小児PPKモデルよりモンテカルロ・シミュレーションを行い、文献の観測値とモデルからの予測値の予測区間を視覚的に比較したところ、ほぼすべての観測値が90%タイル予測区間内にあったことから、既報小児PPKモデルの再構築が確認され、これらが日本人小児の適用性評価に活用できると判断された。残りの未構築の対象抗菌薬の小児PPKモデルの再構築を継続している。一方、小児の既報PPKモデルの検証にはTDM対象抗菌薬の小児臨床データが必要である。令和4年度中の症例調査の実施を計画したが、医療機関に症例調査を依頼し、対象症例のデータの保有状況を確認、収集データ項目の設定および臨床研究倫理委員会の申請に着手したに留まっており、症例調査の準備を進めている。また、既報の小児PPKモデルに適用できない小児患者集団では、患者集団の薬物動態パラメータの平均値と分散をもつPPKモデルに生体情報に基づいたPBPKモデルを組み込んだ新たな小児PPK-PBPKモデルの構築が有用と考え、既報血漿中濃度が公表されている成人ABKのPBPKモデルを構築し、良好なシミュレーション結果が得られている。以上を総合的に評価し、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は症例調査を実施するため、臨床研究倫理委員会に申請し承認を得る予定である。症例調査実施医療機関において、TDM対象抗菌薬について小児臨床データの後方視的調査を進める。複数のTDM対象抗菌薬について、既報小児PPKモデルの再構築の方法が確立されたことから、網羅的に調査した未構築のモデルの再構築を実施する。構築したPPKモデルに、症例調査より得られた小児の臨床データを組み込み、日本人小児のモデルの適用性と予測精度を評価することで、臨床上有用なモデルを探索する。市販のPBPK シミュレーターに抗菌薬の物理化学的情報を組み込みシミュレーションした血中濃度と、既報PPKモデルからシミュレーションにより発生した仮想血中濃度が近似するよう、生理学的パラメータを設定しPBPKモデルを構築する。PPKモデルとPBPKモデルを統合することで、患者集団の分散を組み入れた、施設に適用可能な小児PPK-PBPKモデルを構築する。
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