研究課題/領域番号 |
22K06710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
藤阪 保仁 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (50411369)
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研究分担者 |
朝日 通雄 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (10397614)
森原 啓文 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (40802674)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | iPS細胞 / 分子標的治療薬 / 心臓機能障害 / がん / 薬剤起因性心臓障害 |
研究開始時の研究の概要 |
がん分子生物学の発展による個別化医療時代の到来で、進行がんであっても長期生存が現実のものとなってきた。 キードラッグとされる分子標的治療薬の副作用で、特に臨床上“心臓機能障害”が問題となっている。本研究では、QOL(生活の質)に著しい支障を来す心臓障害を取り上げ、ヒトiPS細胞を用いて,in vitro(試験管内、体外)で心臓機能障害のモデル化が可能であるかどうかを検討する。 次に、モデル化が可能であれば、分子標的治療薬で処理した細胞内での遺伝子発現変化等を解析し、心臓障害発症メカニズム解明や副作用予測に使えるマーカー遺伝子の探索、副作用を軽減する薬剤のスクリーニングに繋げたい。
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研究実績の概要 |
がんゲノム医療が深化し、効果の面での患者選択・個別化はドライバー遺伝子の探索、分子標的治療薬の開発を中心に研究が進み、臨床実装されている。一方で、抗悪性腫瘍薬の副作用に、未だ多くの患者が苦しんでおり、副作用が生じる患者と生じない患者の“ 違い ”を、明らかにすることで、副作用をも考慮した、がん個別化医療確立の確立が急がれる。実現すれば、超高齢化社会を迎える本邦での効果に優れ、副作用の点からも優しい、“最優”な個別化医療が実現することになる。 本研究は、EGFR陽性肺癌患者に対する分子標的治療薬(オシメルチニブ)を投与され、実際に心臓機能障害が生じた患者のヒトiPS 細胞を用いてin vitro で心臓機能障害をモデル化し、分子標的治療薬で処理した細胞内での遺伝子発現変化等を解析することで、心臓機能障害発症メカニズム解明や副作用予測に使えるマーカーの探索を行うものである。 大阪医科薬科大学研究倫理委員会で承認され、オシメルチニブの投与歴のある患者で、A 群:心臓機能障害を生じなかった患者群とB 群:心臓機能障害を生じた患者群(心臓駆出率10%以上の低下)を選定し、被験者本人より文書による同意を得て遂行する。 既にA群、B群より症例の同意を得てiPS細胞への分化を開始し、2023年度時点でA群、B群1名ずつiPS細胞の樹立および心筋細胞への分化に成功している。誘導したA, B群由来iPS心筋細胞にオシメルチニブを投与し、ライブセルイメージングシステムSI8000 (Sony) を用いた心収縮能を評価で、B群でオシメルチニブ処置によって心収縮能がコントロールと比較して有意に低下することを確認した。また、同じオシメルチニブ処置でのB群心筋細胞において、ErbB下位のリン酸化シグナルが、コントロールと比較して有意に低下していることが確認できており、研究を加速させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対して、オシメルチニブを投与中または投与終了した患者を対象とし、副作用として心機能障害を起こさなかった患者(A群)および心機能障害を起こした患者(B群)(心臓超音波検査で投与前と比較して心臓駆出率10%以上の低下)を選定した。両群の患者より末梢血を採取し、初期化遺伝子(OCT3/4, KLF4, SOX2, c-MYC) を搭載したステルス型RNAベクターを用いてiPS細胞を樹立し、iPS細胞から心筋細胞へ分化誘導を行った。そして分化した心筋細胞に対してオシメルチニブを処置し、オシメルチニブによる心機能障害のメカニズムを解析することを目的とする。現時点でA群、B群1名ずつiPS細胞の樹立および心筋細胞への分化に成功している。そして、オシメルチニブによる濃度依存性の心収縮力障害があることを確認するために、誘導したA, B群由来iPS心筋細胞にオシメルチニブを投与し、ライブセルイメージングシステムSI8000 (Sony) を用いて心収縮能を評価した。B群でオシメルチニブ処置によって心収縮能がコントロールと比較して有意に低下することを確認した。また、同じオシメルチニブ処置でのB群心筋細胞において、ErbB下位のリン酸化シグナルが、コントロールと比較して有意に低下していることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度後半は症例集積が加速しA群、B群で各1例を症例登録することが出来た。iPS細胞の作成、心筋分化も順調となりつつあり、今後は、A群、B群での違いを明らかにすることに主眼を移すことになる。心筋障害が起きているシグナル系を同定するため、RNA シークエンスを行い、両群間での差を確認してその遺伝子と関係のあるシグナルを中心にウエスタンブロッティングを行い、心機能障害の機序を同定する。 具体的には、A群、B群それぞれの患者組み入れおよび心筋細胞への分化誘導を引き続き行っていく。オシメルチニブ処置によりA群では心収縮能に影響は出ず、B群で心収縮能の低下が見られるような処置濃度・時間の条件検討を行う。そして、心筋障害が起きているシグナル系を同定するため、RNA シークエンスを行い、両群間での差を確認してその遺伝子と関係のあるシグナルを中心にウエスタンブロッティングを行い、心機能障害の機序を同定する。
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