研究課題/領域番号 |
22K06748
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
上田 秀雄 城西大学, 薬学部, 教授 (50326998)
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研究分担者 |
木村 聡一郎 城西大学, 薬学部, 准教授 (30433650)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 超音波 / Ovalbumin(OVA) / 抗体産生 / ランゲルハンス細胞 / ovalbumin / 皮膚免疫 / 薬物送達 / 経皮吸収 |
研究開始時の研究の概要 |
3年間の研究計画により、Th1およびTh2応答、あるいはTh17細胞活性化に対する超音波照射条件による特徴づけと抗原物質の皮内送達性について知見を得る。マウスにOVAを皮膚に投与した時の超音波照射の有無による抗体産生の特徴をin vivoで検討するとともに、抗原獲得と皮膚樹状細胞活性化の定量的関係をフローサイトメトリーにより評価する。免疫応答に介在するサイトカインの関与を検討し、超音波による免疫応答活性化を特徴づけるとともに、超音波適用後の皮膚中存在状態と抗体産生の関係を検討する。安全性の観点からIgEおよびIgA抗体産生を測定しアレルギー反応の観点からの評価を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度はまず、20 kHz, 0.41 W/cm2, 10分間の超音波(US)適用で、US照射後にovalbumin(OVA)をi.d.投与した条件、およびOVA溶液を皮膚表面に適用してUS照射しUSによる抗原送達促進を期待した条件での抗体産生を検討した。FITCラベル化OVA(FITC-OVA)を用い、ランゲルハンス細胞(LCs)による抗原捕食をフローサイトメトリーで定量的に評価した。その結果、同量のOVAを単にi.d.投与したコントロール条件に比べてUS処理した実験条件では、LC活性化マーカーであるlangerinを発現する細胞が増加し、FITC-OVAを取り込んだ細胞数も増加した。一方、細胞1個当たりのFITC-OVA の取り込み量は変化しなかったことから、試験した条件での血漿中抗OVA-IgG抗体量の増加には、US処理により抗原捕食するLCs数の増加が関係すると推測された。 上記条件に加えて、同量のOVAとアジュバントと併用したi.d.投与条件で、短時間で惹起されるアレルギー反応の可能性を検討した。単回処置した時の経時的なIg E産生について評価した結果、すべての実験条件において評価に使用したIgE測定キットの定量限界下限値(25 ng/mL)を下回ったことから、US処理が急性のアレルギー反応を惹起する可能性は低いと推測される。 より効率的な皮内抗原送達を目指し、リポソーム化に着目した検討を行った。抗原のモデルとしてOVAと同等の分子量のFITCラベル化デキストラン40(FD-40)をリポソームに内封した。リポソーム化FD-40溶液またはFD-40溶液を皮膚表面に適用して20 kHz, 0.41 W/cm2 USを10 分間照射したときの皮膚中FD-40濃度は、リポソーム化した時の方がおよそ5倍高く、リポソーム化製剤とソノフォレシスとの併用は新しいワクチン接種技術としての可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度から予定している抗体産生と免疫応答との関連付けを詳細に検討する上で、超音波条件を絞っていく必要があった。2022年度の検討で、最も高い経皮吸収促進効果を期待できる20 kHz, 0.41 W/cm2超音波(US)を10 分間照射することでi.d.投与と同条件の抗原送達をコントロールでき、そのときのIg G抗体産生やランゲルハンス細胞の活性化を評価できた。このことは、超音波条件を整理していく中で非常に重要な知見が得られた。
2023年度にはFITCラベル化OVAを用い、US処理後のランゲルハンス細胞による抗原捕食を定量的に評価し、単にi.d.投与した時に比べてUS処理した時の方が高かった。ここまでの評価により20 kHz, 0.41 W/cm2超音波(US)を10 分間照射したときの特徴づけは完了したと考えている。
さらに、IgE抗体産生に基づいたアレルギー症状の惹起については、22年度から23年度での評価により、単回処置および繰り返し処置した時の血漿中IgE濃度はコントロール条件と大差なく、USの利用は安全性の高いワクチン接種法と考えられ、予定していた安全性の観点の特徴づけは完了したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの結果を受けて、今後の研究計画は当初の予定に含む「超音波照射後の皮膚中サイトカイン産生の測定」ならび「OVA含有脂質二重膜ベシクルの皮膚移行性評価」について進めていきたいと考えている。
超音波による免疫応答活性化機構に関連する検討は、2023年度までに70~80%程度の進捗状況であり、2024年度には免疫応答に介在するサイトカインの関与を検討し、抗体産生へのTh1やTh2応答の関与について特徴づける。
また、抗原をベシクル化した時の抗体産生やその表皮免疫応答に対する影響を明らかにすることも大変興味深い。しかし、これまでに用いてきた20 kHz, 0.41 W/cm2の超音波条件での抗原の皮膚移行性評価はまだ十分ではない。ベシクルの調製に用いる脂質の種類も抗原の皮内送達や免疫応答に影響を及ぼす可能性があるため、2024年度の検討では複数種の脂質を用いた検討が必要であると考えている。超音波条件は20 kHz, 0.41 W/cm2に絞り、異なる脂質二重膜ベシクルを用いたときの抗体産生や免疫応答機構、さらには安全性について明らかにしていきたいと考えている。
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