研究課題/領域番号 |
22K06747
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
八木 秀樹 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (40250740)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 骨転移 / 破骨細胞誘導因子 / 癌幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
「肺癌細胞による破骨細胞誘導メカニズムと、正常の骨代謝で見られるそれは果たして同一であろうか?」この問いに対する答えが「否」であれば、正常骨代謝には影響を与えずに、骨転移による破骨細胞誘導が抑制でき、ここに標的分子を設定できれば、正常の骨代謝に影響を与えない骨転移抑制剤が創薬できる。申請者は簡便な骨転移の動物モデルを作製する過程で、高骨転移細胞株を樹立した。その性状を解析すると破骨細胞誘導活性がある培養上清中にRANKLが存在しないことに気付いた。正常な破骨細胞誘導にはRANKLは必須であることから、癌細胞による破骨細胞誘導は正常と異なると考えるとともに、新たな骨転移抑制薬の開発が期待できる。
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研究実績の概要 |
近年、様々な悪性腫瘍において、「癌幹細胞」と呼ばれる自己複製能と多分化能を有する細胞群が存在し、癌の多剤耐性や悪性度、更には転移性との関連が報告されている。この癌幹細胞の性状を明らかにし、癌幹細胞に選択性を有する治療法を開発することは癌の治療法として大変有意義である。 癌転移は、患者の予後を大きく左右する重要な要因であり、癌治療において転移を抑制することも大きな課題である。特に骨転移では、激しい痛みを伴い、予後のみならずQOLも大きく低下させる要因となっている。肺癌で多く見られる溶骨性転移においては、破骨細胞により骨破壊が進行し、骨基質より溶出する増殖因子が腫瘍の成長を加速させる。よって、その初期段階である骨破壊の機構を解明することは骨転移の抑制やQOL向上にもつながる。 骨転移モデル作製中に確立したヒト肺腺癌高骨転移株A549fm2細胞と親株A549P細胞との性状比較を行った。骨は血管が豊富で酸素の多い部位であるため、骨転移には酸化ストレス耐性を獲得することが必要条件であると考えられる。酸化ストレス耐性獲得機構としてシスチン-グルタミン酸トランスポーターxCTはその第一候補である。xCTは細胞内にシスチンを取り込み、細胞内でシステインに変化させ、還元型グルタチオン(GSH)の合成を促進することで、活性酸素種(ROS)を減少させ、癌細胞の生存を助けるという報告がある。フローサイトメトリーにてxCTの発現比較を行ったところ、A549P細胞に比較してA549fm2細胞ではxCTの発現が高かった。また、また、A549Pと比較するとA549fm2では細胞内GSH濃度が高く、ROSが低かったことから、xCTの発現増加に伴い、酸化ストレス耐性能を獲得していることが示された。よって、高骨転移株であるA549fm2細胞はxCT発現を増加させることで、骨転移へ有利に性状を変化させていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、プラスチック器具等や試薬等の入荷の遅れなどがあり、実験が思うように進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
高骨転移性ヒト肺腺癌A549fm2細胞とその親株A549-p細胞との性状を比較することで、骨転移メカニズム解析への手掛かりを得るとともに、肺癌細胞が導く破骨細胞誘導メカニズムを解明することで新規の骨転移抑制剤の開発を目指す。 癌幹細胞関連分子であるALDH、CD133、Lgr5、ABCG2の発現や幹細胞のniche停留に必要といわれるCXCR4発現などをフローサイトメトリーで解析する。合わせて申請者が作製した抗sphingosine 1-phosphate (S1P) receptor-1 (S1PR1)モノクローナル抗体を用いて、その発現を検討する。S1PR1はリンパ球が胸腺より血液中に移出する際に必須な分子であり、近年癌転移の関与が報告されている分子である。癌幹細胞性はside population法やALDEFLUORを用いたフローサイトメトリーで解析し、必要があればセルソーターで細胞を単離し、それらの細胞から遺伝子を抽出、RT-PCRで解析する。転移関連分子としてepithelial-mesenchymal transition (EMT)関連分子として、snail, slug, twist, ZEB1, ZEB2など発現を、また破骨細胞誘導に関与するサイトカイン遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRによるRNA発現定量法にて行う。 新規破骨細胞誘導因子の探索に向けて、A549fm2細胞の培養上清を大量に集めて、硫安分画等を行い濃縮し、イオン交換クロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィーにより分画し、その分画をマウス単球細胞株RAW264.7細胞に添加、培養し、酒石酸耐性酸性フォスファターゼ陽性多核巨細胞の出現を指標に破骨細胞誘導活性を測定する。
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